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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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「お前を愛することはない」と言われた私、旦那様のお部屋にお呼ばれしました①


 部屋につき、私は重大なことに気がついた。


「お鍋と火がない!」


 外なら簡易かまどを作るという選択肢があった。

 けど、ここは室内。

 そんなことをしたら、火事になる。


「アンネに淹れてもらうか?」

「……そうですね」


 うかつだった。

 実家ではお湯を淹れてそのまま飲んだけど、旦那様に根っこの浮いたお茶は出せない。


 本当は自分で淹れたいけど、ここはお願いしなきゃなのかな……。


「……俺の部屋に来るか? 簡易的だが、お湯くらいなら沸かせるぞ」

「小さなお鍋、ありますか?」

「ザールに持ってきてもらおう」


 旦那様の言葉に頷き、いそいそと枕を用意する。


「……何で、枕なんだ?」

「お茶を飲むと眠くなるからです」

「………ま、まさか、一緒に寝るのか!?」


 顔を真っ赤にした旦那様に、首を傾げる。

 雇用主と同じベッドで寝るわけないのに。


「床で寝ます」

「はぁ!?」

「部屋の隅っこ貸してください!」


 たぶん、旦那様のお部屋からここまで辿り着けない。

 廊下で寝るよりは、旦那様の部屋の隅を借りた方がいいと思う。

 頑張って歩いて帰ってる間に、睡魔に負けて、頭をぶつけたら嫌だし。


「コレッティーナがベッドを使え」

「旦那様はどうするんですか?」

「ソファーでも、何でもあるだろ」

「駄目です! 旦那様はベッドでゆっくり休んでください!」


 絶対に譲ってなるものか!!

 ギッと睨めば、旦那様は苦笑する。


「分かった。ベッドで寝るよ」

「約束ですよ!!」


 良かった。これで私のことは床に転がしておいてくれるはず。


 せっかく到着した私の部屋を出発し、旦那様の部屋に向かう。


「って、お隣だったんですか!?」

「知らなかったのか?」

「いつも執務室にいるから、そこの近くにお部屋があると思ってました」


 これなら、枕いらなかったな。

 ま、いいか。持って帰ればいいだけだし。


 それにしても、旦那様のお部屋は物が少ない。

 さっぱりしてるというか、必要最低限というか……。


「あまり貴族のお部屋っぽくないですね」

「……コレッティーナの言う貴族の部屋ってどんなだ?」


 どんな……か。

 その言葉に実家を思い浮かべる。


「もっと派手でギラギラしてます!」

「それは……落ち着かなそうだな」


 たしかに!

 私はそこで寝ることなかったけど、色々と目にうるさい部屋だった。

 安眠できなそう!


 ──コンコンコン。

 控えめなノック音がして、旦那様が返事をすれば、ザールが小鍋を持って入ってくる。


「お待たせいたしました」

「ありがとう。今日はもう休んでくれ」

「承知いたしました」


 あっさりとザールは部屋から出ていく。


「湯を沸かせばいいのか?」

「はい。あとは、これを淹れるのですが、包む布にハンカチ使ってもいいですか?」

「あぁ、構わない。ということは、縛るものもいるな」


 お湯の沸いた小鍋に、ハンカチで包んだ根っこを入れる。

 ゆっくりと琥珀色がハンカチから広がっていく。


「香ばしい匂いだな。どうやって作ったんだ?」

「根っこを洗って、干して、焼きました! 旦那様のお庭はきれいだから、こっそり咲いてるたんぽぽを探すの大変でした!」

「そうか……。って、たんぽぽ!?」


 何をそんなに驚いてるのだろう。


「はい。花から根まで、全部食べれる優秀植物です!!」


 しかも、一目でたんぽぽだと分かる見た目。

 食料として、最高なのだよ。


「ささっ、どうぞ! あ、毒見いりますか?」

「いるわけないだろ!」


 そう言うと、旦那様はカップに口をつける。


「へぇ、うまいな……。飲みやすい」

「はい! 飲み過ぎるとお腹(くだ)すので、そこだけは気をつけてください。実証済みです!!」


 旦那様はお腹が弱いみたいだし、一日一杯までがいいだろう。

 あとでザールに、申し送っておかなきゃ!


「実証済みって……」


 うん? 何で呆れてるの?


「まぁ、いい。コレッティーナも飲み過ぎないようにな」

「はい!」


 実証してからは、うまいこと付き合ってるからご安心を!!



「で、話なんだが……」


 そう言いつつ、スッと視線を逸らされる。

 口ごもってるし、すごく言いにそう。

 ……分かった! こういう時の定番と言えば──。


「お外に好きな人できましたか? 解雇なしで、トラブルにもならないなら、何も問題はないで──」

「違う! 王城での夜会にコレッティーナも参加しなければならなくなったんだ!」


 何だ、そんなことか。

 あまりにも深刻な顔をするから、何事かと思った。


「分かりました! 旦那様の最愛の妻として参加すればいいんですね!!」

「──っ。そう……だな。で、問題なのは夜会まで一月しかない」

「へぇー」

「へぇって……。俺だけ焦って馬鹿みたいじゃないか」


 脱力したように、旦那様はお茶をすする。


「マナーの問題があるだろ。講師は見つかったが、間に合うかどうか……」

「……? そんなに大変ですか?」

「貴族の顔と名前は、俺の方が覚えておくからいいとして、歩き方から飲み方まで、いろいろあるだろ」


 ほうほう、なるほど。


「大変なんですねぇ」

「何で他人事なんだよ……」


 いや、だってねぇ。

 やってないことに実感はわかないし。


「火おこしとマナー、どっちの習得が難しいですかね」

「そりゃあ……。火おこしじゃないか?」


 何となくだけど、それなら何とかなる気がする。


 

火おこしとマナー、実際、どっちが難しいのでしょうね……。


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