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3色目 茶の虹彩は期待の色

『成果発表会ー戦闘実技トーナメント』

 戦闘系科目を履修し、単位を2つ以上取得している生徒が参加可能。戦闘系科目は必修であり、1年間で4単位を取得できるため、2年目以上の生徒であれば、通常誰でも参加できる。

 参加人数によって予選が組まれ、それに突破した生徒のみが本戦に出場できる。単位取得には本戦出場が最低条件となる。

 一度の戦闘に参加する人数は2人以上10人未満であり、会場もランダムに決定される。それらの情報は試合日3日前に通達される。






 メレズィムたちが成果発表会への出場申請をしてから2日後、彼の元にはトーナメントに関する通知が届けられていた。


「はい、レジー君。トーナメントの詳細と出場許可のバッジよ」

「ありがとう、代表」

「バッジは出場者であることを現すものだから試合当日は忘れず持ってきて。もちろん無くしたりしないように、再配布はないから」

「分かってる、気を付けるって」

「うん、レジー君なら大丈夫ね。ところでライエ君がどこにいるか知らない?」

「うーん、知らねえなあ……」


 彼らが今いるのはトロナデオン学園内の修練場の1つである。魔法や戦闘訓練をするのに十分な広さがあり、鍛錬用の藁人形がいくつか配置されたそこでは数人の生徒たちが各々鍛錬に励んでいた。

 学園内にはこうした基礎鍛錬から魔法、武術、舞踊などの練習が行える施設が複数用意されている。中には特殊な環境を再現したものや奇怪な器具が設置されているものもあり、生徒たちが存分に修練を行うことが出来る場が整えられていた。こうした多くの施設は、一部の“流派”専用のものを除き、学園の生徒であれば基本的に誰でも開放されている。

 メレズィムは、そうした修練場で成果発表会に備えた訓練を行っていたのである。

 ただし、彼自身のためというわけではない。


「あー、ライエならエム7に行くって言ってたで」

「そうね、修練場(ここ)に来る前に会ったけど、そう言ってたはずよ」

「エム7って高山タイプだったか?」

「そうそう、息がし辛くてかなりきついところだ。……姉貴に何度走り回されたことか……ハハッ」

「「「ドンマイ!」」」


 メレズィムとシェイナより少し離れたところに、数人の生徒が腰を下ろしていた。彼らこそが公開発表会に向けての訓練の主役であり、メレズィムは彼らの練習相手として修練場を利用していたのである。


「ありがとね、みんな」

「いやいや、これくらいええで」

「偶々知ってたからよ、気にしないで代表」

「うんうん」

「……俺知らなかったし……」


 彼らは各々の言葉を溢しながら、身体を伸ばしつつ、腰を上げた。彼らの目には熱意が漲っており、発表会への意気込みが感じられる。


「さてと、レジーはんにも通知届いたみたいやし、助っ人を頼むのもここまでやな」

「2日間助かったわ、レジー君。発表会が終わったら、お礼をさせてもらうわね」

「予選相手の良い特訓になった、ありがとう。だが本戦で戦う時は手を抜かない」

「補習はイヤだからね、ホントに。……本当に。」

「ああ、でも礼は覚えていたらで良いから、それよりもお前ら単位取れるように頑張れよ」

「「「「当然!」」」」

「……まっ、もしも本戦で会うようなことになったら、その時は勝ちに行くからな」

「「「「望むトコロ!」」」」

「おう!」

「それじゃ、わてらは自分らの特訓に行くわ。ほなな」


 手を振りながらその場を後にする4人の後ろ姿を見送ってから、メレズィムは傍らに置いていた水筒に口を付ける。そんな彼をシェイナは嬉しそうに眺めていた。


「ホント、レジー君はお人好しね」

「そうか?」

「そう、お人好しよ。自分も発表会に出るのに同じ出場者の特訓相手になるなんて。いくら予選では当たらないからって。流石にお人好しって言うしかないでしょ。それとも、流されやすいって言って欲しい?」

「……言われたくねえ。俺は流されない男に変わるからな」

「それは逆に……、まあいっか。ところで一応聞くけどさっきの皆との訓練成績は?」

「俺の“全戦全敗”だ」

「いつも通りね」


 メレズィムに送るシェイナの目線に好奇のそれが混じる。そんな機微を知ってか知らずか、彼は視線を緩慢に逸らし、手元にある予選の要項が記された三つ折りの紙を開いた。

 そこには予選の日時や対戦形式のほか、出場者欄には4人の名前が書かれていた。



『メレズィム・プラオーン〈イリス〉』

『バーチカル・K・ブライト〈ブレファロ〉』

『ウェインプ・バドラー〈ブレファロ〉』

『ゼスタ・プランドール〈マーティ〉』



(同じクラスのヤツはいないか)


己の名前を一瞥した後、自らの予選相手を確認した彼は眉をひそめる。

そんな表情()を傍らで怪訝に感じたシェイナは、メレズィムの持つ紙を覗き込んだ。


「レジー君、変なことでも書いてあったの?」

「ん? ああー……俺の相手全員別のクラスだなと思ってな」

「えーっと、確かにそうね。相手はブレファロとマーティの……へぇなるほどなるほど」

「意味深ななるほどをありがとう代表」

「どういたしまして」

「で、何に納得?」

「納得とはちょっと違うわね。レジー君の相手に知ってる子がいて、それでつい声に出ちゃったの」

「そうか。……一応聞くがそいつの戦い方とか教えてくれたりは?」

「しないわよ、流石に運営側の私が出場者の詳細を他に言うのはルール違反ね」

「そうだよな」

「だからね!」


 そこでシェイナはグッと顔を近づけ、メレズィムの瞳を覗き込む。茶色の虹彩が自身の黒にぶつかったかのように錯覚した彼は一瞬息が詰まる。しかし、そんな己をを目の前の少女に悟られないよう、すぐにフッと笑いを溢して誤魔化した。


「学園運営組織『オープス』に所属するシェイナ・オールドじゃなく、あなたたちの友人として、レジー君に少しアドバイスさせてちょうだい」

「お、おう」

「あっ、その前に聞きたいのだけど、書いてあった名前に知り合いはいる?」

「……いや、聞いたことある名前ならあったが、知り合いはいねえ」

「それってブレファロの子?」

「違うぞ、マーティの方だ」

「ああね、彼か……確かにゼスタ君も有名だったわね」



『ゼスタ・プランドール』

 生徒たちによる学園の運営組織『オープス』の1つである風紀委員会に所属しており、1年の頃よりアイズを乱用する生徒を厳しく取り締まっている。

 しかし、その活動は時として苛烈とまで表現出来るものであり、一般生徒との諍いやオープス所属の上級生との衝突を起こしたこともある。そのため、彼の名は一部生徒の間で要注意人物として有名である。



「彼やり過ぎなのよ。それで助けられた子もいるみたいだけど、私からすればちょっとねぇ……っと、ごめんなさい、話が逸れたわ。戻すけど、レジー君は予選相手に知り合いはいないのよね」

「ああ」

「なら、アドバイス。レジー君、『相手を知って』」

「おう、ってそれは当たり前のことだろ? 情報は武器って言葉もあるし」

「そうね。でも、今回は特によ。あなたには頑張ってほしいから」

「まあ良いけどよ。それくらいならわざわざ取って付けたように友人としてなんて言わなくても良かったんじゃねえか」

「友人だからよ」

「ふーん」


 メレズィムは目を細めるが、シェイナはどこ吹く風と言ったように満面の笑みを浮かべた。それを見て力が抜けた彼は、肩を竦めて首を振る。


「……了解、アドバイスはありがたく受け取らせてもらうぜ。それでどっちを知るべきだ?」

「そこからはレジー君が頑張りなさい、そこも含めて成果発表会だから……と言いたいけれど、ハイコレ」


 シェイナはメレズィムに数枚の紙を渡した。そこには、予選相手3人の名前のほかそれに相対するように複数の生徒の名前が書かれており、それらの隣には黒と白の丸が示されていた。


「これ、試合成績か」

「ええ、正確には模擬戦も含めて施設の利用申請をしたものは記録が残されているから、その試合結果。それをまとめたのよ」

「友人としてもやり過ぎじゃないかこれ」

「この程度調べたらすぐに分かることよ」

「オープスとしては?」

「公式記録だから規則の範囲内ね」

「……なんか俺に期待しすぎじゃねえか、代表」

「しすぎってことはないと思っているわよ、私は」

「はいはい、怖いけど頑張りますよ」

「それじゃ、私はこれからエム7修練場に行くから」 

「おう、ライエがいると良いな」


 シェイナは手を振って修練場の出口に向かって去って行った。

 それを眺めて彼女の姿が消えた後、メレズィムはフーっと息を吐いた。


(代表も謎に期待してるし、適当なこと出来ないな。ってか代表絶対に……まあいいか。いつも通り、やれるだけやってもみよう。……って3人とも最近ほぼ負けなしじゃねえか、しかもオープスの役職持ちにまで勝ってるし、これは早速先行き不安……おっ?)


 彼は手元にある紙束を流し読みしながら陰鬱になりかけていると、気になる内容が目に入る。彼の対戦相手の1人の試合結果が1つ空白になっていたのである。よく見てみると、試合日は今日の日付となっており、開始時刻も今より数分後であった。


(場所はエヌ18、ここから近いから走れば間に合うか)


 彼は急いで周りの片付けをすると、出口に向かって小走りで移動する。シェイナのアドバイスに従い、情報収集のため、試合の見学及び相手の偵察に向かうことにしたようである。

 今いる『エヌ3修練場』から試合会場まで、急げばすぐにで到着できることは彼にとって幸運であったと言えるだろう。

 練習着から着替える時間が必要ではあったものの、移動の道中で身体強化魔法も発動させたこともあって、試合開始時刻には彼の姿は『エヌ18修練場』入り口にあった。勢いはそのままに辺りにいた生徒の間を抜けながら会場に入ると、そこでは騎士用の直剣を構えた少女が対戦相手を見据えていた。


 その少女の名前は『バーチカル・K・ブライト』。


「さあ、私の光で勝利を照らそうか!」


 深い青色の髪を揺らめかせる、『騎士の卵』である。




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