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臆病王子の影武者に雇われた旅役者ですが、本物が屋根裏から出てこないので名君のふりを続けています

作者:くらたん
最新エピソード掲載日:2026/10/19
「明日一日、バルコニーで手を振るだけだ。口は開くな」

旅一座の役者の俺、ヤネクは、楽屋に積まれた金貨の袋を見て、二つ返事で引き受けた。第三王子エメリヒ殿下は、人前に出ると声が出なくなる。顔がそっくりの俺が、一日だけ代わりに立つ。

翌日、バルコニー。広場を埋めた民衆の前で、第一王子が笑った。

「弟よ。たまには挨拶の一つもしてみよ」

屋根裏の小窓から、本物が紙を掲げている。『何も言うな』

無理だ。客が待っている。

俺は腹から声を出して、昨夜の芝居の、王の台詞を言ってしまった。広場が静まり返り、それから、割れるような歓声。

その夜。屋根裏で、同じ顔が泣きそうに怒っていた。

「僕はあんな立派なことは言わない! やり直し!」

「やり直しがきくのは稽古だけだ、殿下。本番は一回だ」

侍従長が胃を押さえて言う。

「……明日も、頼む」
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