表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖の料理番 〜いただきますで始まり、ごちそうさまで終わる、妖たちの食卓譚~  作者: 奇理可羅
西の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/66

ヴァンパイアの館攻略戦……ただし、ご飯で①

 料理人は俺を含め3人、下働きの子は5人か。

 紙と鉛筆を渡された俺は、そこに本日の献立と、処理の仕方を書いていく。


「それじゃあ、配置を決める。今日はコース料理スタイルでいく」

「コース料理? それはなんなのですか?」

「料理を前菜、スープとパン、メインディッシュ、デザートの順で提供していくスタイルだ」


 俺は紙に書かれた献立を指差しながら伝えていく。


「まず、メインディッシュはハンバーグのトマトソースがけ。担当はヨウコだ。ハンバーグの作り方は覚えているな?」

「ドド肉とお豆腐で作ったやつですね。もちろんなのです」

「あれを今日はボアッカとギャウルの合いびき肉で作ってくれ。ミンチ作業は手間がかかるから、1人連れて行っていい」

「分かったのです」


 俺は下働きたちを指差して伝えるとヨウコはすぐさま動き出した


「次にガロ、お前はスープ担当、作るのはキュルティバトゥールだ。大量の野菜を切るから二人連れていけ」

「了解っす」


 ガロは俺からレシピを受け取ると、下働きを二人ほど連れて野菜の処理を始める。


 俺の前には下働き2人が残された。よく見ると双子なのだろうか。顔がよく似ている。

 頭には小さな角が生え、悪魔のような小さい羽としっぽ。インプかな?


「君たち、名前は?」

「私は姉のリントン、こっちは弟のレントンです!」


 はきはきした姉と、引っ込み思案な弟。姉弟で下働きに来ているのか。大したものだな。


「よし、リントンは食材準備。レントンは調理器具を準備してくれ。分からないことはすぐ俺に聞いてくれ」

「分かった!」

「わ、分かりました」


 さて、それじゃあ、ヴァンパイアの館の攻略といきますか


 もちろん、料理でだけどな。



 ガロのグループは冷蔵庫からカブ、ニンジン、セロリ、タマネギ、ジャガイモ、ネギ、ベーコン、ニンニクを取り出し、すでに下処理を始めている。


 下働きが、慣れた手つきで野菜を洗い始める。もう一人が皮をむき。ガロがカットしていく。

 俺は冷蔵庫から、ギャウルの乳が入った大きな缶を取り出した。


「いいか、このギャウルの乳の上澄みが分離しているだろ? これが生クリームってやつだ」


 リントンは初っ端から分からなかったようだ。そりゃそうだ、冷蔵庫に生クリームは置いていない。ギャウルの乳の上澄みにあるからだ。

 俺はおたまで上澄みをすくい、蓋付きのガラス瓶へ移す。

 そして蓋をしっかり閉めると、思い切り振り始めた。 。


「ちょ、ちょっとアンタ!? 何してんのよ!?」


 オーグリアがドン引きしたような目を向けてくる。

 まあ、知らなきゃ奇行にしか見えないよな。


「何ってバター作ってんだよ」


 しばらくしたらふたを開け中身をボウルに移す。

 さっきまで生クリームだったギャウルの乳が固形化して即席のバターになっている。


「小麦粉、準備できています」

「ありがとう、助かる」


 小麦粉が入ったボウルへバターを加える。割合は小麦粉2に対してバター1。塩を少々。

 最初に小麦粉に半分のバターを入れすり合わせるように混ぜ合わせる。残りのバターを入れ今度はへらを使って切るように混ぜ合わせる。

 さらに少しずつ水を加え、生地の固さを調整していく。

 まとまり始めたところでバットへ移し、そのまま冷蔵庫へ入れておく。


「野菜洗浄終わりました」

「ガロさん、皮剥きの後はどうしますか?」

「手が空き次第、カットに回ってくれ」


 視線を向けると、ガロたちの下処理はもう終わりかけていた。

 包丁さばきも悪くない。思っていた以上に手際がいいな。


 ヨウコたちの方は冷蔵庫からギャウル肉とボアッカ肉を取り出し、包丁で細かく叩いてミンチにしている。


「これが終わったらトマトの皮を剥いて切っておいて欲しいのです」

「は、はい。えっと、沸騰したお湯軽く潜らすと剥けるんですね」


 ヨウコと下働きの子はレシピを見ながら確認している。トマトは東の国では見ないし、ヨウコもあまり扱ったことがないのだろう。

 下働きがトマトの処理をしている間に、ミンチにした肉を混ぜ合わせ、そこへ卵、パン粉、みじん切りの玉ねぎ、塩、コショウ、を加え、しっかりと混ぜ合わせた。卵は1つだけ卵黄のみを残しておいてもらった。

 適量を手に取り、両手で軽くキャッチボールするように叩く。

 中の空気を抜きながら形を整え、楕円形にまとめていった。

 出来上がったタネはバットへ並べる。


「これって、料理本に載ってたハンバーグってやつ?」

「そうなのです。東の国ではドド肉とお豆腐で作ったのです」


 ハンバーグを作っているヨウコを見たオーグリアは、その調理工程をまじまじと見ている。


 以前オウカの屋敷で作った料理――ハンバーグ。

 しかし、今回はボアッカとギャウルの合いびき肉、どんな味がするか俺も楽しみだ。

 6人分作り終えたヨウコはハンバーグのタネをバットに入れ冷蔵庫にしまっておく。


「レントン、器具を準備できたら、石窯オーブンに火を点けておいてくれ」

「わ、分かりました!」

「リントンはジャガイモを処理してくれ、ただし、ジャガイモはカットしたら絶対に水にさらしちゃダメだ。いいな」

「え? 水でさらさないんですか……。わ、わかりました」


 切ったジャガイモは水にさらさない。

 でんぷんを落とすと、後でうまくまとまらなくなるからだ。

 切ったジャガイモをボウルにまとめ、塩コショウで味付けしておく。


 次に鍋にブラドベリーと砂糖、水を加え火にかけておく。


 ハンバーグの成形が終わったヨウコはハンバーグに使うトマトソースを作る準備をする。

 平鍋にオラブオイルをひいて、弱火でニンニクを香りが立つまで炒め、次に玉ねぎを加えしんなりするまで炒める。


「はい、皮をむいて切っておいたトマトです」

「ありがとうなのです」


 さらにトマトを加え中火で煮込む。時々かき混ぜながら水分が無くなるまで煮込むのだ。


 一方、ガロは鍋にベーコンを入れ、中火でじっくり焼いていく。

 脂が溶け、香ばしい焼き色がついたところで、ニンジン、セロリ、タマネギ、ジャガイモを加えてさらに炒める。

 そこへニンニクを投入し、香りが立つまで火を通す。

 続けてネギとカブを入れ、塩とコショウを軽く振って強火で一気に炒め上げた。


「ええと、ここで水をひたひたまで入れて、煮込んでいると灰汁が出て来るのか。で、20分から30分煮込むんだな」


 ガロはレシピを確認しながら慎重に進めていく。


「よし、後は味を見つつ塩コショウで調整をしていくわけだな」


 ガロはスープづくりは残すところ煮込みと味付けのみとなった。


 俺は冷蔵庫から寝かせておいた生地を取り出し伸ばしていく。

 伸ばした生地を器状に形成してパイ生地を作り、フォークで穴をあける。

 乾燥したひよこ豆でパイ生地に重しをして、窯へ放り込んで空焼きをする。


 ここで時計を確認する。現在の時刻5時35分。


「少し時間があるので今日の献立を教えておきます」


 オーグランドとオーグリアは呆気に取られている。俺は構わずに話を続ける。


「前菜はジャガイモのガレットをお出しします。食べ終わりのタイミングを見て次はスープ。今日のスープはキュルティバトゥール、パンはこのタイミングで一緒に出してもらいます」

「きゅるてば……なんだって?」

「キュルティバトゥールです。別名農夫のスープと呼ばれていて、野菜の甘みを生かしたスープで、旨味もしっかり味わえます」

「だから野菜をあんなにいっぱい切っていたのね」


 オーグリアが納得したように頷く。


「メインディッシュはハンバーグのトマトソースがけになります。食後のデザートにブラドベリーパイを予定していまして」

「待て待て待て、色々と聞いたことない言葉が出てきて混乱してきたぞ」

「あ、すいません、つい前職の癖で……」


 鍋のブラドベリーが煮詰まってきたので、俺は火を止めた。


「とりあえず、今日作る料理は6人前ですし、この厨房、火口も多いし試しに作ってみませんか?」

「へぇ~、面白そう、あたしやってみたい」


 オーグリアは手をあげて志願してきた。


「おい! オーグリア!」

「別にいいじゃんパパ、こんな珍しい料理知れる機会なんて滅多にないよ。」


 あ、お二人って親子だったんですね。

 オーグランドは気まずそうな顔をしながら頬を掻くと


「そ、その、なんだ、俺にも教えてくれ……」

「ええ、もちろんそのつもりです」


 俺は石窯オーブンの中に入れたパイ生地を確認する。

 うっすらと焼き色が付き、底が乾いている。ちょうど良い仕上がりだ。

 俺はパイ生地に煮詰めたブラドベリーを敷き詰め、パイ生地を被せ卵黄を塗り、オーブンへと入れた。


「……さっきお前、ギャウルの骨をスープに使うって言ってたよな。どれくらいかかるんだ?」


 その問いに対し、俺は笑顔でこう答えた。


「6時間くらいですね」

「6時間って……そんなに!?」


 和食と洋食では、調理に対する考え方そのものが違う。

 和食は素材の味を活かし、必要以上に手を加えない。

 対して洋食は、素材に徹底的に手を加え、旨味を引き出していく料理だ。


「スープ完成しやした! 味の確認お願いしやす!」


 俺はスープの味を確認する。


「よし、スープの味付けは問題ない。ヨウコはどうだ?」


 ヨウコは煮込んでいたトマトソースに塩と砂糖を加え、味を整えている。

 刻みハーブを散らすと、爽やかな香りが立ち上った。


「完成なのです」


 俺はソースの味を確認する。


「よし、ソースも問題ない」


 その時、厨房の入り口からメイドが顔を覗かせた。


「伯爵様とご家族の皆様がお席に着かれました」


キュルティバトゥールレシピ


材料(4人前)

ベーコン 3枚

玉ねぎ 1/2個

長ねぎ(白い部分)1/2本

にんじん 1/2本

じゃがいも 1個

大根またはかぶ 1/4本

セロリ 1本

水 500ml

バター 20g

塩・こしょう 適量

(お好みで)クレソンやパセリ、チーズ、バゲット


※コンソメは入れません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ