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妖の料理番 〜いただきますで始まり、ごちそうさまで終わる、妖たちの食卓譚~  作者: 奇理可羅
東の国

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19/68

甘味とヨウコとお稲荷さん

 さて、おやつの時間だが、作るものはある程度決まっている。俺は乾燥させた大豆を持って水車小屋まで来ていた。ここですることはただ一つ。


「さて、きな粉を作るか」


 3時のおやつに団子を作る予定だ。味はみたらし、あんこ、の二種類だがなんか物足りない。


 ――そういえば、きな粉って大豆を挽いたものだったよな。


 思い出した瞬間、俺はすぐに大豆を持ってここへ来たというわけだ。


 石臼に大豆を入れ、壁の取っ手を動かす。


 ゴリゴリと音を立て大豆が挽かれ粉になるが、まだ荒い。粉状になるまで何度も挽くのだ。


 柏餅や草餅、よもぎ団子に桜餅なんかもいいな。


 ああ、作りたいものがいっぱいある。


 まあ、もち粉は肝心のもち米がないからな。代わりに何か考えなくてはな

 俺は大豆を挽いてきな粉にすると満足しながら俺は屋敷へと戻っていった。


 さて、団子の味付けの中でもとくに時間がかるあんこから作るか……。


 材料は小豆、小豆と同量の砂糖、小豆が浸る程度の水、塩一つまみ。


 まず、小豆を軽く洗ってから、下茹でし、中火で15分ほど似てザルにあけて煮汁を捨てる。これで渋みや雑味が取れるって訳だ。


 小豆を鍋に戻し水を加えて今度は弱火で45分ほど煮る。水が無くなったら差し水をするのを忘れるな。目安は指で潰せる程度だ。

 

「俺、あんこが好きでな、よくばあちゃんに煮てもらったから覚えちまったんだよな」


 煮あがったら30分ほど置いて蒸らす。そこから弱火にかけ砂糖を加えていくわけだ。

 なかなか手間暇かかっているんだぜ。おっと、最後に塩を一つまみ入れておかないと。こうすることで甘さがより引き立つようになる。


「よし、出来た。味見してみるか?」

「い、いただきますなのです」


 ヨウコは匙であんこを一口味見した。


「んんんん、甘くて美味しいのです!!」

「なんじゃなんじゃ、妾にも食わせろ」


 さすがに熱いので表面の所を取ってやる。


「むふぅ、こいつはたまらんのじゃ、もっと食わせろ!」

「……カナメ、まだ、食べてない」

「ああ、もう、これは団子に乗せる分だって」


 カナメに味見をさせた後、俺は鍋に蓋をして二人の届かない場所へ置いた。

 オウカがもっと食わせろと言っているが無視することにした。

 ああ、もう、カナメ、反転して天井から鍋を狙うな。ったく、味見させてたら無くなってしまう。


 続いては団子を作っていこう、残り二つの味はすぐにできるからな。

 

「本当はもち粉を使いたいんだけどな、ないから米粉を使う。米粉はもち粉よりも固くなるから、豆腐を混ぜて柔らかくするんだ」

「豆腐は凄いのですね、いろんなお料理に変身するのです」


 米粉と水切りした豆腐を混ぜ、耳たぶくらいの柔らかさに整える。

 団子を手でコロコロと丸めて、少し指で押して平たくする。

 鍋にお湯を沸かし、丸めた団子を入れ、茹でる。  

 目安は浮き上がってから2分位だ。

 茹であがったら水に入れ、冷やしてやる。


 次はみたらし作りだ、この味は団子の定番の味。 

 割合は砂糖、醤油、水、を混ぜ合わせて火にかけ、かたくり粉でとろみをつけるだけで出来る。


 そしてきな粉は――さっき挽いたものに砂糖を混ぜるだけで完成だ。


 味が完成したところで、皿に盛りつけ味を付けていく。


「よし、完成だ、さあ、茶でも飲みながらおやつでも食おうぜ」


 本日のおやつ

 団子  味付けは、みたらし、あんこ、きなこ



「「「「いただきます」」」」



「最初はあんこからじゃな」

 

 オウカが早速あんこの乗った団子を口に運ぶ。

 

「むふぅ、甘くて美味いのじゃ」

「……んん、んまい」

 

 なんとも幸せそうな顔で食っているな。あまり表情を変えないカナメでさえ、目をキラキラさせて夢中で食ってるし、ヨウコは1つ1つじっくり味わって食っている。作った甲斐があったというものだ。

 俺も最初はあんこから食べる派だ。

 どれどれ、味はよくできているだろうか。

 ……うん、間違いない。俺がガキの頃、ばあちゃんに煮てもらったのと同じ味だ。

 しっかりと受け継いだぜ、ばあちゃん。


 俺は昔味わった甘味の味を思い出しながら、団子を味わった。


「よし、決めたぞ、これからは3時にお茶をやるぞ、良いな!!」

「いや、毎回はさすがにキツイ、せめて3日に1回にしてくれ」

「……カナメはオウカに賛成」

「ええと、ええと、ごめんなさいなのです。エイタさん」

「ふはははは、多数決で妾たちの勝ちじゃな、エイタ」

 

 なんてことだ、毎日おやつを作ることが決定してしまった。


 ――いや、そうはさせるか。


「ふっふっふ、残念だったな。俺が新しいのを作らなきゃ、お前らは新たな甘味に出会えない。つまり、俺に全権限がある」

「ぬう、ズルいぞ、エイタ!!」


 鍋に残ったあんこと団子はきれいになくなってしまった。ここまで気に入ってくれるとは嬉しいものだな。


 あと、おやつは毎日は却下となった。3、4日に1回に妥協してもらったよ。 



「「「「ごちそうさまでした」」」」



***




 おやつの後、俺は夕食のために仕込みをしておく。どうせ豆腐があるのだから、あれを食わせてやりたいしな。

 俺は油鍋を火にかけ、豆腐を冷蔵庫から取り出した。

 豆腐を薄く切り、崩れないように油へと投入した。ジュワジュワと音を立て、しばらくするとキツネ色に変わる。これを何枚も作っていく。

 

「これは何を作っているのですか?」

「こいつは油揚げさ、料理の材料になる、夕食はお稲荷さんを作ろうと思ってね」


 大量に作った油揚げを今度はお湯を張った鍋にいれ、油切りをする。この作業をしないと、お稲荷さんがベタベタになってしまうからな。

 油切りした後は味をつけていく。醤油、酒、砂糖で砂糖は多めだ。

 めんつゆを使ってもいいが、俺はこちらの方が調整しやすい。


「これで、このまま冷蔵庫に入れておいて、夕食はご飯を炊くだけだ」

「ふむふむ、油揚げは油切りをするのですね」


 俺の隣でヨウコが鉛筆で小さなノートのようなものに書き込んでいる。


「これは、今までエイタさんが作ってきたお料理の記録なのです。」


 なるほど、レシピ本か、良いんじゃないか。

 本を通して、この世界の人、いや妖怪たちに料理を知ってもらいたいし。


「その料理本で、この世界に料理が広まればいいな」

「はい、頑張って広めるのです」


 料理と言う文化が全く発展していない世界、広めて行くには途方もない時間がかかるかもな 。



 さて、夕食の時間だ。と言っても、材料はある程度作ってあるのでご飯を炊くぐらいだ。今回は少し冷まさないといけないのでいつもより早めに炊いてある。


「これから酢飯を作る」

「酢飯なのです?」


 炊いたご飯に酢、砂糖、少々の塩を入れ切るように混ぜ合わせる。油揚げの方にも味が付いているからな、俺は少し抑えめの方が好みだ。


「そしたら、手を水で濡らして、これくらいの大きさに握って油揚げに詰めるんだ」


 俺は手のひらで寿司一貫分よりも少し大きめに握り、油揚げに詰めていく。これは油揚げの大きさで調整するしかない。


 二人してせっせとご飯を詰めていき、1枚の大皿にお稲荷さんを盛っていく。オウカとカナメは結構食べるからな。ちょっと多いくらいがいいのかもしれない。


 さて、ここはヨウコに任せて、俺は付け合わせを作ってしまおう。

 付け合わせは、揚げ出し豆腐といきますか

 油鍋に火をかけ、冷蔵庫から豆腐を取りだし、水を切っておく。

 1辺を3㎝位の立方体程度に切り、かたくり粉をつける。

 油が温まってきたらかたくり粉を付けた豆腐を入れ表面をカラッと揚げる。


 その間にだし作りだ。醤油、砂糖、酒、カタオ節を入れ水で調整し、煮立たせる。

 そこに、揚げた豆腐を入れ、軽く煮立たせたら完成だ。


 追加でナスも素揚げにして豆腐の付け合わせにしておこう。


 おっと、メイン油、付け合わせ油になってしまったな。

 みそ汁の具材は大根にしておこう。

 

「ほら、完成だ。こいつはお稲荷さん、好きなだけ取って食べるんだぞ」

「おおお、何じゃ、凄い山盛りじゃな」


 今日の朝食

 お稲荷さん、揚げ出し豆腐、白菜の漬物、大根のみそ汁



「「「「いただきます」」」」



「おお、こいつは美味いぞ、いくらでも食えそうじゃ」

「……甘くて、美味い」


 オウカとカナメは気に入ってくれたようだ。……あれ? 一口食べてから、ヨウコが俯いたまま動かないぞ。も、もしかして口に合わなかったのか!? 


「お、美味しいのです!!」


 顔をあげたヨウコの顔は幸せいっぱいだった。

 両手でお稲荷さんを掴みバクバクと口に運ぶ。

 いつもはゆっくりと味わいながら食べるヨウコとは違い、フードファイター顔負けの食べっぷりだ。


「ええと、ヨウコ・・・さん?」

「な、なんじゃ、こんなヨウコ初めて見るのじゃ」

「もぐもぐばくばく」


 一つ、また一つとお稲荷さんが減っていく。結構作ったよな、俺。まだ2個しか食ってないんだけど。もう無くなりそうだよ……、あ、最後の一個がヨウコの口の中に……。

 山盛りに作ったお稲荷さんはあっという間に無くなってしまった。しかも、半分はヨウコが一人で食べてしまった。


「……あ」


 お稲荷さんが無くなってようやく気が付いたのか、ヨウコの顔が真っ赤になった。


「ご、ごごご、ごめんなさいなのです!! 美味しくて無我夢中で食べてしまったのです……うう」

「よいよい、あんな顔して食べるヨウコを見て面白かったぞ、かっかっか」

「……ヨウコも食いしん坊、カナメたちと同じ」


 ヨウコは申し訳なさそうに、まだ手を付けていない揚げ出し豆腐をオウカに、付け合わせの素揚げのナスと漬物をカナメに差し出した。


「ははは、これでみんなの好きな食べ物が分かったよ」

「ほう、そうなのか。よし、妾の好きなものを当ててみよ」


 オウカの好きなものだと? そんなの簡単過ぎてサービス問題だぜ。

 

「だし巻き卵」

「むう、正解じゃ」

「で、カナメはナスなら何でも、漬物に天ぷらにあと煮浸し」

「……正解」

「で、ヨウコがお稲荷さん、だな」


 ヨウコは恥ずかしそうにコクリと頷いた。今度みんなの好きなものフルコースとかいいかもな。


「エイタは何が好きなんじゃ?」

「俺か? 俺は嫌いなものがないからな、つまり、全部好き」


 ヨウコの意外な一面も見られたし、楽しい夕食だったな


「「「「ごちそうさまでした」」」」

豆腐入り米粉団子

材料(約2~3人分)

米粉(上新粉でもOK)…100g

豆腐(水切りしておく)…100g

水…大さじ1~2(生地の固さによって調整)


みたらしあん

砂糖…大さじ3

醤油…大さじ1

水…大さじ2

片栗粉…小さじ1(水で溶いておく)


きな粉

きな粉…大さじ2

砂糖…大さじ1(好みで調整)

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