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石臼と天ぷら

 俺は昨日見かけたものでどうしても気になるものがある。


「そういえば、その石臼ってどこに行けば買えるんだ」


 そう、石臼だ、あれで製粉が出来る。米を製粉して小麦粉の変わりにして、色々作れそうだしな。


「石臼は、石切り屋に行けば売ってるのです」


 石切り屋か、後で見に行ってみよう。あ、砥石とかも売ってるのかな?とにかく製粉が出来れば、さらに料理の幅が増えるぞ。


 さて、今日の昼食は丼物といこうじゃないか。


「今日はドドの照り焼き丼を作る」

「ドドの照り焼き丼なのです?」


 まず、ドドの胸肉をそぎ切りにして酒、かたくり粉を混ぜ、両面を焼いていく。

 砂糖、醤油、酒を合わせたものを入れ蓋をし、汁気が無くなってきたら、ご飯を盛った器に乗せて完成。

 

 「とても早いのです」


 そう、照り焼き丼、コスパ良し、がっつり、簡単、この3つを兼ね備えた丼ぶり。金無いときはこいつに何度も助けられたぜ。


 本日の昼食

 ドドの照り焼き丼、白菜のみそ汁、きゅうりと鰹節の漬物、そして……。

 

「こいつが大豆の絞りかすというわけじゃな」


 卯の花、おからを使った料理だ。

 まず、椎茸を水で戻し薄切りに、にんじんは細切りに、鍋に椎茸を戻しただし汁をいれ、椎茸とにんじん、塩、砂糖をいれ煮る。そこにおからを入れ汁気が残らなくなるまで炒り煮にする。しっとりが好きなら、さっと煮る方が良いぞ。

 おからは現実世界の豆腐屋で昔は格安で売られてた。又はタダでもらうこともできたってばあちゃんが言ってたな。

 つまり、今日の昼食は低コスト飯という訳だ。


「これが照り焼きというたれか、このたれだけでご飯が食えるぞ、おかわりじゃ」

「……うめうめ、おかわり」


 いや、早いって、もう照り焼きはないぞ。と思ったらカナメはご飯に残っていた照り焼きのたれをかけた。


「ああああ、カナメ、妾の分も残しておけ」

「……早い者勝ち」


 オウカは悔しそうにおかわりのご飯を少しだけ盛る。残った卯の花をちらりと見るとそれを口にした。


「おお、甘くてなかなかに美味いぞ!」

「そういえばオウカ、石臼を買いたいんだけどさ」

「む、何に使うんじゃ?」


 こんな時、俺は絶対に断らない方法を知っている


「美味い飯のため」

「よし、買え」

「……待って、石臼は、ある」


 珍しくカナメが口を開いた。いつもは食べるのに集中して食事中は喋らないのに。


「水車小屋にある。……最近はあまり使う人がいないけど」


 なんと、あの水車小屋にあるというのか、しかも水車だから、俺が回す必要はないということだ。

 早速向かおう、夕飯のためだ。


*** 


 

「……これが石臼、こっちの取っ手を下げれば回る。挽く物はここから入れる。3日に1回は手入れしているから、すぐ使える」

 

 水車小屋は複数の部屋に分かれており、精米する部屋、そして今回使う事になる製粉する部屋だ。そこには醤油屋で使った石臼に引けを取らないサイズの石臼が置いてあった。


「……お米を挽くの? 麦は挽いたことあるけど、米は分からない」

「麦か、そういえばこの村にはないのか?」


 麦さえあれば米から製粉しなくて済むのにな、生憎この村で麦は見たことがない。


「麦はこの辺りにはない。…西の国ならいっぱいあるけど、カナメは、『ぱん』っていう料理は嫌い、とても固い」


 パンか、米粉で作れなくはないけど、色々材料が足りないな。バター、イースト、おまけに米粉はグルテンが少ないから膨らみづらいしな。やはり、パンを作るなら小麦粉だよな。


「これでパンは作れないけど、違うものなら作れるぞ」

「……それとナスは合わせるの?」

 

 米粉とナスか、もちろん合わせるぞ。よし、カナメにはナスを多めに入れてやろう。そのことを伝えたら喜んでいた。これは失敗できないな。


「よし、早速入れてみるか」

 

 俺は洗って乾かした米を石臼の上に開いている穴へ入れた。これは量が多いので何回かに分けないといけないな。とりあえず半分を入れて壁の取っ手を下げる。歯車がかみ合う音がして石臼が力強く回り始める。

 しばらくして石臼の隙間から挽かれた米が零れ落ちて来たが……。


「これじゃ、米が割れただけで粉とは言えないな」


 これは何回か石臼に通さないといけないな。俺は零れ落ちた米を集め、残りの米も入れていく。集めては挽いて集めては挽いてを繰り返すと、次第に粉状になってくる。これを手でやっていたらと思うとぞっとする。確実に明日は筋肉痛になるだろうな。


「いい感じに粉になってきたな」


 指で触って確かめてみると、小麦粉のような手触りになっていた。これなら粉として使えそうだな。

 

「ぬわ、今回は外れ米が多いのう」


 隣の部屋でオオウの声がした。覗いてみるとオウカが隣の精米機で精米をしている。あれ、たし

か昨日精米したよな。


「あれ? オウカ、精米は昨日やったはずだぞ」

「エイタ、これは飯のやつとは違う米なのじゃ」


 確かによく見ると、いつもの米とは粒の大きさが違い、こちらの方が大きい。


「これは妾が酒作りに使っている米じゃ、こいつだけ違う田んぼで作っておるのじゃぞ」


 そういえば、酒を造る米って専用の米があるって聞いたことがあるぞ。割れにくい品種を使うんだっけな。

 オウカは厳選した米をさらに精米して磨いていく。そういえば、日本酒は精米歩合で名称が変わるんだよな。米の表面を磨いて……。


「この磨いた時の粉、貰えばよかったんじゃないか……」


 気づくのが遅すぎたが仕方ない、次回はオウカから貰おう。その方が早く製粉できそうだ。


「オウカ、精米の時に米粉が出たら集めておいてくれ」

「む? この粉を集めておけばいいのか?」


 酒米だから使えるかどうか分からないが、物は試しだ。酒作りのついでにオウカに集めてもらうとするか。さて製粉も終わったことだし屋敷へ戻るとしよう。


 

 さて、夕食の時間だが今回は中々豪勢になりそうだ。


 ご飯、玉ねぎのみそ汁、白菜の漬物、そして今回のメイン

 

「今日は油を使うから唐揚げなのです?」

「いや、今日は天ぷらだ!!」


 米粉を小麦粉の代わりにして作るてんぷらはサクサクに上がりやすい。小麦粉よりもグルテンが少ないからな。

 今回の具材はドド肉、にんじん、水で戻した椎茸、ナス、そして、屋敷に戻る時の道に大葉が生えていたのでこいつも揚げていこう。米粉、卵、水で天ぷら衣を作り、揚げる食材には先に打ち粉をしておく。

 揚げ油に箸につけた衣を数滴落とす。衣は底まで沈んだが、すぐに上へ上がってきた。これくらいが温度の目安だ。

 最初はドド肉唐揚げるか。打ち粉を付けたドド肉を天ぷら衣に潜らせ油に入れる。それと並行して、ヨウコには天つゆと大根おろしを作ってもらっている。

 ドド肉を揚げ終わったら、続けて椎茸、人参、ナス、大葉と揚げていく。オウカにはドド肉を、カナメにはナスを一つ多く揚げてやった。


「おお、今日は唐揚げなのか!?」

「いや、今日は唐揚げじゃなくて、天ぷらだ」


 天ぷらと唐揚げの違いは何かと聞かれたら、衣とか、味がついているかとかだろうな。


「そんな細かいこと、美味けりゃどうでもいいんじゃ」

「あ、食う時はこのつゆに浸けて食うんだ。好みで大根おろしをいれるといいぞ」


 それでは手を合わせて


「「「「いただきます」」」」


 いつの間にか、このいただきますがこの屋敷の決まりになったようだ。


 オウカは早速大根おろしをつゆに入れ、ドド肉の天ぷらを浸けて食べる。


「美味いのう、唐揚げとは違った美味さじゃ」

「ナスの天ぷら、うまうま」

「サクサクで美味しいのです」

 

 天ぷらを揚げる時に必要なのは、天ぷら衣を温めないことだ。温める事でグルテンが発生してしまい、サクサク感が失われてしまうのだ。しかし、今回は米粉なのでサクサクに仕上がっている。便利だな、米粉。

 俺は、最初はあえて塩で食べてみる。サクサクに上がった衣がダイレクトに来る。つゆだと衣がふやけてしまうからな、サクサク感を味わいたいなら塩で食うのが一番だ。


「そういえば、小豆を貰ったんだよな。米粉もあるし、団子や柏餅もいいかもな」

「ダンゴやカシワモチ? なんなのじゃ、美味いのか?」

「貰った小豆と米粉を使った、そうだな、甘い物だ」

「ほう、甘い物じゃと!?」


 やはり、甘い物にときめかない女子はいないか。そういえば、この世界の甘味の事情はどうなっているのだろうか。薬屋で砂糖があるくらいなので、甘味位あってもいいと思うのだが。


「甘い物は薬屋さんでたまに飴というのが販売されるます」

「でも、あの婆、気まぐれじゃからな。それに童が優先じゃ、すぐに売り切れる」


 まあ、そこは仕方がないな。子供も甘い物は好きだろうしな。

 米粉はまだ残っているし、明日は甘味でも作ってみるか。



 今日も食に感謝を


「「「「ごちそうさまでした」」」」

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