魔女の住む薬屋さん
醤油屋での騒動を終えて、俺たちは薬屋に向かった。俺とヨウコの他に、会合が終わって合流したオウカの3人だ。
「ここが、薬屋か?」
俺は薬屋の家屋を一目見て驚いた。明らかに村の他の家屋と作りが違い、明らかに浮いている。
まるで、木をくり抜いて作ったような、ファンタジー世界の魔女の住むような家だった。
「アイラおばあちゃん、お邪魔しますなのです」
周りの家の入り口は戸なのだが、この家は取っ手がついていて蝶番のあるドアだった。ヨウコは、ドアを叩いて中に入っていった。
「あら、ヨウコちゃんいらっしゃい、どんなお薬をご所望?」
アイラと呼ばれた店主はしわしわで鼻が大きく、黒のローブを着ている。どこからどう見ても魔女という言葉が似合うおばあさんだった。
「お砂糖が欲しいのです。あと海のお水はあるのですか?」
「はいはい、ちょっと待ってね、お砂糖と、海水だね。そういえばさっきアズキダの倅も海水を売ってくれって言ってたね」
アイラおばあさんはそう呟きながら、せっせと受け取った桶に砂糖を入れていた。
俺は店の棚に置かれている商品を眺めている。何かいい食材とかないかなって、ここは薬屋だ。棚にあるのはよくわからない根っこ、黒く炭のようなトカゲのミイラ、虫の死骸等、到底食べられそうなものではない。
……いや、これは!?
「おや、そこのアンタは風邪かい? 今持っているそれはオウコンって言ってね、すりおろして飲めば体があったまるのさ」
まさか、八百屋で見つからなかった物が、こんなところで見つかるとは。確かに現実世界でも昔は薬として使われていたからな。
「これはショウガ、こっちはニンニクか!?」
「あらあら、そっちのオウビルをご所望かい? そいつもすりおろして飲むんだけどね、そいつは滋養強壮、肉体疲労に良く効くよ」
なるほど、ショウガがオウコン、ニンニクがオウビルっていうのか。効果も聞いた感じ、現実世界の物と同じようだ。
「オウカ、この二つも買っていいか? こいつがあれば、そうだな……、唐揚げの味がさらに美味くなる!!」
「なに、それは本当か!? よし、今すぐ買うのだ!!」
さらに店の棚を見て回る。どうやら乾物も扱っているようだ。むむ、この棚にあるのはキノコか?
これ、椎茸っぽいな、食えるのかな? おお、こっちには唐辛子だ。これらも頼んだら買ってくれた。
まるでデパートでおねだりする子供のようだ。仕方がない、俺には金がないのだからな、ははは。
***
さあ、夕食作りだが、今回のメインはヨウコに任せようと思う。というのも、畑の時にヨウコが言っていた味噌漬け焼を試してみたいと言っていたので、下味の段階から任せている。
俺は今回手に入れた食材で五目煮を作ろう。材料は今回手に入れた大豆と干し椎茸だ。
乾燥大豆なので、前日に浸水させるしかないが、熱湯を使えば急速に戻すことができる。
まず、鍋に大豆と3倍量の水を入れて中火で沸騰させ、蓋をして火を止めて40分置く。その後再び中火で沸騰させたら弱火で15分煮る、これだけだ。
干した椎茸は水で戻して細切りにし、にんじんは戻した大豆と同じサイズの賽の目状に切る。
さあ、ここで昼に作った調味料、めんつゆの出番だ。戻した大豆と椎茸、にんじんを鍋に入れる。めんつゆを入れ、水で希釈、カタオ節を入れ、煮立たせる。
漬物はカナメが希望していた、ナスの漬物だ。さらにみそ汁もナスにしてあげよう。
「お豆は前にも使ったことはあるのですが、その時はお醤油を入れただけなのです」
なるほど、今回の夕食はヨウコの過去の失敗のリベンジといった所か。大丈夫だ、料理は気持ちだ。それに今回は知識がある、絶対に美味しくなるはずだ。
「完成したのです」
本日の夕食
ご飯、ナスの味噌汁、ドドの味噌焼き、五目煮、ナスの漬物
「「「「いただきます」」」」
「む、これは味噌が付いているのか?」
オウカはドドの味噌焼きを箸でつまみ訝しげに見ている。前回食べたときに味が濃いと言っていたからな。しかし、今回の味噌焼きは一味違うぜ
「オ、オウカ様、それは私が味付けをしたのです。食べて欲しいのです」
オウカは、ドドの味噌焼きを一口かぶりつく。
「む、美味いぞこれ、飯も進むのじゃ!」
確かに味噌焼きはあの味の濃さが飯を進めるんだよな。俺も味噌焼きにかぶりつく。
おお、丁度いい味付けじゃないか。こういうのが飯を進ませるんだよな。
一方、カナメはナスの漬物に夢中だ。一応、カナメの漬物に関しては他より多めに持っておいたからな。ナスのぬか漬けを食った時の反応も見てみたいものだな。
「明日はとうふ? と言うものを作るんじゃな。そいつは美味いのか?」
「まあ、人によって好き嫌いはあるけど、俺は好きだぜ。例えるなら、大豆の味を濃縮したような感じだな。で、その豆腐はそのままでもいいし、揚げても炒めても使える食材でもあるんだ」
「ほう、そいつは楽しみじゃのう」
明日は豆腐作りだが一つだけ懸念点がある。現代社会では当たり前のように存在する、あるものがこの世界にはないからだ。
仕方がない、少々力業だが対策を立てておいた方がいいようだな。
「「「「ごちそうさまでした」」」」




