表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖の料理番 〜いただきますで始まり、ごちそうさまで終わる、妖たちの食卓譚~  作者: 奇理可羅
城下町妖怪相撲編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/106

カツ丼作戦会議

 さあ、さすがに行き当たりばったりでことを進めるわけにはいかない。まずは現状を確認しなければ。

 俺は油屋の厨房を確認する。

 火口は6つある。しかし、使っているのは2つだけ。そこで天ぷらを揚げているようだ。

 当日、ここの火口でカツ丼を作るとなると、到底足りなくなるだろう。カツを揚げるなら複数枚一気に揚げられるが、煮るとなると1人前につき1か所の火口を使う。


「揚げるのが2口でカツを煮るのが4口じゃ到底回らないし……」


 人数はいるのだが、それをすべて生かすことができない。

 油屋、肉屋、米屋、パン屋、瀬戸物屋の5店舗。店主と奥さん、さらに店舗によっては店の手伝いをしている従業員までいる。

 全店舗の人員をうまく分配するには……。


「そっか、全店舗を使えばいいんだ」

「ん? 全店舗を使うって一体どういうことだ?」


 俺の呟きにアブラヤさんは首を傾げている。


「言葉通りですよ。この店だけで回そうと思っても来客の多さで絶対に回りません。ならば、他の店でも作ってその客数を分散させればいいんです」

「つまり、俺の肉屋でもカツ丼を作るってことか?」

「そういうことです。すみませんが、各店舗の火口の数を教えてもらってもいいですか?」


 俺は店主たちから各店舗の火口の数を確認する。

 まず、油屋が6口。続いて肉屋が6口。パン屋は石窯がメインなので家庭用の3口しかない。瀬戸物屋も同様に3口だ。

 そして、意外な数字を出したのが……。


「うちは8口あるぜ。通常の火口が6口と、大釜用のが2口だ」

「おにぎり屋を始めようと思ってご飯をいっぱい炊くからね。最近改装したばっかりなのよ」


 米屋の店主と女将は自信満々に頷いた。

 よし、これなら油屋、肉屋、米屋の3店舗で作ることができる。


「俺たちの店はどうするんだ?」


 そう言って少し不安そうな顔を見せるパン屋のシロイさん。そして、当然瀬戸物屋のセトさんも同様だろう。


「お二方の店は食べ終わった食器を洗ってもらう場所にします」

「ん? どういうことだ?」


 まず、カツ丼を作って店頭で丼を受け渡し、お客さんは店頭に置いてある箸や匙を持って各店舗の席で食べる。

 そして、食べ終わった食器をパン屋か瀬戸物屋に持っていくという流れだ。イメージ的にフードコートといった感じだろう。


「食べる場所は5店舗分あるからそこそこ回ると思いますが……」

「いや、その心配はいらねえよ」


 ……え? 食べる場所の心配はいらないってどういうことだ?


「この町のやつらは行儀よく食べる奴なんて少ねえほうさ。何ならその辺の地面に座って食ったり立って食ったり、何なら飛んで食ってたりするやつもいるくらいだぜ」


 飛んで食うってどんな奴らだよ……、いや、天狗なんかがそうなのか?


「では、カツ丼を作る3店舗に揚げ鍋2つ、カツ丼用の平鍋4つを準備します。揚げ担当が1名、カツ煮担当が2名で最低でも合計3名は配置したいところですが」


 揚げ担当は油屋の店主、俺、ヨウコの3名で担当としよう。

 そして、カツ煮担当は先ほどカツ丼を作る時に手伝ってくれた奥様方を配置する。しかし、こうなると1名足りない。


「残り1か所は俺がやろう」


 そう言って手を上げたのは肉屋の店主。なんでも、奥さんも料理ができるが、彼も手伝っているのである程度のことはできるという。

 さらに洗い物兼ご飯担当の米屋の店主ノヅチさん。やはり、ご飯炊きはプロに任せる方が間違いはないはずだ。

 セトさんとシロイさんも洗い物担当だ。


「洗い物をしつつ、器を各店に運ばないといけないようだな」


 後は各店主たちの働ける子供たちにも手伝ってもらうことにする。ご飯を盛ったり、氷屋から冷凍されたカツを持ってきてもらったりする予定だ。

 いろいろと配置やら段取りは決めてはいるのだが、いかんせん不安ではある。当日は必ずと言っていいほどイレギュラーが発生するものである。


「もしもの時は早めに切り上げたり、提供する速度を変えたりして調整するしかありませんね」

「ははは、しかし、人数的にも結構ギリギリなんじゃねえか?」


 正直言ってギリギリというか足りないくらいだ。あと、5人くらいは欲しいところだが仕方がない。


「ったく、アブラヤ。お前さんの行き当たりばったりな行動は昔から変わらねえな」

「まあ、おらたちもそれに付いてきてんだけどな、がっはっは!」

「そうそう、いっつもこいつが火付け役みてえなもんだからよ」


 そう言いつつ、5店舗の店主たちは互いに笑いあっている。

 準備できることはやった。あとは当日しだいだろう。


「とりあえず、準備はできましたし、明日は全力で頑張りましょう」


 俺の言葉に5店の店主は頷いた。

 各自が自分たちの店へと戻り、俺たちも屋敷へと戻ることにする。


「まさか、こんなことになるとは思ってもみなかったのです」

「ははは、なんか悪いな。ヨウコまで巻き込んでしまって」

「大丈夫なのです。でも、もしこれが成功したなら、この町にとっては大きな前進になると思うのです」


 確かにヨウコの言う通りだ。最初に入った時は飲食店としては完成されたものではなかった。もし、これを皮切りに他の店でも飲食店が開かれるのなら、この町はもっと大きく発展するのかもしれない。


「華の国みたいに賑やかなお店が並ぶのかもしれませんね」

「華の国には料理を出す店はあるのか?」

「あるのですよ。前に話していたリュウモウを出すお店もあるのです」


 そういえばうどんを出したときにリュウモウに似ているって言っていたな。

 飲食店があるということは華の国とは相当発展した国なのだろうな。


 そんな大きな期待を膨らませながら俺は屋敷への帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ