表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑寸前の悪役令嬢ですが、中身が不思議ちゃんオタクなので推しを幸せにすることにしました  作者: 花の香り
アニメの最終回

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/36

眠りから覚めた朝、痛いところを突かれて

目を覚ますと、部屋は静かだった。


 窓から差し込む光がやわらかく、さっきまでの眠気が少しずつ溶けていく。


「……思ったより、すぐに寝てしまったみたいです」


 お腹も満たされ、体が軽い。

 人間、やっぱり食事と睡眠って大事なんだなぁ、としみじみ思う。


 ――カタン。


 小さな物音がして、私は顔を上げた。


 部屋の奥、窓際の椅子に誰かが座っている。


「……起きたか」


 低く落ち着いた声。


「ベネディクト様!?」


 思わず背筋が伸びた。


(いつからいたんですか!?

 寝顔とか見られてませんよね!? よだれ大丈夫でした!?)


 慌てて髪を整え、口元をそっと拭う。


「騒がしいな。安心しろ、今来たところだ」


(絶対ウソだこの人……)


 机の上には読みかけらしい書類が置かれている。

 どう見ても、しばらく前からいた気配しかしない。


「体調はどうだ」


「はい! ご飯のおかげで完全復活です!」


「……ご飯?」


「あっ」


 しまった。貴族令嬢っぽくない。


「……食事、です。とても美味しかったです」


 言い直すと、ベネディクト様はわずかに目を細めた。


「そうか」


 短い返事。でも、どこか安心したようにも見える。


 沈黙が落ちた。


 ……気まずい。


(推しと二人きりって、こんなに心臓に悪いんですか!?)


 何か話さなければと焦り、口を開く。


「あの、ベネディクト様はお忙しいのでは?」


「忙しい」


「ですよね!?」


「だが、お前の様子を確認する必要があった」


 真っ直ぐな視線が向けられる。


 逃げ場がない。


「……お前は、変わったな」


 心臓が跳ねた。


(きたーーーーーー!!)


 原作知識警報、最大注意。


「そう、でしょうか?」


「以前のお前は人を信用しなかった。礼も言わなかった。食事にも手を付けなかった」


 ……全部、本来のフェリシアの行動だ。


「だが今のお前は違う」


 彼が静かに立ち上がり、こちらへ歩いてくる。


「まるで――別人だ」


 ド直球。


 思わず視線を泳がせる。


(やばい、バレる!? 転生初期イベント!?)


 けれど次の言葉は予想外だった。


「……その方が、良い」


「え?」


「少なくとも今のお前は、怯えていない」


 その声はとても静かで、少しだけ――優しかった。


 胸の奥がじんわり熱くなる。


「ありがとうございます」


 自然に言葉がこぼれた。


 ベネディクト様がわずかに目を見開く。


「……やはり変だな」


「ひどくないですか!?」


 思わずツッコミが飛び出した。


 一瞬の沈黙。


 そして――


「……ふっ」


 小さな笑い声。


 原作では決して見られなかった、柔らかな表情だった。


(え、待って。笑った? 今、笑いました???)


 推しが笑った。


 世界が救われた気がする。


 そのとき、扉が勢いよく開いた。


「兄上!」


 入ってきたのはディラン様だった。


「聖女が目を覚ました」


 空気が一変する。


 ベネディクト様の表情が、王子の顔へ戻った。


「……そうか」


 私は息を呑む。


(来た……物語が動き出す)


 原作では、ここからすべてが崩れていく。


 でも――。


(今回は違います)


 私はシーツをぎゅっと握った。


(絶対に、誰も不幸にさせませんから)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ