表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑寸前の悪役令嬢ですが、中身が不思議ちゃんオタクなので推しを幸せにすることにしました  作者: 花の香り
変装して、いざ王城へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/36

再起の決意と小さな幸運

次の日、熱はすっかり下がっていた。


ノックの音に返事をすると、アンナが部屋に入ってくる。


「お体は大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。ねぇアンナ、取引の件……もう無理だと思う?」


アンナは少し考え込んだ。


「無理だとは思いますが……今のお嬢様は、予想外の行動をしたり成し遂げたりしています。何か方法があるかもしれませんね。お弁当の販売は続けますか?」


「続けるわ。でも私、メイドに戻りたいの」


「その足でですか?」


「あ……そうか。手紙の内容、まだ話してなかったわね」


私はベネディクト様からの手紙を取り出し、ゆっくり読み上げた。


──読み終えると、アンナの表情が変わっていた。


「許せません!」


思わず一歩下がる。


「魔力測定のときは優しかったのに、いきなりこの態度……!結婚白紙、来ないなら二度と会うなって……こんな手紙、捨ててしまっていいです!」


アンナは珍しく怒っていた。


「アンナ、落ち着いて。性格出てるわよ」


その一言で、アンナはハッとしたように姿勢を正す。


「申し訳ございません、お嬢様」


「いいのよ。フェリシアのために怒ってくれてるの、分かってる」


「……お嬢様」


「この手紙に書いてある側妃様のことよ。私はリーゼ様を助けただけなのに、犯人にされてるみたい」


「……」


「お嬢様でいいわよ。そっちの方が慣れてるし」


「かしこまりました、お嬢様」


少し間を置いて、私は続けた。


「取引はこのままじゃ無理。だから、働きながらお弁当を売る方向でいこうと思うの」


「働きながら……?」


「見たことない食べ物なんて、普通は警戒されるでしょ?でもメイドとして働いてる人が食べてたら、少しは広まると思うの」


「なるほど……」


「それに、冤罪でフェリシアに罪がいくなんて、お嬢様失格だもの」


本当は――ファンとしても、許せない。


「ですが、その足では……」


「大丈夫よ。明日には固定も取れるって言われてるし。期限も近いでしょ?」


「どうして、そこまで取引にこだわるのですか?」


私は少しだけ考えてから答えた。


「私、まだ何もできてないの。むしろ世界をかき乱してる気がして……それに、お父様に負けたままなんて、美味しくご飯も食べられないでしょ?」


アンナは小さく笑った。


「確かに、それは嫌ですね」


「でしょ?」


「分かりました。お嬢様は足の回復に専念してください。私は料理を学んできます」


「ありがとう、アンナ」



そして翌日、予定通り足の固定が外れることになった。


気分転換も兼ねて、私は庭へ出ることにした。


広くて美しい庭。さすが公爵家だ。


噴水の近くまで歩いたとき――


バシャバシャ、と水音が聞こえた。


慌てて駆け寄ると、小さな小鳥が水に溺れていた。


「大丈夫!?」


私はドレスを使って小鳥をすくい上げる。


よく見ると、羽を怪我していた。


「どうしよう……」


人間の医者で治せるのだろうか。


とりあえずアンナに相談しようと建物へ戻ると――


「……えっ」


「フェリシアか。驚かせないでくれ」


目の前にいたのは父と、その側近だった。


「その……」


「落ち着け」


「落ち着けません!小鳥が!」


私は必死に訴える。


父は無言で私の手元を見た。


「助けないと!」


「……なるほどな。ジル、治せる者を呼べ」


「旦那様?」


私も側近も驚いた。


「なんだ。治したいのだろう」


「はい!」


私は小鳥をジルに預ける。


父と二人、少し気まずい空気が流れた。


「……あの、お父様」


「……」


「いえ、なんでもありません」


「足に気をつけろ。それとドレスは……まあいい。後で小鳥は返す。部屋で休んでいろ」


それだけ言うと、父は元の冷たい表情に戻った。



部屋に戻り、しばらく待っているとノックの音。


入ってきたアンナの手には、小鳥がいた。


「治りましたよ」


怪我はすっかりなくなっていた。


「触りますか?」


「……いいわ」


小鳥は部屋の中を飛び回る。


「帰りたいのかもしれませんね」


「帰りたい……?」


「羽に紋章がありました。持ち主がいるのかもしれません」


「それは大変」


私は窓を開ける。


小鳥は一直線に外へ飛んでいった。


「よかった……」


「何か良いことが起きるかもしれませんね」


「そうね」


その日は、小鳥のことばかり考えていた。


――そして。


その“幸運”は、もうすでに訪れていたことを、私はまだ知らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ