王城へ向かう朝
変装して、いざ王城へ
朝、目が覚めて支度をする。
先日アンナに教えてもらったメイクを施し、
プレゼントしてもらった服に袖を通す。
フェリシアがこれまで着たことのない服。
もちろん、貴族が平民の服を着ることなど本来はあり得ない。
鏡の前に立つ。
「……可愛い」
思わず声が漏れた。
フェリシアは、なんでも着こなせる。
可愛い、可愛い……。
推しの新衣装を見たような気分で、
緊張がいつの間にか幸福に変わっていた。
⸻
その後、アンナを呼び、朝食へ案内される。
今日は珍しく、両親がいた。
(……珍しい)
フェリシアは、基本一人で食べていたはずなのに。
「そこで突っ立っていると邪魔になるでしょう、フェリシア。座りなさい」
「はい、お母様」
考える間もなく注意され、席に座る。
(……なんで二人がいるの?)
「不合格だな。その服装は。メイクまで変えて」
しまった。
今の私は、お嬢様ではなく、質素な女性そのものだ。
「仕事先にドレスのような服装で行ったら、誘拐とかされそうで……」
「フェリシアは好きにすればいいのよ。どうせすぐ辞めるでしょうし」
(この人たち……私を見に来ただけ?)
そう思いながらも口には出さない。
「行く時はアンナに同行させる。帰りもアンナと一緒に戻りなさい」
「お父様、それは――」
「道も分からないだろう。迷子になって相手に迷惑をかけるくらいなら、その方がいい」
(……今は逆らわない方がいい)
そう判断した。
「毎日ではなく、たまにでしたら大丈夫です」
「それでいい。……朝食を取れ」
父が使用人に合図を送る。
数分後、料理が運ばれてきた。
会話はない。
ただ、ちらちらと視線を感じる。
やがて、二人は先に食べ終え、席を立った。
「フェリシア。気をつけて行くのよ」
「どうせ出来ない取引だ。すぐ戻ってくるさ」
飴と鞭。
その言葉を残して、二人は部屋を出ていった。
⸻
私も食事を終え、部屋を出るとアンナが待っていた。
その服装は、私と似たようなもの。
(そりゃそうか。メイド服じゃ外出できないし)
それにしても――
「素敵だね」
「えっ……そうですか?」
少し戸惑ったように返すアンナ。
「お嬢様。時間があまりありませんので、早歩きになりますがよろしいですか?」
「任せて。遅刻ギリギリで間に合ったこと、何回もあるから」
「何を言っているのか分かりませんが……それは誇ることではない気がします。行きましょう」
そうして私とアンナは――
目的地へと足を進めた。




