考え抜いた答え
その後、アンナは業務があるらしく、急いで建物へ戻っていった。
人手を最小限にしているから、アンナにはかなり苦労をかけているのだろう。
遠ざかるアンナの背中を見ていると、少しだけ力が湧いてきた。
私も建物へ戻る。
部屋に着くと、ベッドへ体を預けた。
廊下を歩いていた時のことを思い出す。
使用人たちは私とすれ違うたびに軽く会釈をしてきた。私は反射的に会釈を返す。
そのたびに、どこか不思議そうな目で見られている気がした。
……まあ、仕方ない。
学校では挨拶や会釈を返すのは当たり前だったし、無視なんてしたら「感じの悪い人」だと思われる。先生に注意されたことだってある。
体はフェリシアでも、中身は私なのだから――そう簡単には変えられない。
それにしても。
私は「変装して働く」と言ったものの、具体的な考えはまだ何もない。
アニメや小説、物語を見すぎて思いついただけだ。
物語の真似をしたことはあっても、実際に変装なんてしたことがない。
私は誰になればいいんだろう。
まず男装は無理。
絶対バレる自信しかない。
いろいろ考えた末に、ひとつの結論にたどり着いた。
フェリシアにならなければいい。
私はサユ。
サユとして振る舞えば、別人だと思われるはずだ。
見た目は……メイクをアンナに教えてもらえば、なんとかなるだろう。
そして次に大事なのは――両親。
頑固すぎるお父さん。
過保護なのか心配性なのか分からないお母さん。
説得するなら、夜の食事の席しかない。
……そういえば。
学校はどうなるんだろう。
退学ではなく、休学扱いのはずだけど。
物語の中では、処刑された後のフェリシアは登場しない。
つまり、その先は描かれていない。
まあ……処刑延期の身なのだから、普通に通えるわけもないか。
とにかく。
まずは、夜の戦いに備えよう。
私はそう決めて、目を閉じた。




