表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑寸前の悪役令嬢ですが、中身が不思議ちゃんオタクなので推しを幸せにすることにしました  作者: 花の香り
アニメの最終回

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/36

帰る場所 悪役令嬢の家

王都の街並みを馬車の窓から眺めながら、私は固まっていた。


(……本当に帰るんだ)


 フェリシアの家へ。


 本来なら、処刑されて戻ることなどない場所。


 向かいにはベネディクト様が座っている。


 無言。


 気まずい。


(護衛って言ってたけど、王太子が直々に来る必要あります!?)


 視線を外へ逃がす。


 石造りの街。

 行き交う人々。

 華やかな王都。


 ――アニメで何度も見た景色だった。


 馬車の隅では、侍女のアンナが静かに姿勢を正して座っている。

 視線を向けると、安心させるように小さく微笑まれた。


(……見張られてる感じはしないけど、お目付け役よね、たぶん)


「……落ち着かないか」


 不意に声が落ちてきた。


「い、いえ! 大丈夫です!」


 本当は全然大丈夫じゃない。


 これから向かう場所は、

 フェリシアが孤立していた原因の一つ。


 貴族社会。


「……家に戻るのが嫌か?」


 アンナが同席しているのに、ずいぶんとはっきり聞く人だ。


 けれど――図星だった。


 本物のフェリシアは、

 家でも心を休められなかった。


 厳格な父。

 期待ばかりする周囲。

 完璧であることを求められる日々。


「……少し、緊張しています」


 正直に答えると、ベネディクト様は小さく息を吐いた。


「そうか」


 それ以上は聞いてこない。


 その沈黙が、少しだけ優しかった。


 やがて馬車が止まる。


「到着いたしました」


 扉が開く。


 目の前に現れたのは――


 巨大な屋敷だった。


(でっっっか!?)


 三階建ての白い屋敷。

 広い庭園。

 並ぶ使用人たち。


 完全に貴族の世界。


「お帰りなさいませ、フェリシアお嬢様」


 一斉に頭が下がる。


 心臓が跳ねた。


(え、待って、私これ対応できる!?)


 足が一歩止まる。


 その瞬間。


 背中に、軽く手が添えられた。


「行け」


 低い声。


「……お前の家だ」


 顔を上げる。


 ベネディクト様は、いつもの無表情だった。


 けれど。


 ほんの少しだけ、背中を押してくれている気がした。


 私は小さく息を吸う。


(大丈夫)


(私はフェリシアを幸せにするために来たんだから)


 一歩、前へ踏み出す。


 ――そのとき。


「……随分と元気そうだな」


 低く冷たい声が響いた。


 屋敷の入口に立っていたのは、


 鋭い視線を向ける一人の男性。


 フェリシアの父だった。


(……来た)


 悪役令嬢が生まれた場所。


 本当の戦いは、

 ここから始まる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ