第176話:伏見稲荷大社と伊勢神宮
■Scene1:京都・伏見稲荷大社の千本鳥居にて
朝。凛奈は京都・伏見稲荷大社を訪れていた。
千本鳥居の朱色が朝日を受け、幻想的な光の回廊を作り出している。
観光客が少ない静かな時間、凛奈は本殿の裏手にある小道を歩いていた。
その時、鳥居の影で小さな女の子が座り込んでいた。
凛奈:「どうしたの?」
少女:「……お母さんが、いなくなっちゃったの」
ポケットには、小さなキムチ壺が。
凛奈は香りを嗅ぐ。
(……米麹の発酵香に、ほんのり柚子。これは、“子どもの記憶”を守る香り)
■Scene2:かざりやと一和、あぶり餅の味が告げるもの
凛奈は少女を手をつなぎ、徒歩で**今宮神社の「あぶり餅通り」へ。
ふたつの老舗――「一和」と「かざりや」**の軒先から、香ばしい香りが立ちのぼる。
少女は「あぶり餅、食べたい……」と呟く。
凛奈はふたつの店でそれぞれの餅を一串ずつ買い、少女と一緒に食べる。
その瞬間、少女が涙をこぼす。
「……これ、お母さんと食べた味だ……」
凛奈(内心):(あのキムチも、あぶり餅も――“母のぬくもり”だった)
■Scene3:少女の記憶を追って、伊勢へ
少女の話をもとに、凛奈は彼女の母が三重・伊勢神宮近くの旅館に向かったと推測し…急ぎ近鉄特急で伊勢市へ。
到着した伊勢神宮・内宮では、穏やかな風が吹いていた。
凛奈は参道に立ち、キムチをもう一口。
――味覚が揺さぶられる。甘味と酸味、そして「焦げた香り」。
思い出すのは、“迷子になった少女の母”が最後に見た景色。
■Scene4:伊勢の旅館、思いがけない再会
伊勢市内の旅館「伊久」の帳場にて、凛奈は女将に尋ねる。
すると、数日前から滞在している一人の女性の名が少女の苗字と一致した。
部屋を訪れると、そこには放心状態で窓の外を見ている母の姿。
凛奈:「……娘さん、京都で待ってますよ」
女性ははっと顔を上げ、凛奈の手元のキムチ壺に気づく。
「……この香り……娘が好きだったキムチに、柚子を加えてくれてたの、私……」
■Scene5:伊勢神宮の境内で、家族は再び
数時間後。
伊勢神宮の外宮近く、参道で少女と母は再会する。
少女:「おかあさんっ!」
女性:「ごめんね……ほんとうに、ごめん……」
凛奈は少し離れて、香り壺の蓋を閉じながら微笑む。
(香りと味――それぞれが、“記憶の扉”になる。
巡礼の地は、心の迷いも、帰り道を照らしてくれる)
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