第175話:時計と眠り
■Scene1:札幌の朝、雪のにおいと鐘の音
北海道・札幌。
まだ雪の残る街並みに、札幌時計台が朝の陽光に照らされていた。
凛奈はその前で立ち止まり、空気を吸い込む。
(この空気……どこか、時間がゆっくり流れている感じ)
すると突然、ひとりの警察官が近づいてくる。
警察官:「朴凛奈さんですね? すみません、急なお願いなんですが……今朝、時計台の鐘が“鳴らなかった”んです。そして塔内で眠ったままの女性が発見されました」
■Scene2:時計の裏に眠る女と、香りの残滓
時計台の内部。
女性はベンチに横たわり、眠ったままだった。
ただ、彼女のそばには薄く香る発酵キャベツとバターのような芳香が漂っていて、凛奈はそっと鼻を近づける。
(……これは、道産子らしい発酵キムチに、乳製品が融合した香り)
凛奈:「この香り、“懐かしさ”と“拒絶”が混ざってる。
彼女は“ここに戻りたかったけど、戻れなかった”のかも」
■Scene3:時計台の記憶、止まった時間
凛奈は地元の協会館で、女性の身元を確認。
彼女は札幌出身の元音楽教師で、数年前に失踪届が出されていた人物だった。
彼女は、時計台で音楽会を開くのが夢だったが、心の傷で辞めていた。
凛奈は小さな香りの瓶を開け、塔の階段でそっと呟く。
「“音が鳴るはずだった場所”で、“鳴らない鐘”を選んだ。
香りで、夢を閉じ込めていたのね」
■Scene4:香りの謎と、再起の鐘
その夜。凛奈はジンギスカンを味わいながら、ふとメモを開く。
『彼女は“夢の記憶”を香りに閉じ込めた。
でも、閉じただけじゃなく、きっと“もう一度聴きたかった”。
この場所で。』
翌朝、凛奈は警察に提案する。
「彼女を、もう一度“鐘の前”に立たせてください」
午前10時、時計台の鐘が――
女性の枕元で、ゆっくりと響いた。
彼女のまぶたが、ほんの少し動く。
■Scene5:札幌の空に、微笑みの鐘が鳴る
退院後、凛奈は彼女と再会。
女性:「……あなたが、助けてくれたの?」
凛奈:「いいえ、あなたが“香り”で助けを呼んだの。
その香りが、“もう一度夢を見たい”って言ってた」
女性は目を細め、ふと空を見上げた。
「また……ここで、音楽を始めようかな」
凛奈は小さく頷き、ポケットの中の小瓶をそっと閉じた。
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