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第177話:赤レンガの追憶


■Scene1:港の風と、赤レンガの朝


神奈川県・横浜。

海辺に建つ赤レンガ倉庫が、朝の潮風に包まれていた。


凛奈は、カメラマンの撮影仕事で訪れていた。

その合間に、倉庫周辺のカフェテラスに腰を下ろす。


コーヒーの香りとともに運ばれてきたのは、

「横浜発・洋風キムチのプレート」。


凛奈:(塩味が効いてる……でも、どこか懐かしい味)


一口食べたその瞬間――

ふと、隣席の女性が、嗚咽を漏らして泣き崩れた。



■Scene2:別れの手紙と、キムチの残り香


その女性は30代前半。

バッグの中から落ちたのは、手紙と鍵、そして小瓶のキムチだった。


凛奈は静かに声をかける。


凛奈:「何か、忘れられない人が……?」


女性:「……3年前、港で別れた人と、昨日また偶然ここで再会したんです。

でも――彼は、何も覚えてなかった」


凛奈はキムチの小瓶を開けて、一口だけ味見する。


トマトと唐辛子、そして……ほんのりミントのような清涼感。

心を落ち着ける成分と、別れを受け入れるための「記憶の整理」――


凛奈:「これは、“記憶を柔らかくする味”。

あなた自身が、“忘れるために作ったキムチ”かもしれません」



■Scene3:赤レンガ裏の小道、潮風のなかの真実


女性は凛奈に導かれ、赤レンガ倉庫の裏手にある小道を歩く。


そこには、昨夜その男性が忘れていったメモと花束が残っていた。


「君のこと、思い出した。怖かったから、言えなかった」

そう書かれた走り書き。


女性の手が震えた。


凛奈:「彼も同じだった。“思い出す勇気”が、ほんの少し遅れただけ」


女性はそっとキムチの瓶を閉じ、メモを胸に抱く。



■Scene4:夜の倉庫にて、味の記憶


その夜。

凛奈は赤レンガ倉庫近くのレストランで、**“横浜ナポリタン風キムチ”**を注文する。


トマトと発酵、甘さと苦みのバランス。


(味は、言葉よりも確かに“心の奥”に触れる)


手帳には、こう記した。


『塩味の記憶。

涙で薄まることも、香りでよみがえることもある。

けれど、最後に残るのは――きっと、温もり。』


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