第169話:函館山、夜に咲く
■Scene1:室蘭から函館へ、静かな車窓
室蘭の夜。
凛奈は地元の警察関係者に深く頭を下げ、
静かに最終目的地――函館への移動を始めた。
地元の駅員:「この時間に移動とは……気をつけて。夜の道南は冷えますから」
凛奈:「はい。でも……今日のうちに、あの夜景を見たくて」
列車の車窓には、漆黒の海と、時折灯る港町の光。
キムチ壺を小さく抱え、凛奈は眠ることなく座席に身を預けた。
■Scene2:函館駅、迎えてくれた灯り
午後9時前。
凛奈は函館駅に降り立つ。
構内には観光客の姿もまばらで、静けさの中にどこか「迎え入れられた」ような温もりがあった。
そのままタクシーに乗り込み、
目指すは――函館山ロープウェイ乗り場。
運転手:「今夜はよく晴れてますよ。世界三大夜景って、伊達じゃないですからね」
凛奈は頷きながら、胸の奥が少しだけ切なくなっていた。
(……旅の終わりって、少しだけ、さびしい)
■Scene3:世界三大夜景、そして沈黙
ロープウェイで山頂へ。
ドアが開いた瞬間――風とともに、眼下に広がる夜の街。
湾の両端に広がる函館の光。空と海、そして街の一体感。
凛奈はしばらく、ただ黙って見つめた。
『事件のない時間も、必要なんだってわかった。
誰かがそばにいなくても、心の香りがあれば、つながっていられる』
ポケットから取り出したのは、北海道の山わさび入り特製キムチ。
(この香りも、全部、私の記憶の一部)
凛奈は小さく微笑んだ。
■Scene4:韓国へ帰る朝、静かな決意
翌朝。
函館空港で、スタッフが声をかけてきた。
「朴凛奈さん……ですね? 搭乗のご案内をいたします」
凛奈:「ありがとうございます。……また、きっと戻ってきます」
空港内の売店で函館名物・イカ飯とハスカップゼリーを手土産に購入。
その横には、旅中で出会った人々から届いた小さな手紙の束も添えられていた。
■Scene5:飛行機の窓から、雲の上へ
機内。
凛奈はキムチ入りのおにぎりを一口だけかじり、手帳を広げる。
『北海道の風は冷たくて、でも、人は温かかった。
どんなに遠くても、記憶は香りとともに残ってくれる。
次に向かう場所でも、私は私のままで、探し続けよう』
飛行機が雲を突き抜けた瞬間、
凛奈は小さくつぶやいた。
「またね、北海道。ありがとう……
私の心を、もう一度動かしてくれて。また来るね‼︎ 」
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