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第166話:千鳥ヶ池に映る、あの日の記憶


■Scene1:紋別の風、軽やかに


凛奈は朝のうちに紋別市へ立ち寄った。

流氷科学センターは営業前。だが、港には観光客の姿もちらほら。


名物のホタテまんと紋別流アイスクリームを食べながら、凛奈は独り言。


「……何もない日、ってやっぱりないな。きっと今日は静か」


笑いながらも、胸には探偵としての“勘”がまだ生きていた。



■Scene2:旭川、石狩川と千鳥ヶ池


昼過ぎ。凛奈は旭川市に入り、石狩川の河川敷を散歩していた。

そして、地元の人にすすめられた静かな場所――千鳥ヶ池へ。


その池の近くで、騒ぎが起きていた。


「やめてって言ってるでしょ!」

「だったら、最初から言えよ!」


言い争っていたのは、20代後半の男女。地元のカップルだった。


男:「……高校の時、お前が“誰かといた”って、ずっと気にしてた」


女:「違うよ。あのとき……私、病気で入院してただけだったのに……」



■Scene3:香りに触れた瞬間、心が解ける


凛奈はそっと2人に近づいた。


「少しだけ、これを嗅いでみてもらえますか?」


差し出したのは、旭川発・山わさびキムチ。

ツンとくる香りに、2人は顔をしかめながらも、なぜか懐かしそうに微笑んだ。


女:「……高校の購買部で売ってた、あの“激辛弁当”。

あなた、よくそれとこのキムチ、一緒に食べてたよね」


男:「……あぁ。あれを食べてる時だけ、お前が笑ってくれた気がしてさ」


凛奈:「香りって、不思議ですよね。

言葉よりも先に、記憶と心をつないでくれる」



■Scene4:互いの胸に、ひとつだけの答え


しばらく沈黙した後、2人はそっと手を繋いだ。


女:「……言えなかったこと、たくさんあるけど、言いたいこともあるの。

まだ、間に合う?」


男:「……お前が隣にいるなら、全部聞ける気がする」


凛奈は微笑んで、2人に背を向けた。


(こういう“事件”も、あるんだな。香りひとつで救える心があるなら、私はやっぱり、やめられない)



■Scene5:旭川の夜、静かな温もり


その夜、凛奈は旭川駅近くの実在のラーメン店で、名物の旭川醤油ラーメンをすする。


「……寒い夜には、熱い出汁と発酵が沁みるね」


そして、駅前の書店で買ったポストカードに、手書きの言葉を綴る。


『心が固まる前に、ほどいてあげてほしい。

香りでも、言葉でも、笑顔でも。

それができたら、きっとまた、歩き出せる』


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