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川と池の間に何があるか。もっぱら森がある。
たくさん木が生えている以上はっきりとは言えないけど、だいたいいちばん短いところでも2カルナ 程度の距離がある。かつて最盛期のカルナウル・フルバンナスは1日で24 カルナ を踏破したというが、私では1カルナ歩くのに1時間以上かかってしまう。
水路というものが本来どれだけの大きさに掘ればいいのかわからないけれど、四方1ハードの四角を1ハードの深さに掘るのだって相当しんどいのに、どうやったら2カルナも掘れるのだろうか。まず2カルナがだいたい6000ハードになるか。
6時間。
さっき言った、1ハードの深さで1ハード四方の穴を掘るのにかかった時間だ。適当な道具もなく、掘ると同時に穴の外に出るための階段を作る必要もあったことを考えればなかなか悪く無い時間だと思わなくも無いけれど、実際のところはどうなんだろう? 6時間とは言ったけれど、同時に体力を使い切ってしまったことを考えれば1日この穴一つ掘るのが精一杯だ。
「しかも雨が降ったら……」
不吉な考えが頭をよぎった。
雨が降ればきっとすぐ崩れてしまうこれを、1日に一つ掘れるとしよう。
2カルナ分に達するのには6000日。
33年。
その間雨季と乾季は交互にやってくる。
例えばまともな道具があって、二倍の速度で掘れるとしよう。その上深さと幅を一回り小さくできて作業時間が半分になったとして、これで4分の1。8年ちょっと。乾季だけ作業するとすれば倍かかるので17年。雨季に崩れるのを補強したり直したりするのにかかる時間を考えればさらに倍。おっと、33年に戻ってきてしまった。
……自分の見通しの甘さがちょっと恨めしくなってきた。
「でもやるしか無いわよね」
もっと効率良く掘れる方法があるかもしれないし、最短距離を間違っているかもしれない。
逆に掘っている場所で地面が裂けたりするかもしれないし、木の根か何かに先を塞がれて大回りをする羽目になるかもしれない。
だけど、とりあえず始めないことには何にもならないのだ。
「……とりあえず、次からは半分くらいの深さに掘りましょう」
決意を新たにしても三方を自分の背より高い土に囲まれていると気分が乗らない……というか怖い。せめて次からは腰くらいの深さに掘ろう。時間の節約にもなるしぜひそうしよう。そうするとやっぱり鍬だな。円匙 もいいけど、浅く広くなら鍬だ。もしかしたら全体を掘り起こしてさえいれば、ある程度は雨とかで流れるかもしれないし……あとはあれよね。今日はたまたま晴れてたけど、雨が降ったらこうはいかない。この穴にどれくらい水が溜まるのかも調べないと。
「よいしょっと……あれ?」
おかしい、あの子がいない。
穴を掘り出した時は近くの木の根元に座っていてもらった。1時間程度ごとに休憩を入れて……さっき一度上に上がった時もいたはずだ。獣の気配はしてないし、この距離なら何かあれば気づけるはず。
ということは、彼女が動いた……のかな? それはつまり……自主的に?
「え、ちょっと、おーい?」
返事は無い。
「ちょっと、どこなの!?」
返事は無い。
「ねえ、ねえホーマンディー ナテルンダ !?」
返事は無い。こういうとき、苗字でしか呼べないのがもどかしい。彼女から聞きたいなんて贅沢言わないで、リザードマンさんに知らないかどうか聞いておくべきだった。
「ホーマンディーナテルンダ! ホーマンディーナテルンダァ!!」
全然気配が無い。今までは大人しくしてたのに……なんでだろう? きっと理由があるはずだ。そしていなくなった理由と動き出した理由は必ず繋がってる。なら、その理由さえわかればどこにいるかだってわかるはず。
例えば……お腹が減った? ナータくんが動き出した理由はそれだったはず。この辺で美味しいものの匂いでも感じて、つい動き出しちゃったとか、そんなことは……無いか。あったら私だって匂いがわかるはずだ。この辺で今そんな匂いは全くしない。よって食べ物じゃ無い。
刺激?
食べ物の匂いじゃ無いにしても、動き出すにはそれなりの動機があるはず。
目、耳、鼻。
何か見たか、聞いたか?
耳なら、私にだって聞こえててもいいはず。穴の中とはいえ、それほど狭いわけでも無い。
なら目か。
何を、何を見たらあの子は動く?
まさか……熊?
ありえない。あの子の目が熊を見つけるより先に、熊が私たちを見つけて襲いかかってくるはず。それに、今は周囲に熊がいる気配なんて少しも無い。熊も違う。
わからない。何があればあの子は自分で動くの? それとも、私が気づかなかっただけで何かがここに来ていたの?
どうしよう。どうすればいい? どうすればあの子を見つけられる?
そうだ。もっと見ればいい。もっと聞けばいい。
情報が足りないなら、得られるようにすればいいんだ。
例えば……そう、目の前にあるこの木に登って。
いつも読んでくださってありがとうございます。
今回出てきた長さの単位+α
1センク 0.2メートル センクの足の長さ
1ハード 1.8メートル ハードの身長
1ペズン 30.6メートル 17ハード ペズンの提唱した畑の一片の単位
1カルナ 5.4キロメートル 3000ハード カルナの1日の移動距離の24分の1
1セウレ 90.0キロメートル 50000ハード セウレが6時間で走破した距離
あまりセンクで身長を表すことはありません。
というかセンクで身長をいうと成長が止まるという迷信が一般的に普及しています。
ちなみに1ペズン平方が約1反。
1反=300坪 1坪=3.3平方メートル




