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26着目

 ……。


 …………。



 ………………。




「用水路ってどうやって掘るんだろう?」


 というか私は今いったい何をしてるんだろう? 水路を掘り始めて早6時間。私の心はすでに折れそうになっている。漠然とした話になるのだが、言葉通り水路を掘るってどうすればいいのかわからない……というのがことの要点だ。

 今更ながら地形を少し見直してみよう。

 現在私が拠点にしているのは、池を描いてみようと言われれば誰もが描くお手本のような丸い池だ。岸辺の一方はえぐれた崖のようになっていて、水面と地面の間には最も低いところでも(やく4)ハード メートルほどの距離がある。そしてその反対側には水の流れ込む場所があって、砂が積もって浜状になっているけど浜と周囲の間はこちらも半分くらいの高さの崖状になっている。

 つまり、ぽかんと円形に凹んだ土地に水が溜まっている地形になってるってことだ。水が流れ込む場所は砂が積もっているけど。

 リザードマンさんから聞いた話では、この湖岸の一角が崩れてそこから外に水が流れ出し水位が低くなったそうだけど、実際、以前はこの崖の上の地面と湖面が一致する程度まで水が溜まっていたのでは無いじゃないかな? なんとなくだけど、だいたい水が流れ込む場所の高さと、一番低い崖部分の高さが同じくらいのように思える。

 さて、それを踏まえてさらに外に目を向けてみよう。

 ここら辺一帯は森になっている。冬でも葉を落とさない木がそれなりにあるけれど、そうで無い木の方がずっと多く、すでにほとんどは葉を落としていて景色は若干灰色じみてる。下生えの草木も枯葉をかぶっていて見るも寂しい。そして湖の崖状になっている湖岸の側から1時間ほど歩くと、そこには一本の川がある。近隣の土地を二分している山脈から流れる川で、その山裾のこちら側をとある幻獣が縄張りにしているために何も村などはなく、次の幻獣の縄張りに入る手前の大穴に飲まれてしまっている。

 かつて一人の女行商人は、その穴を調査に出て帰らぬ人になった……らしい。私を表の世界に引っ張り出してここら一帯の土地について調べ上げ、二つの幻獣の縄張りの隙間を近道だからといって飄々と通り抜ける女にしてはなんとも疑問の残る最期だった。というのが彼女の弁だった。今でもその行商人の勇気にあやかるため、定期的に行商人たちがこの界隈を訪れるも、結局未だにその縄張りの隙間を抜ける度胸のあるものは現れない、と。

 魔法使いを目指してここで暮らすことにした私が言えた義理では無いけれど、幻獣の縄張りの間を抜けていく真剣はちょっとわからない。いずれ衣装 ドレスのためにそれらと戦わないといけない、というのを前提にしているからだ。私は。


「いったい彼女は何を考えていたのだろう……っと、現実逃避してる場合じゃなかったわ」


 そう、現実逃避をしている場合じゃ無い。

 この場合、池を湖にするためには水位を増す必要がある。これが大前提だ。では水位を増す方法は何があるか。

 一つは流入する水を増やすこと、もう一つは流出する水を減らすことだ。

 流出と言っても、必ずしも川として流れ出すのではなく、地面に吸い取られる分もあれば周囲の木に飲まれている分もあるだろう。あるいは単に湖面から空気へ溶けていく分もある。それらを全て合わせて現在の水位が保たれているはずなのだ。

 ここで前情報。ここは以前湖であったが、地震の際に湖岸の一部が崩れ池になってしまった、というものだ。

 つまりその湖岸の穴を塞いでしまえば再び湖になるはず……だったのだけど。実際はそういうわけにも行かなかった。湖岸の穴がどこにも見つからなかったのだ。これを探すのに丸二日かけたけれど、結局見つけることはできなかった。多分、水面下の湖底に近い場所が壊れているのか、水の量が減ったことで流出量と流入量の調和 バランスが壊れたんじゃ無いだろうか。詳しい仕組みはわからないけれど、つまりこの池は徐々に枯れつつあるということになる。

 枯れるというと大事だけど、そうならないために行動しているのだから細かいことは忘れよう。よって流出量を減らすことで水位を増すことは現実的では無い。となる。

 結果的に、私がこの池を湖にするには、流れ込む水の量を増やすしか無い。

 ではどうすれば増やせるか?

 一つにはすでに流れ込んでいる川からの流入量を増やすこと。たとえばこの川がより大きな川の支流であるならば、源流をせき止めることで成し得る。二つに分かれた川を一本にすることで水が倍になる。小学生にもわかることだ。だけど残念ながらこの川の源流の先には村があり人がいる。水をせき止めるなんてことをしたら確実に暴徒が押し寄せて私は殺されてしまうだろう。それは不本意すぎる。


「したがって残された手段は幻獣の縄張りの間にあるせいで人が寄り付かないもう一つの川から水を引く……なんだけども」


 ここで話は冒頭に戻る。水路ってどうやって掘ればいいの?

 最初は川のそばで川から池の方向に向かって地面を掘ってみた。でも掘った先から崩れて、みちいうよりも丸いこぶのようにしかならず、しまいには掘り崩した土で埋まってしまう。池の側から掘っても掘った先の方が深い穴になってしまい、水が登ってきてくれるはずも無いだろう。

 そんなわけで現在、池と川の中間地点の地面をひたすら掘っているのだけど……これって私何してるの?

 泥遊び?

いつも読んでくださってありがとうございます。

三年寝太郎って、寝っぱなしでどうやって水路を作る技術身につけたんでしょうね。ただ掘ればいいってものじゃ無いと思うんですが。

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