第十八話 後日談・主導権は彼女のもの
昼・都内某所
完全個室のレストラン。
丸テーブル。
各界のセレブ奥様たち。
静かな微笑と、
名刺代わりの肩書きが並ぶ。
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A夫人
「白石さんは
ご結婚されたばかりとか?」
ひより
「はい先日」
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B夫人
「ご主人、
世界を相手に
お仕事されているとか」
ひより
「ええ、外では」
一拍。
ひより
「家では迷子ですが」
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一瞬の沈黙。
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C夫人
「……迷子?」
ひより
「地図があっても
感覚で歩く人です」
微笑む。
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A夫人
「大変そうですね」
ひより
「いいえ」
即答。
ひより
「迷う人は立ち止まれるので」
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空気が変わる。
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B夫人
「白石さん、
何か心がけていることは?」
ひより
「評価しないことです」
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C夫人
「評価?」
ひより
「正しさも効率も」
ひより
「家庭ではいりません」
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ナイフとフォークが止まる。
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A夫人
「……強いですね」
ひより
「いいえ」
ひより
「選んだだけです」
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その後。
話題は
・習い事
・海外校
・資産管理
ひより、全て聞き役。
否定しない。
競わない。
比べない。
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最後に一言。
ひより
「皆さんすごく
頑張っていらっしゃいますね」
全員
「……!」
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B夫人(小声)
「勝った人の言葉だわ」
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夜・林家
林、ネクタイを外しながら。
林
「ランチ会どうだった?」
ひより
「平和でした」
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林
「それは何より」
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ひより
「あと」
林
「?」
ひより
「“林社長の奥様”って呼ばれました」
林
「……すまない」
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ひより、即否定。
ひより
「気にしてません」
ひより
「私は私のままでした」
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林、少し安心した顔。
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締め・ひよりの独白
強い人たちは声を荒げない。
静かに席を選び、
言葉を置き、
主導権を引き取っていく、
私はそのやり方を
彼から学んだだけ。
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オチ
翌日。
【継 → ひより】
継
《奥様会、無事ですか》
ひより
《問題ありません》
ひより
《全員良い人でした》
継
(既読)
継(独白)
……これは
完全に林より強い。
(胃はもう痛くならなかった)
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(つづく)
※次回予告
女子会スタート。
結婚生活の報告――のはずが、
なぜか全員笑っています。
少しだけ、本音が出ます。




