第八話 幕間・プロポーズ後のLINE報告
夜・ひよりの部屋
照明を落とした部屋。
ソファの前のテーブルに、小さな箱。
白石ひより、コートを脱ぐ。
ひより(独白)
「高い場所じゃなかった
音楽もなかった
でも――」
一拍。
「逃げ場がなかったのは
私じゃなくて林さんの方」
スマホを手に取る。
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同窓会女子LINE(23:18)
ひより
《報告します》
A
《きた》
B
《例の社長?》
ひより
《プロポーズされました》
既読、雪崩。
C
《場所どこ》
ひより
《河川敷》
A
《地味!!》
ひより
《継くんに止められたそうです》
スタンプ乱舞。
B
《で?》
ひより
《評価されませんでした》
C
《??》
ひより
《条件も期限も
聞かれませんでした》
A
《それは》
B
《落ちる》
ひより
《はい引き受けました》
A
《捕獲完了》
少し間。
ひより
《今日の彼は少し可愛かったです》
スタンプ乱舞。
ひより、スマホを置いて微笑む。
ひより(独白)
「世界を動かす人でも
生活は一人じゃ回らない」
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翌日・仲村工房
作業台。
継、穏やかな顔。
継(心)
「……昨日はいい仕事した」
彩乃、ニヤニヤ。
彩乃
「継さん」
継
「嫌な予感しかしない」
健太、即参加。
健太
「林社長“可愛い”って言われたそうだ」
三秒沈黙。
継
「……誰が」
彩乃
「白石さん」
継
「やめろ、聞いてない」
健太
「人生初だぞ、たぶん」
彩乃
「もう戻れませんね」
継
「どこに」
彩乃
「“強い男”の席に」
健太
「で、衣装どうする?」
継
「……本気で作ります」
彩乃
「“可愛い新郎”用に」
継、天を仰ぐ。
継(独白)
世界史の怪物は減った。
代わりに、家庭史の新種が生まれた。
⸻
(つづく)




