第五話 林家、満場一致
数回のデートを経て、
ついに親族顔合わせの日が来た。
林 明浩はこの日、
“攻略対象”から
“生活を共にする相手”として
受け入れられるかを試される。
そして同時に、
彼自身が「守られる側」に回る
瞬間でもあった。
玄関前
白石ひよりは、
静かに深呼吸した。
控えめなワンピース。
アクセサリーはなし。
主張しないが、崩れない装い。
隣に立つ男は、
珍しく落ち着きがない。
林明浩。
背筋は伸びている。
だが、目が泳いでいる。
継(付き添い・心の声)
(……この男が国際会議で
各国代表を黙らせてきた?
嘘だろ)
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玄関
扉が開く。
林の母
「いらっしゃい」
柔らかい声。
しかし視線は、
はっきりと“値踏み”だった。
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リビング
親族が揃っていた。
林玉蘭(祖母・家長)。
叔母、伯父、従兄弟たち。
誰も声を荒げない。
だが全員、静かに強い。
座るなり、玉蘭が口を開く。
玉蘭
「ひよりさん。
お仕事は何を?」
ひより
「公共文化施設で、
展示運営をしています」
親族が、わずかに反応する。
叔母
「忙しいでしょう」
ひより
「はい。
でも、生活が壊れるほどではありません」
継(内心)
(うわ……
“家庭を回せる人”判定、もう通った)
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林、説明を試みる
林
「彼女は——」
ひよりが、静かに遮った。
ひより
「林さん。
今日は、私が話します」
林
「……はい」
即座に黙る。
継(心の声)
(はい。
もう勝負ついた)
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核心
伯父
「正直に聞く。
明浩は扱いにくい」
一瞬の沈黙。
ひより
「承知しています」
空気が動く。
ひより
「でも、扱いにくい人は壊れやすい」
親族が、静かに頷いた。
ひより
「壊れる前に、
声を聞くだけです」
玉蘭、即決。
玉蘭
「いい子だね」
林、目を見開く。
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追撃
叔母
「明浩。
家では、どうするつもり?」
林が口を開く前に——
ひより
「私が決めます」
間。
ひより
「彼は、外で戦う人なので」
継(胃を押さえる)
(あ、これ……
林、“保護対象”に入った)
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最終確認
母
「ひよりさん。一つだけ」
「何かあったら、どうしますか?」
ひより
「話します」
「逃げません」
「放置もしません」
親族全員の視線が、林に向く。
玉蘭
「決まりだね」
林
「……異議ありません」
継
「初めて聞いた」
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解散後・玄関
靴を履きながら、林が小声で言う。
林
「継」
継
「何」
林
「僕はもう、勝てない」
継
「最初からだ」
ひよりが微笑む。
ひより
「林さん。
帰りましょう」
林
「はい」
即答。
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継・締めの独白
婚活とは、
条件を並べることではない。
これは、
適任者に捕獲される物語だ。
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(つづく)




