第四話 修復士と、欠けた休日
初対面からデート、
そして親族顔合わせへの橋渡し。
林明浩は“攻略対象”から、
“生活を共にする相手”へと降りていく――。
今回は、婚活社長が
少しずつ肩の力を抜く休日デート。
紅型の色彩に囲まれ、
笑いと恋が混ざり合う、
穏やかでちょっとドキドキな話です。
デート前日
林、服装相談
林は継に服装を相談するが、
全力でダメ出しされる。
却下された服装(林案)
・全身ブランドロゴ主張スーツ
・胸ポケットに赤いチーフ(派手)
・靴は尖りすぎたイタリア製
継の即答
「……それ、
“社長”と結婚する服であって、
“夫”と会う服じゃない」
修正後
・ネイビー無地
・裏地だけ紅型モチーフ
・靴は控えめ
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場所①:染織資料館(休日)
林は少し戸惑う。
高級でも話題でもない、
静かな場所。
林
「……正直に言うと、
こういう場所に来るのは初めてだ」
ひより
「そうだと思いました」
林、少し身構える。
「失礼な意味ではない。
仕事柄、どうしても“効率の良い展示”に——」
ひより
「大丈夫です。
ここは効率が悪いのが売りなので」
林、言葉に詰まり、苦笑。
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展示ケースの前
古い布の一部が、
補修跡ごと展示されている。
林
「……直しているのに、
隠さないんですね」
ひより
「はい。
壊れたことも、直したことも、
両方がこの布の履歴です」
林、しばらく黙る。
「……経営判断では、消す情報だ」
ひより
「生活では、消しません」
林、初めて視線を外す。
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場所②:近くの喫茶店(昼下がり)
林はコーヒーを混ぜながら、ぽつり。
「君は……
僕を直したいと思っているのか?」
ひより、首を振る。
「直す必要はないです。
壊れてもいません」
一拍置いて。
「ただ、一人で使い切るには
少し硬いだけです」
林、吹き出しそうになるのをこらえる。
「……それは、褒め言葉なのか?」
ひより
「修復士的には、最高です」
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決定的な一言
林、真剣な表情になる。
「……君と話していると、
自分が“説明しなくていい人間”に
なれる気がする」
ひより、初めて少し照れる。
「それは、説明する前に
一度立ち止まっているからです」
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親族顔合わせへの流れ
帰り道。
林
「……来週、家族と食事がある」
一瞬、間。
「本来なら“成果が出てから”
紹介するべきなんだが——」
ひより、即答。
「途中経過でも、大丈夫です」
林、驚く。
「……怖くないのか?」
ひより
「修復は、
途中を見せないと信用されません」
林、深く息を吸う。
「……来てほしい」
ひより
「はい」
――こうして、
林家・満場一致への
布石が打たれた。
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(つづく)
ここまで読んでくださった方へ。
林の選択がどうなるのか――
少しでも気になった方は、
ブックマークして
続きを追っていただけると嬉しいです。
林社長、まだ止まりません!




