第三話 最適解が通じないスルメイカ
都内の少し静かなカフェ。
高級すぎず、安すぎず、
継が「逃げ道を確保できる」絶妙な場所だ。
ここで、
林明浩と白石ひよりの
初対面が始まる。
条件重視の社長と、
鋭くも優しい女性。
果たしてスルメイカ社長は
“効率”を追い求めるあまり、
初デートで沈むのか――?
継は二人を並べて立たせると、
珍しく手短に言った。
「……じゃあ紹介するな」
視線を交互に向ける。
「こっちが、俺の取引先の知り合い」
「で、こっちが白石さん」
林は完璧な角度で一礼。
「林明浩です。
今日は時間をいただいて
ありがとうございます」
ひよりも自然に会釈する。
「白石ひよりです。こちらこそ」
――ここまでは、想定内。
継は二人を席に座らせ、
コーヒーを注文すると、
わざとらしく腕時計を見た。
「……あ、そうだ。
俺、ちょっと電話してくる」
林が怪訝そうに見る。
「今?」
継は即答。
「今。一人で話せ」
⸻
継、途中退席(観察フェーズ)
継は店の外に出て、
ガラス越しに二人を見る。
(……婚活じゃない)
(観察実験だ)
林は早速スイッチが入る。
身振り、姿勢、話す速度。
完全に社長モードだ。
ひよりは、
•頷く
•聞く
•しかし一切、感心しない
継の額にじわっと汗が浮かぶ。
(頼むから条件の話をするな……)
⸻
店内:会話
林
「私は効率性を
重視するタイプでして——」
(出た)
継、思わずスマホを握りしめる。
ひより
「効率、というと?」
林
「成果を最大化するための——」
ひより
「失敗した場合は?」
林、言葉が止まる。
継、思わず前のめり。
(よし……)
⸻
同窓会グループLINE(実況開始)
継、震える指でLINEを打つ。
《報告:今のところ条件の話はしてない》
既読が一気につく。
女性A
《生きてる?》
女性B
《林社長、正論出してない?》
継
《出しかけたけど止められてる》
女性C
《誰が?》
継
《白石さん》
女性A
《もう勝ってる》
女性陣、拍手喝采
⸻
店内:決定的なズレ
林
「私は、説明責任を果たすことが
誠実さだと思っている」
「論理的には……」
ひより
「それは、相手が聞く準備がある時ですね」
林、初めて瞬きをする。
「……どういう意味でしょう」
ひより
「説明される前に、
一緒に黙ってもらえると
助かる時もあります」
継、外で小さくガッツポーズ。
(刺さってる……)
⸻
継の冷や汗(最高潮)
しかし次の瞬間。
林、少し前のめりになる。
「では、将来的な生活設計について——」
継、青ざめる。
(あ、ダメだ、今度こそ地雷)
同時にLINE。
継
《やばい、今から条件いくかも》
女性A
《南無》
女性B
《合掌》
⸻
しかし
ひより
「林さん」
林、止まる。
ひより
「今日は“途中経過”で大丈夫です」
林
「……途中経過?」
ひより
「完成形を出すには、
まだ材料が足りないので」
林、ゆっくり息を吐く。
「……なるほど」
継、目を見開く。
(通じた……?)
⸻
継、撤退判断
継はLINEを打つ。
《速報:白石さん、強い》
即レス。
女性陣一同
《紹介して正解》
継、天を仰ぐ。
(……まだだ。まだ安心するな)
ガラス越しに見る二人は、
もう“面接”ではなく、
普通に会話していた。
継は静かに店を離れる。
(あとは……
本人たちの問題だ)
――この数日後、
林は「家族と食事がある」と
切り出すことになる。
⸻
(つづく)
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