あらすじ・登場人物の紹介
その布は、戦場で生まれた。
それは地図でもあり、記録でもあり、
そして――“まだ完成していない協定”だった。
沖縄。
米軍基地。
日米地位協定。
すべては一枚の紅型に繋がっている。
2025年。
沖縄本島上空。
スクランブル発進したF-15が雲を切り裂く。
在沖米空軍のエース、
ジョン・スティーブンス3世は、
ある“奇妙な工房”に通っていた。
仲村工房。
100年以上続く紅型職人の家系。
軍人である彼が、
なぜそんな場所に足を運ぶのか。
理由は一つ――
祖父の遺した記録だった。
⸻
1945年、沖縄戦。
ジョン3世の祖父、
ジョン・スティーブンス1世は、
地下壕で一人の日本兵と出会う。
その男は、銃を持たず、
戦場の中で布を染めていた。
名は、仲村尚造。
壕の中で描かれた紅型。
それは花にも見え、地図にも見えた。
やがてジョン1世は気づく。
それが“ただの芸術ではない”ことに。
⸻
それから80年後。
現代の仲村工房当主・仲村継は語る。
「この作品は、まだ完成していない」
表には沖縄の地図。
そこに描かれた基地配置。
裏には条約文。
そして――
署名欄は三つ。
だが、"一つだけが空白"だった。
⸻
その紅型は、今も存在する。
名を――
「日米地位協定紅型」
だが、問題はそこではない。
「最後の一手が、
どこにも残っていない」
祖父が見たもの。
尚造が遺したもの。
そして、自分には理解できない“何か”。
⸻
ジョン3世は、初めて悟る。
これは軍の問題ではない。
政治の問題でもない。
“理解の問題”だ。
そして継は言う。
「あの人の記録を、
すべて読まないと――」
「この作品は、完成しない」
⸻
これは、
戦場で生まれた一枚の布が、
100年を越えてなお、
“未完成のまま存在し続ける理由”を追う物語。
※外伝・ジョン編は全3話です。
登場人物一覧
・ジョン・スティーブンス3世
在沖米空軍のエース。中佐。
祖父の影響で仲村工房に通うミリオタ軍人。
文化は理解できないが、違和感には敏感。
・仲村継
仲村工房の現当主で紅型職人。尚造の孫。
技術は継承しているが、“意味”を理解できていない。
ジョン3世と出会い、物語の核心へ踏み込む。
・ジョン・スティーブンス1世
ジョン3世の祖父。
沖縄戦従軍。Civil Affairs 隊長。
戦場で尚造と出会い、その異常な行動を記録した人物。
すべてを理解したわけではない。
・仲村尚造
戦場で紅型を作り続けた謎の日本兵。
芸術家か、記録者か、それとも――
彼の遺した作品は、今もなお未完成である。
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※登場人物が多い作品のため、
全編共通の登場人物一覧ページもご活用ください。




