最終話 歴代主人公会議 ―Bingata Legacy・完結―
『Bingata Legacy』を
ここまで読んでくださった皆さま、
本当にありがとうございます!
隆造から始まり、
尚造、バックナー、美咲、そして継へ。
時代も立場も違う人々が、
紅型を通して繋いできた物語も、
ひとつの大きな節目を迎えました。
今回は完結記念の特別編。
歴代主人公たちが集まり、
思い出を語り、迷シーンを振り返り、
最後はみんなで鍋を囲みます。
……もちろん、仲村家ですから、
普通の鍋パーティーで終わる保証はありません(笑)
どうぞ最後まで、
賑やかな仲村家にお付き合いください!
仲村家のお茶の間。
ちゃぶ台を囲む人々。
隆造。
尚綾。
尚造。
文。
バックナー。
美咲。
隆司。
そして継。
……なぜか歴代主人公が全員集合していた。
継
「えー」
「本日はお集まりいただきありがとうございます」
尚造
「何の会議ですか?」
継
「シリーズ完結記念です」
隆司
「メタいな」
美咲
「今さらじゃない?」
バックナー
「俺が呼ばれた理由は?」
継
「主人公の一人だからです」
バックナー
「なるほど」
隆司
「納得するんだ……」
⸻
第一議題。
仲村家が守ってきたもの。
継
「それでは、歴代主人公の皆さんに質問です」
「皆さんが守ろうとしてきたものは何ですか?」
隆造
「紅型だ」
即答だった。
隆造
「王国が変わろうとも」
「時代が変わろうとも」
「職人の技と心は残さねばならん」
尚綾
「そして、その文化を残すためには」
「政治や外交も理解する必要がある」
隆造
「うむ」
隆司
「……さすが第一世代」
継
「待ってください」
「この二人」
「紅型から地政学の話に移行するまで三秒ですよ」
尚綾
「地政学は重要よ」
文
「お義母さん、また始まった……」
尚造
「僕も同意します」
文
「尚造さんまで!?」
美咲
「お父さんは重度のミリオタだからね〜」
尚造
「軍事史を理解することは、歴史を理解することです」
継
「その結果、怪物布団が生まれたんですよね?」
尚造
「……」
継
「沈黙しないでください」
⸻
第二議題。
戦中戦後。
継
「では、尚造さんと文さん」
「お二人が守ろうとしたものは?」
尚造
「……人の暮らしです」
さっきまでの表情が、少し変わった。
尚造
「戦争は、人の暮らしを簡単に壊してしまう」
「だからこそ」
「何が起きたのかを記録し」
「次の世代に残す必要があります」
文
「私は、忘れないでほしかったの」
「誰かの決めた歴史だけじゃなく」
「そこで生きた人たちの歴史をね」
継
「……なるほど」
隆造
「記録と暮らし、か」
尚綾
「どちらも欠かせないものだわ」
バックナー
「俺も、その点には同意する」
全員
「……」
バックナー
「何だ?」
継
「いや、急に真面目なことを言うから」
バックナー
「俺はいつも真面目だ」
尚造
「それはどうですかね〜」
「エイサー将軍」
バックナー
「お前にだけは言われたくない!」
継
「お二人とも、開始早々に戦争しないでください!」
⸻
第三議題。
アメリカ統治時代の後始末。
継
「では、バックナーさんと文さん」
「地位協定紅型と怪物布団という」
「二つの問題が登場しました」
「お二人が向き合ったものは何でしょうか?」
バックナー
「……戦争が終わったからといって」
「すべてが解決するわけではない」
文
「そうね」
バックナー
「軍事、安全保障、政治」
「そして、そこに暮らす人々の生活」
「どれか一つだけを見ていても、答えは出ない」
文
「だから、話し合い続ける必要があったのよ」
継
「……」
隆司
「真面目だな」
美咲
「うん」
隆造
「時代は違えど、職人の仕事と同じかもしれんな」
「一枚の布を完成させるにも」
「多くの人の手と時間が必要だ」
バックナー
「……紅型というのは、奥が深いな」
尚造
「今さら気づきましたか?」
バックナー
「お前の家に長居したおかげでな」
継
「長居どころか」
「幽霊になってまで居座ってますけどね」
バックナー
「居心地がいい」
文
「お茶のおかわりは?」
バックナー
「もらおう」
継
「いつものお茶会になってる!!」
⸻
第四議題。
紅型は世界を変えられるのか。
継
「次は美咲さんと隆司さんです」
「沖縄返還の時代、二人が大切にしていたものは?」
美咲
「人と人が繋がること、かな」
「政治的な立場が違っても」
「文化を通じて話せることはあるから」
隆司
「……あとは、家族が無事に帰ってくること」
美咲
「隆司さん……」
隆司
「何だよ」
美咲
「今の、ちょっと格好よかった」
隆司
「……そうか」
二人、見つめ合う。
健一と彩花がいないため、
今回はツッコミ役がいなかった。
継
「……」
尚造
「……」
バックナー
「……」
隆司
「何だよ」
継
「いや」
「この二人、今でもこうなんだなって」
尚造
「結婚して何年だ?」
隆司
「もういいでしょう」
美咲
「ふふっ」
継
「誰か『お前ら爆発しろ』って言ってください!!」
⸻
第五議題。
未来に何を残すのか。
継
「最後は俺ですね」
「俺は、未来の人々に語りたいです」
「技術をそのまま保存するだけじゃなくて」
「意味が伝わる形で残したい」
隆造
「よい考えだ」
尚綾
「ただし、世界の情勢も学びなさい」
継
「はい?」
尚造&バックナー
「軍事史も」
継
「はい?」
美咲
「外交も必要よ?」
継
「はい???」
隆司
「人脈も大事だぞ」
継
「……」
継
「皆さん」
「俺、紅型職人ですよね?」
全員
「そう」
継
「どうして国家戦略の教育を受けてるんですか!?」
尚造
「必要だから」
継
「その結果が外交サロン仲村家ですよ!!」
⸻
第六議題。
バックナー
「……少し待て」
全員が見る。
バックナー
「隆造は紅型を守った」
「尚造は記録を残した」
「美咲は人と人を繋いだ」
「継は未来に渡そうとしている」
「では、俺は何を残した?」
静かになった。
継
「……」
美咲
「戦後の後始末?」
バックナー
「もう少し何かないのか」
尚造
「重要な役割ですね」
バックナー
「そうか」
尚造
「あなたが向き合わなければ」
「語られなかった歴史もある」
「戦争をした側にも、戦後を生きる責任がある」
バックナーは、少しだけ目を伏せた。
バックナー
「……そうだな」
文
「それに」
バックナー
「?」
文
「あなたがいたから、話せたこともあったわ」
バックナー
「……文さん」
文
「だから、これからもよろしくね」
バックナー
「……ああ」
継
「……いい話だ」
少しだけ、静かな時間が流れた。
⸻
その時。
隆造が口を開いた。
隆造
「ところで」
全員
「?」
隆造
「この会議、誰が議事録を取っている?」
継
「……え?」
尚造
「記録は重要ですね」
尚綾
「後世のためにも残すべきね」
バックナー
「機密情報の扱いには注意しろ」
隆司
「ちょっと待て」
美咲
「何?」
隆司
「この会議、公開していいのか?」
継
「……」
継
「また新しい問題が発生するんじゃないですか!?」
尚造
「大丈夫です」
継
「何がですか?」
尚造
「僕はもう全部白状しました」
継
「その台詞、前にも聞きました!!」
⸻
最終議題。
歴代主人公が本当に残したかったもの。
文
「……でもね」
全員が文を見る。
文
「結局、私たちが残したかったのは」
「特別なものばかりじゃないと思うの」
「家族でご飯を食べること」
「安心して眠れること」
「子どもたちが、明日のことを考えられること」
尚造
「……そうだな」
隆造
「平和な暮らしがあってこそ、技も文化も残せる」
尚綾
「守るべきものがあるからこそ、未来を考えられる」
美咲
「だから、紅型も次の世代に渡したい」
隆司
「そして、家族で笑っていたい」
継
「……」
継
「皆さん」
「それなら、今日の会議はここまでにしましょう」
バックナー
「もう終わりか?」
継
「はい」
バックナー
「夕食は?」
継
「……」
継
「結局それが目的ですか!?」
文
「あら、ちょうどお鍋の準備ができたわよ」
全員
「おお!」
⸻
仲村家のお茶の間。
歴代主人公たちは、再びちゃぶ台を囲んだ。
紅型の話。
昔の話。
家族の話。
時には真面目に。
時には笑いながら。
そして、誰かが余計なことを言うたびに。
継
「もう外交サロンは卒業しましょうよ……」
尚造
「無理だな」
バックナー
「同感だ」
美咲
「うちの伝統だものね」
継
「そんな伝統、いらないです」
笑い声が響いた。
五世代にわたって受け継がれてきたもの。
それは、紅型だけではなかった。
歴史を記録すること。
人と人を繋ぐこと。
そして、どんな時代でも、
家族と笑い合える場所を守ること。
――仲村家の物語は、まだ続いていく。
⸻
番外編・完
……と思ったら。
玄関から声がした。
「ごめんくださーい!」
全員
「……」
継
「……誰ですか?」
文
「あら、新しいお客さんかしら」
隆司
「まさか、また偉い人じゃないだろうな……」
バックナー
「確認してこい、継」
継
「どうして俺が!?」
玄関を開ける。
そこには、見知らぬ外国人が立っていた。
外国人
「Hello. Is this the Nakamura family?」
継
「…………」
ゆっくり襖を閉める。
継
「外交サロン仲村家、永遠に不滅です……!!」
⸻
―Bingata Legacy―
本当に完。




