第四十六話 二枚目の紅型
笑い声が響いていた、その数分後だった。
1968年11月19日。
嘉手納飛行場で、
B-52爆撃機炎上事故が発生した。
本話では、
この歴史的事故を
『Bingata Legacy』の物語として描きます。
1968年11月19日。
嘉手納飛行場。
黒煙はなお空へ昇り続けていた。
消防車のサイレン。
飛び交う怒号。
燃え盛るB-52。
辺り一帯には焦げた匂いが漂っている。
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飛行場の外。
屋良、美咲、彩花、隆司らが合流した。
美咲は文の姿を見るなり駆け寄る。
「お母さん!」
文は振り向く。
「美咲」
美咲は思わず抱きついた。
「良かった……」
「無事だった……」
文は優しく背中をさする。
「私は大丈夫よ」
「危ないから」
「みんなは少し離れましょう」
彩花が辺りを見回す。
「おとうは?」
バックナーは炎を見つめたまま答える。
「少し様子を見てくる」
ジョンも歩き出した。
「私も行きます」
隆司も後に続く。
「俺もだ」
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飛行場内部。
消防隊と米兵たちが
必死に消火活動を続けている。
ジャックが怒鳴る。
「ホース追加!」
「急げ!」
村男たちもバケツを運び続ける。
汗と煙で顔は真っ黒だった。
村男Aが呟く。
「……何が積まれていたんだ」
村男Bも不安そうに空を見る。
「放射能は大丈夫なのか?」
村男Cが首を振る。
「基地は何も教えてくれない」
誰も答えられなかった。
炎だけが燃え続けていた。
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その時。
ランパートが現場へ到着する。
「高等弁務官!」
兵士たちが敬礼した。
ランパートは歩きながら尋ねる。
「地下の危険物保管区画は」
「無事か?」
ジャックが即答する。
「はっ!」
「被害ありません!」
ランパートは短く息を吐いた。
「……ならいい」
その様子を。
少し離れた場所から
隆司が見つめていた。
小さく呟く。
「……怪物がいるな」
ランパートは振り返る。
視線が合う。
「君」
「勘が良いね」
隆司は苦笑する。
「キューバにいた」
「ここにいても、おかしくない」
ランパートは炎を見つめたまま静かに答えた。
「だから私は来た」
「手綱を握るために」
二人はしばらく炎を見つめ続けた。
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そこへ屋良とバックナーが歩いてくる。
屋良が静かに口を開く。
「高等弁務官」
「掛け軸の宿題」
「〆切が迫っています」
「もう猶予がありません」
ランパートは少し考え込む。
その横で隆司がぼそりと言った。
「このままだと」
「二枚の布が爆発するぞ」
ランパートは首を傾げる。
「……布は二枚あるのか?」
ジョンが微笑んだ。
「ホワイトハウスへ行ってください」
「答えがあります」
バックナーも続ける。
「ロスアラモスへ出入りしていた君なら」
「“もう一枚の布”を見せてもらえるはずだ」
ランパートは三人の顔を見る。
ゆっくりと頷いた。
「……了解しました」
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1968年12月。
ワシントンD.C.
ホワイトハウス。
地下。
重い鉄扉が開く。
薄暗い保管室。
静かに一枚の布が広げられた。
ランパートは息を呑む。
「……これが」
リチャード・ニクソンが静かに言う。
「歴代政権が保管してきた」
「怪物布団だ」
ランパートは布を見つめたまま呟く。
「警告……」
ニクソンは頷いた。
「私には」
「そう見える」
しばらく沈黙が流れる。
やがてランパートはニクソンへ向き直った。
「次期大統領」
「沖縄とベトナムの問題について」
「議論を急ぐ必要があります」
ニクソンは苦笑した。
「年明けから大統領だ」
「忙しくなるな」
ランパートもわずかに笑う。
地下室には再び静寂が戻った。
怪物布団は。
何も語らず、
静かに二人を見つめ続けていた。
⸻
(つづく)




