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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第五部 バックナー編 ― 平和へ結ぶ縁 ―
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第四十五話 太陽の向こう側

「沖縄を豊かにするには?」


そんな何気ない会議から始まる第45話。


しかし。


その日に待っていたのは、

沖縄戦後最大級の衝撃だった。

1968年11月19日。


朝。


琉球政府。

行政主席室。


机いっぱいに積み上げられた書類。


さらに床にも。

壁際にも。


屋良は眼鏡を外し、小さく息をついた。


「……終わりませんね」


その時。


コンコン。


「失礼します」


美咲、彩花、隆司、

そして村男たちが部屋へ入ってくる。


屋良は立ち上がり、笑顔で迎えた。


「皆さん、ありがとうございます」


「今日は沖縄の経済について」


「皆さんの意見を聞かせてください」


彩花は部屋を見回し、思わず呟いた。


「……書類の山」


挿絵(By みてみん)


屋良は苦笑する。


「試験の採点に比べれば楽勝ですよ」


美咲が目を丸くした。


「強い……」


皆が笑う。


⸻


机を囲み、会議が始まった。


屋良が口を開く。


「沖縄の経済を活性化させるには」


「何が必要でしょう」


最初に美咲が手を挙げた。

村男たちが続く。


美咲

「紅型!史跡巡りです!」


彩花

「グルメツアー!」


A(農家)

「パイナップル!」


B(漁師)

「海だ!ビーチリゾート!」


C(陶芸家)

「やちむん!」


D(雑貨商)

「本土へ土産屋を出しましょう!」


E(山仕事)

「マングローブ!カヌー!」


次々と意見が飛び交う。


屋良は嬉しそうに頷きながらも、静かに答えた。


「どれも沖縄の誇りです」


「ですが……」


「島全体を支えるには、もう少し規模が必要ですね」


少し考え込む空気が流れる。


隆司が腕を組んだ。


「本土では、新幹線というものが走っているそうだ」


村人たちが顔を見合わせる。


「しん……かんせん?」


「汽車より速いらしいぞ」


「空を飛ぶのか?」


「飛ばん」


部屋に笑いが起こる。


美咲は窓の外を眺めながら呟いた。


「もっと単価が高いもの……」


「沖縄にあるかな……」


誰も答えられなかった。


静かな時間が流れる。


⸻


その時だった。


部屋の扉が開く。


「失礼します」


ランパートだった。


皆が立ち上がる。


「高等弁務官」


ランパートは資料を机へ置き、

穏やかに微笑んだ。


「話は聞こえました」


「経済規模の話ですね」


屋良は頷く。


「何か良い案はありますか」


ランパートは即答した。


「あります」


全員が身を乗り出す。


「原子力です」


「「「……?」」」


部屋中が固まった。


挿絵(By みてみん)


ランパートは黒板へ向かう。

さらさらと図を書き始める。


「大量の電力を作る」


「沖縄で使う」


「余れば本土へ売る」


「電力輸出です」


屋良は腕を組む。


「本土では電力不足も課題です」


「理屈は通っていますね」


美咲が首を傾げた。


「でも……」


「技術はどうするんです?」


ランパートは満面の笑みを浮かべた。


「お任せください」


「私は元工兵です」


部屋の隅から勢いよく手が挙がる。


村男E。


「実は!」


「自分も工兵でした!」


ランパートの目が輝く。


「本当ですか!!」


二人はがっちり握手した。


挿絵(By みてみん)


「失礼ですが!」


「専門は?」


Eは胸を張る。


「自分は穴を掘る専門です!」


ランパートは思わず立ち上がった。


「素晴らしい!」


「私は橋を架ける専門でした!」


Eも興奮する。


「橋ですか!」


「羨ましい!」


ランパートは黒板へ走る。


さらさらと橋の断面図を書き始めた。


「工兵とはですね」


「橋を架け」


「道を造り」


「地雷を除去し」


「爆破し」


「掘って」


「埋めて」


「必要なら原子――」


その瞬間だった。


隆司が素早く美咲の耳を塞ぐ。


「高等弁務官」


「そこまでです」


ランパートはきょとんとする。


「……?」


Eは残念そうに頷いた。


「続きを聞きたかった……」


隆司は深いため息をつく。


「工兵オタクが二人になると」


「手に負えん」


美咲が小声で彩花に囁く。


「工兵って……」


彩花も困ったように笑う。


「楽しそうだけど」


「何を話しているか全然分からないね」


屋良はさんぴん茶を飲みながら苦笑した。


「教師にも似たような人がいました」


部屋中が笑いに包まれた。


⸻


その時だった。


バンッ!!


勢いよく扉が開いた。


息を切らした米兵が飛び込んでくる。


「高等弁務官!」


部屋の空気が一変する。


ランパートが立ち上がった。


「どうした」


米兵は震える声で叫んだ。


「大変です!」


「嘉手納飛行場で!」


「B-52爆撃機が爆発しました!!」


挿絵(By みてみん)


時間が止まる。

誰一人、言葉が出ない。


ランパートの表情から笑みが消えた。

屋良も立ち上がる。


「……被害は」


「現在確認中です!」


ランパートは帽子を掴む。


「現地へ向かう!」


⸻


嘉手納飛行場。


激しい炎。

黒煙が空高く立ち上る。


サイレンが鳴り響く。

消防車が何台も駆け回る。


ジャックたちは必死に放水を続けていた。


「急げ!」


「燃料が残っている!」


「近付くな!」


炎は勢いを増していく。


⸻


飛行場の外。


住民たちが不安そうに空を見上げていた。


その中に。


バックナー。

文。

ジョン。


三人の姿もあった。


挿絵(By みてみん)


誰も言葉を発しない。


ジョンが炎を見つめたまま、小さく呟く。


「……あの色」


「尚造さんが見せてくれた」


「怪物布団と同じ色ですね」


文は思わず息を呑んだ。


「嘘……」


「……あれが」


バックナーは炎から目を離さない。


低い声で呟く。


「……これは」


「まずいことになった」


黒煙は空を覆い、


まるで沖縄全体を

飲み込もうとするかのように広がっていった。


⸻


(つづく)

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