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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第五部 バックナー編 ― 平和へ結ぶ縁 ―
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第三十三話 帰ってきた用心棒

家族に守られてきた少女は、

自ら未来を選び始める。


新しい学校。

新しい仲間。

そして、再会する一人の青年。


美咲の新たな一歩が、

やがて物語を大きく動かしていく。

1960年。春。


ベルリン。


雪が残る街。


米軍関係者が一人の男へ書簡を渡す。


「仲村家からだ」


隆司は封を切る。


挿絵(By みてみん)


中にはバックナーの短い手紙。


|娘たちが見られている。

|判断は任せる。


隆司は静かに目を閉じた。


(彩花との約束だ)


(悪いやつは、追い払ってやる)


ゆっくり荷物を背負う。


「帰るか」


⸻


場面転換。


沖縄。

仲村工房。


文。

彩花。

美咲。

バックナー。


港へ向かう。


船が接岸する。

甲板から降りてきた一人の男。


世界を巡った隆司だった。


挿絵(By みてみん)


美咲と彩花が笑う。


「おかえりなさい」


隆司は小さく笑う。


「ただいま」


文も静かに笑う。


「長かったですね」


隆司は頭を下げた。


「遅くなりました」


⸻


数日後。


朝。

仲村家前。


若者たち。


「美咲ちゃん!」


「今日も学校?」


そこへ。


後ろから一人の男が近付く。


「おはようございます」


隆司だった。


若者たちが固まる。


「……誰?」


隆司

「仲村家でお世話になります」


礼儀正しい。


しかし圧倒的な威圧感。


若者たち

「……また今度!」


逃げる。


彩花が吹き出す。


「まだ何もしてないのに」


隆司

「?」


挿絵(By みてみん)


⸻


通学路。


今度は米兵。


「Hi!」


「Beautiful!」


隆司

「Good morning.」


握手。

ぎりっ。


米兵

「Have a nice day…」


そそくさ退散。


美咲

「……強い」


彩花

「世界中回った人だからね〜」


⸻


アメリカンスクール。


教室。


先生

「新しい友達を紹介します。」


美咲は前へ出る。


少し緊張。


「My name is Misaki Nakamura.」

(仲村美咲です)


「Nice to meet you.」

(はじめまして)


教室が静かになる。


その時。


一人の少年が勢いよく立ち上がる。


挿絵(By みてみん)


「Welcome!!」

(ようこそ!!)


真っ黒な肌。


満面の笑顔。


「I’m Jack Harrison!!」

(ジャック・ハリソンだ!!)


教室が笑いに包まれる。


美咲も笑った。


「よろしくお願いします」


⸻


放課後。


校庭。


ジャックが英語で話しかける。


「君、日本語も英語も話せるの?」


美咲

「まだ勉強中」


ジャック

「じゃあ一緒に勉強しよう!」


その様子を校門から見守る隆司。


少し安心したように笑う。


⸻


その夜。


美咲は庭で隆司と向き合った。


世界を渡り歩いてきた男は、

静かに膝をつき、

仲村家へ仕える覚悟を告げた。


「この身は、仲村家のためにあります」


その言葉を聞いた時、

美咲は初めて理解した。


守られることは、

弱さではない。


守る者にも、

守られる者にも、


同じ覚悟が必要なのだと。


「私は――」


美咲は胸の前で、そっと手を握った。


「守られるだけの人間で

 いるつもりはありません」


「でも……」


「守ってくれる人がいるということを、

 誇りに思いたいんです」


夜風が、二人の間を通り抜ける。


「だから私も」


「いつか誰かを守れる人になります」


美咲は、少し震えながらも、

はっきりと言った。


「隆司さん」


「……お願いします」


隆司は立ち上がり、一歩後ろに下がる。


主と従者。

だが、そこにあるのは恐怖でも支配でもない。


覚(・)悟(・)を(・)共(・)有(・)し(・)た(・)者(・)同(・)士(・)の(・)距(・)離(・)だった。


挿絵(By みてみん)


⸻


翌朝。


美咲。

彩花。

ジャック。


三人が笑いながら歩いていく。


その少し後ろ。

一定の距離を保って歩く隆司。


バックナーがその姿を見る。


「立派になったな」


文が頷く。


「ええ」


「これで、あの子たちも前へ進めます」


春風が吹く。


美咲は新しい学校へ。

隆司は新しい使命へ。


そして仲村家もまた、

新しい時代へ歩き始めていた。


⸻


(つづく)

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