第三十話 復興の風
重い話が続いたので、
今回はほのぼの日常回です。
宇宙に感動する子どもたち。
守礼門で暴走する紅型オタクたち。
通貨が変わって困惑する村人たち。
さまざまな立場の人々が、
今日も沖縄で平和(?)な一日を過ごします。
1957年10月。
朝。
村の広場。
今日は子どもたちが大勢集まっていた。
広場の中央には、
米軍から借りた白黒テレビ。
美咲は目を輝かせる。
「テレビ!」
彩花も嬉しそうだった。
「今日は何見るの?」
屋良が笑顔で子どもたちを見る。
「今日は宇宙の授業です」
「世界が変わる日ですよ」
子どもたちが静かになる。
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テレビが映る。
画面には地球儀。
そして。
人工衛星の軌道図。
アナウンサーが読み上げる。
「ソビエト連邦が」
「世界初の人工衛星」
「スプートニク一号の打ち上げに成功しました」
ビー……
ビー……
人工衛星の電波音が流れる。
美咲は思わず空を見上げた。
「お星さま!」
彩花も驚く。
「人がお空まで行くの?」
屋良は優しく微笑む。
「まだ人は乗っていないよ」
「でも」
「人類が初めて宇宙へ送った物なんだ」
子どもたちは目を輝かせた。
⸻
広場の後ろ。
帽子を深く被ったイワンが立っていた。
隣には部下。
小さく呟く。
「同志……」
イワンも静かに頷く。
「ああ」
「よくやった」
その表情は、
いつもの冷静さではなく、
祖国を誇る一人の男だった。
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少し離れた場所。
バックナーもテレビを見ていた。
ジョンが隣で呟く。
「宇宙の時代ですね」
バックナーは静かに空を見る。
「ああ」
「次の戦場は」
少し間。
「空になるのかもしれない」
ジョンは答えなかった。
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1958年。初夏。
銀行。
長蛇の列。
村男たちが財布を握りしめていた。
「またお金変わるのか」
「今度はドルだって」
「難しいなぁ」
文は風呂敷を差し出す。
「バックナーさん」
「これ全部お願いします」
バックナー。
風呂敷を持ち上げる。
ずっしり。
「……全部か」
文は笑顔だった。
「全部です」
ジョンが中を覗く。
「結構ありますね」
バックナーはため息をつく。
「銀行へ行くか」
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数時間後。
戻ってきたバックナー。
ドル紙幣を机へ並べる。
彩花が尋ねる。
「おとう」
「またお金変わったの?」
バックナーは苦笑する。
「ああ」
「これからはドルだ」
美咲は一枚持ち上げる。
「英語だ!」
文は静かに受け取る。
「ありがとう」
バックナーは小さく笑った。
「もう換金は終わりだ」
文は少し首を傾げる。
「本当でしょうね?」
バックナー。
少し考える。
「……たぶん」
村男たち、大爆笑。
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1958年。秋。
首里。
復旧工事が終わり、
新しい守礼門が秋空に映えていた。
美咲は目を丸くする。
「大きい!」
彩花も見上げる。
「きれい……」
ジョンはすでに興奮していた。
「守礼門はですね!」
「十五世紀に!」
「第二尚氏王統が!」
止まらない。
文は苦笑する。
「始まったわね」
その横。
美咲も目を輝かせる。
「あとね!」
「石垣は!」
「首里城は!」
彩花が頭を抱えた。
「増えた……」
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その時。
守礼門の陰から、
尚造(幽霊)が現れる。
「僕も混ざりたい……」
バックナーだけが気付く。
「……尚造」
ジョンは振り返る。
「え?」
バックナーは咳払いした。
「いや」
「独り言だ」
尚造は少し寂しそうに笑った。
「楽しそうだなぁ」
ジョンはまだ止まらない。
「この朱色は!」
「琉球王国を象徴し!」
美咲
「すごーい!」
文
「尚造二号ね」
彩花
「ジョンさんも止まらないね」
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夕方。
首里の高台。
復旧した守礼門を眺める。
赤瓦。
石垣。
子どもたちが走る。
ジョンが写真機を構えた。
「皆さん!」
「こちらを向いてください!」
文。
バックナー。
彩花。
美咲。
屋良。
村男たち。
全員が笑う。
パシャ。
その瞬間。
少し離れた場所。
尚造は静かにその光景を見つめていた。
「いい写真ですね」
バックナーだけが小さく笑う。
「ああ」
風が吹く。
守礼門の向こうには、
青い空がどこまでも広がっていた。
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1958年。
沖縄は少しずつ立ち上がり、
人々の暮らしも変わり始めていた。
世界は宇宙へ。
沖縄は復興へ。
子どもたちは、
戦争ではなく、
未来を見上げる時代を歩き始めていた。
⸻
(つづく)




