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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第一部 尚継編 ― 未来に紡ぐ色 ―
31/136

第二十七話 その文化に、いくらの値段をつけるか

売る気がなくても、

世界は値段を付ける。


それが市場だ。


文化は守れる。


だが——

価値は守れない。

東京。

深夜。


仲村工房の仮事務所。


継は一人、

机に向かっていた。


机の上。

紅型。

そして、タブレット。

そこに表示されている数字。


¥32,000,000,000


継は小さく息を吐く。

「……冗談だろ」


画面が光る。

新しい通知。

ニュース記事。


継が画面を開く。



「幻の紅型 存在か」


「沖縄の工房が秘蔵」


「文化財か 市場価値か」



継は眉をひそめる。

「……早い」


その時。

ドアが開く。


入ってきたのは

彩乃。


「継くん」


継は振り向く。


彩乃は言う。

「ニュース」


継はタブレットを見せる。

彩乃は驚く。


「え……」


スクロール。

さらに記事。



「海外コレクター関心」



彩乃は言う。

「これ……」


継は言う。

「林だ」


挿絵(By みてみん)


沈黙。


彩乃は言う。

「でも名前は出てない」


継は頷く。

「出さない」


一拍。


「それがあの人だ」


継は窓の外を見る。

夜の東京。


継は言う。

「市場を動かす」


一拍。


「空気で」


彩乃は黙る。


その時。

継のスマートフォンが鳴る。


着信。

未知の番号。

継は出る。


「……はい」


電話の向こう。

静かな声。

林明浩。


「こんばんは」


継は言う。

「……林さん」


林は笑う。

「ニュース見ました?」


継は言う。

「あなたですね」


林は答える。

「違います」


一拍。


「市場です」


継は黙る。

林は続ける。


「需要がある。それだけです」


継は言う。

「需要を作ったのは」


林。

「世界です」


継は言う。

「あなたです」


沈黙。


林は笑う。

「どちらでもいい」


一拍。


林の声。

「問題は、あなたがどうするか」


継は言う。

「売りません」


林は言う。

「まだ」


沈黙。


林は続ける。

「ですが、世界は待ちません」


継は黙る。

林は言う。


「次の提案をします」


継は聞く。

林の声。


「公開入札」


静寂。


継は言う。

「……何ですか」


林。

「世界市場」


一拍。


「透明な取引」


継は言う。

「文化財です」


林は答える。

「だからこそ」


一拍。


「価値を証明する」


沈黙。


林は言う。

「あなたは、守ると言った」


一拍。


「では守ってください」


継は黙る。

林は続ける。


「市場から」


電話が切れる。

静寂。


彩乃が言う。

「……継くん」


継は言う。

「林は」


一拍。


「戦争を始めた」


沈黙。


継はタブレットを見る。


数字。

ニュース。

市場。


継は小さく言う。

「……尚造さん」

「美咲さん」

「隆司さん」


一拍。


「あなたたちは」


「どうやって守ったんですか」


窓の外。

東京の夜。

遠くでサイレンが鳴る。


夜はまだ終わらない。



(第二十七話 了)


※作者より

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