第二十二話 極秘任務・サンタクロース
紅型は、人をつなぐ。
戦争で出会った家族も、
文化の違う隣人も、
一枚の布のように少しずつ結ばれていく。
そして迎えた、
仲村家とバックナー家、初めてのクリスマス。
その夜。
沖縄で最も偉いアメリカ人は、
誰にも知られてはならない”極秘任務”へ向かう。
1950年12月24日。
夕方。
バックナー家。
大きなクリスマスツリーが、
部屋の真ん中で輝いていた。
赤い飾り。
金色の星。
色とりどりの電球。
彩花は目を輝かせる。
「すごーい!」
美咲も飛び跳ねた。
「きらきら!」
バックナーの妻は笑顔で二人を見る。
「好きな飾りを付けていいわよ」
「ほんと!?」
二人は夢中になって飾り始めた。
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キッチン。
文とバックナーの妻が
並んで料理を作っている。
丸鶏。
サラダ。
ケーキ。
文は興味津々だった。
「クリスマスって、ごちそうなんですね」
妻は笑う。
「一年で一番楽しみな日なの」
文も微笑んだ。
「沖縄のお正月と似ていますね」
二人は顔を見合わせて笑った。
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食卓。
バックナーが静かに席へ着く。
彩花
「いただきまーす!」
美咲
「いただきます!」
一家の笑い声が部屋いっぱいに広がる。
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夜。
彩花の部屋。
彩花
「サンタさん来るかな?」
美咲
「くる!」
バックナーの息子が笑う。
「沖縄は遠いからなぁ」
「来られないかもしれないぞ」
彩花は少し不安そうだった。
「……そうなの?」
美咲も真剣な顔。
「サンタさん迷子?」
息子は苦笑した。
「そうかもしれない」
部屋の外。
バックナーはその会話を、
静かに聞いていた。
何も言わなかった。
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深夜。
バックナー家。
静かな廊下。
窓から月明かりが差し込む。
赤い服。
白いひげ。
大きな袋。
サンタクロースが静かに歩いていた。
彩花の枕元へ、
プレゼントを置く。
その後ろ。
そっと扉が開く。
息子だった。
サンタは固まる。
ゆっくり振り返る。
「……」
息子も固まる。
「……」
サンタは人差し指を立てた。
「……シー」
サンタは庭へ降り立つ。
周囲を確認。
右。異常なし。
左。異常なし。
屋根。異常なし。
静かに前進。
その足取りは、
まるで敵陣へ潜入する特殊部隊だった。
息子は、こっそり後をついていった。
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その頃。
仲村家。
文は眠る美咲へ布団を掛けていた。
「おやすみ」
振り返る。
そこには――
サンタ。
文
「…………」
五秒。
完全に停止。
サンタは静かに人差し指を立てる。
「……シー」
そこに。
息子が部屋に入ってくる。
「……父さん?」
サンタが無言で頷いた。
文は吹き出しそうになる。
「高等弁務官が何やってるんですか」
サンタは真顔だった。
「任務だ」
文は口元を押さえた。
「それなら仕方ないですね」
サンタは静かにプレゼントを置き、
窓から帰っていった。
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翌朝。
彩花
「プレゼントだー!」
美咲
「わぁーー!」
二人は大喜び。
バックナーは
何事もなかったように新聞を読んでいた。
息子だけが、
父をじっと見ている。
バックナーは小さく咳払いした。
「……何だ」
息子
「いや、何でもない」
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数日後。
大晦日。
仲村家。
今日は年越しの宴だった。
文は沖縄料理を並べていく。
バックナーの妻は興味津々。
「これは?」
「昆布です」
「これは?」
「三枚肉ですよ」
「へぇ」
彩花と美咲は、
こたつでプレゼントを見せ合っていた。
「見て!」
「かわいい!」
「こっちは絵本!」
「いいなぁ!」
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宴席。
文が笑いながら話し始めた。
「そういえば」
「クリスマスの日なんですが」
息子も苦笑する。
「父がサンタでした」
全員
「え?」
ジョンは静かに固まる。
「……高等弁務官ですよね?」
バックナーの妻も頷く。
「私もそう思いました」
バックナーは真顔だった。
「極秘任務だ」
村男A
「軍事機密だ!」
村男B
「コードネーム・サンタ!」
村男C
「煙突ないのに侵入成功!」
宴席は大爆笑だった。
バックナーは静かに沖縄そばをすすった。
「……成功した」
文も笑いながら頷く。
「大成功ですよ」
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深夜。
宴も終わった。
茶の間。
文。
バックナー。
妻。
ジョン。
四人だけが残っていた。
湯気の立つ沖縄そば。
バックナーは静かに箸を持つ。
「これが年越しそばか」
文は微笑む。
「沖縄ではこれなんです」
妻も一口食べる。
「おいしい」
ジョンも満足そうに頷いた。
「来年も食べたいですね」
外では年越しを迎える
村人たちの声が聞こえる。
バックナーは静かに窓の外を見る。
仲村家。
バックナー家。
二つの家。
二つの灯り。
少し笑った。
「来年もよろしく頼む」
文も静かに頷いた。
「こちらこそ」
紅型が冬の風に揺れる。
戦争が終わって五年。
国も文化も違う二つの家族は、
今日も同じ食卓を囲んでいた。
それが、
仲村家とバックナー家の
新しい「当たり前」になっていた。
⸻
(つづく)




