第四十四話 呉越同舟――継、お好み焼き屋で文化交流する
世界平和について真面目に議論した六人。
そして会議終了後――
彼らは広島のお好み焼き屋へ向かった。
普通なら平和な食事会になるはずだった。
普通なら。
※このメンバーに「普通」は存在しません。
2045年7月中旬。
夜。
広島市内。
老舗お好み焼き店。
会議終了後。
六人はヒナに連れられていた。
ヒナ
「広島に来たならここよ」
継
「地元の人おすすめなら間違いないですね」
ジョン
「腹が減った」
林
「同感だ」
御厨
「会議より先に言うことですか」
チャンは小さく笑った。
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店内。
鉄板付きの大きな席。
六人が座る。
ヒナ
「じゃあ今日は好きなもの作りましょう」
継
「お好み焼き屋ですよね?」
ヒナ
「もちろん」
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数分後。
ヒナは手際よく広島焼を作っていた。
キャベツ。
麺。
卵。
豚肉。
見事な手つき。
ジョン
「慣れてるな」
ヒナ
「数十年作ってるからね」
継
「強い」
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その隣。
御厨はもんじゃ焼きを作っていた。
ジョン
「それは何だ」
御厨
「東京代表です」
継
「東京代表なんですか」
御厨
「東京代表です」
チャン
「液体にしか見えません」
御厨
「完成すれば固まります」
チャン
「研究対象ですね」
御厨
「研究しないでください」
⸻
さらに。
チャンの前。
卵。
牡蠣。
青菜。
独特の香り。
継
「それは?」
チャン
「蚵仔煎です」
ジョン
「オア……何だ?」
チャン
「台湾の牡蠣オムレツ」
ヒナ
「牡蠣……!」
チャン
「食べます?」
ヒナ
「もちろん」
牡蠣同盟結成。
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継も鉄板に生地を流した。
ヒラヤーチー。
沖縄風お好み焼き。
ヒナ
「沖縄にもあるのね」
継
「ありますよ」
御厨
「初めて見た」
継
「沖縄県民のソウルフードです」
御厨
「なるほど」
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ここまでは平和だった。
問題はその後だった。
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林が黙々と何かを包んでいる。
継
「林」
林
「何だ」
継
「それ何」
林
「小籠包」
継
「ここお好み焼き屋」
林
「鉄板がある」
継
「そういう問題じゃない」
林
「理論上問題ない」
継
「理論で押し切るな」
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すると。
ジョンも立ち上がった。
巨大な肉を取り出す。
継
「待て」
ジョン
「何だ」
継
「何だじゃない」
ジョン
「ステーキだ」
継
「見れば分かる」
ジョン
「鉄板がある」
継
「お前もか」
林
「完全に同意する」
ジョン
「同意する」
継
「仲良くなるな」
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隣の席。
韓国人観光客たち。
チヂミを焼いていた。
客A(韓国語)
「なぁ」
客B(韓国語)
「ん?」
A
「あれ林明浩じゃない?」
B
「本当だ」
A
「米軍の人いる」
B
「いる」
A
「広島の被爆者代表いる」
B
「いる」
A
「台湾の研究者いる」
B
「いる」
A
「沖縄の人いる」
B
「いる」
A
「何の会合?」
B
「分からない」
A
「普通は集まったら地獄だよな?」
店員
「私も分かりません」
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客Aがチヂミを焼く。
ジョン(英語)
「美味そうだな」
A(英語)
「食べます?」
ジョン
「いいのか」
A
「どうぞ」
ジョン
「代わりにステーキやる」
林
「小籠包もある」
チャン
「牡蠣オムレツもあります」
御厨
「もんじゃは?」
全員
「いらない」
御厨
「なぜ」
爆笑。
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しばらくして。
店員が通りかかる。
店員
「えっ」
鉄板の上には。
広島焼。
もんじゃ。
ヒラヤーチー。
蚵仔煎。
小籠包。
ステーキ。
チヂミ。
国籍不明の光景が完成していた。
店員
「自由すぎません?」
継
「俺もそう思います」
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ヒナ
「変な会になったわね」
御厨
「否定できません」
ジョン
「だが悪くない」
林
「むしろ面白い」
チャン
「研究対象としては非常に興味深いです」
継
「研究対象にするな」
笑いが起きる。
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窓の外。
広島の夜景。
ヒナが静かに言った。
「戦争の話ばかりしていたけど」
誰も喋らない。
「こうして一緒にご飯を食べられるのが」
少し笑う。
「一番大事なのかもしれないね」
静かな沈黙。
ジョンが頷く。
「ああ」
林も頷く。
「同感だ」
継はジョッキを持ち上げた。
「じゃあ」
全員が見る。
「戦後100年展」
小さく笑う。
「成功を願って」
全員
「乾杯!」
ジョッキがぶつかる。
カンッ――
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広島。
沖縄。
東京。
アメリカ。
中国。
台湾。
そして未来。
六人の夜は更けていった。
いざ、世界へ。
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そして――
1945年へ。
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(つづく)




