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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第三部 美咲編 ― 沖縄に咲く紅 ―
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202/230

第四十九話 2020年ーー尚造の系譜(2号&3号)

2020年。

世界が止まった年。


だが――

この工房だけは、止まらなかった。


理由は、ひとつ。


尚造の血が、動いたからである。

2020年。


沖縄。

仲村工房。


空気は、重かった。


仕事は減り、

人の動きも止まっている。


それでも――

布だけは、そこにあった。



「……マスク、足りないらしいな」


健太が、ぽつりと言う。


彩乃が頷く。


「うん。どこも不足してるって」


「でも、医療用じゃないと

 意味ないって言われてるし……」


沈黙。


布はある。


だが、使えない。


その事実が、妙に重かった。



その時だった。


「……作れます」


挿絵(By みてみん)


静かな声。


全員が、顔を上げる。


継だった。


「布でいいなら」


一拍。


「“意味のあるもの”にできます」


「いや待て」


健太が即座に止める。


「普通に考えて無理だろ」


「医療用じゃないって今言ってただろ!?」


継は、布を見ている。


「……機能だけじゃ足りません」


「意味も、必要です」


彩乃が小声で言う。


「……なんか怖いこと言い出した」



その日からだった。


継が、動き出したのは。


作業台。

紅型の布。

異様な集中力。


誰も話しかけられない。


健太

「……これ、止めた方がいいやつか?」


彩乃

「たぶんもう手遅れ」



数時間後。


完成したそれは――

やたら美しいマスクだった。


「いや派手すぎる!!」


健太が叫ぶ。


「これ完全に主張強いだろ!!」


彩乃

「というか医療用じゃないよね!?」


「はい」


即答。


「ですが――」


「これは“残る”」


挿絵(By みてみん)


沈黙。


健太

「何が?」


「記憶です」


彩乃

「こわい」



その頃。

米軍基地。


「……足りない?」


美咲が、静かに聞く。


兵士

「マスクが……」


「補給が間に合ってなくて――」


美咲は、頷いた。


「そう」


一拍。


「じゃあ、配ればいい」



数時間後。


「What is this…?」


米兵が、紅型マスクを手にする。


鮮やかな色彩。

波、花、島。


完全に“普通じゃない”。


美咲

「文化財です」


挿絵(By みてみん)


米兵

「?????」


だが。


「……Cool」


別の兵士が言った。


「Very cool」


気づけば、

皆、つけていた。


「……なぜだ」


誰かが呟く。


「統率が取れてる……」


完全に現場制圧。


尚造2号、発動である。



仲村工房。


「これ、兵站的には革命だよ」


ジョン3世が、真顔で言った。


全員

「?」


「補給線に依存しない布製装備で――」


健太

「やめろ」


彩乃

「火に油」


ジョン3世は止まらない。


「あと迷彩柄にすれば――」


美咲

「それはやらない」


即答。


沈黙。


健太が、頭を抱える。


「なんでこの家系こうなんだよ!!」


彩乃

「普通にマスク作るだけでいいのに!!」



少し離れた場所。


隆司とジャックが、それを見ていた。


隆司

「……また始まったな」


ジャック

「懐かしいな」


隆司が、静かに言う。


「あれが“尚造”だ」


ジャックが頷く。


「止めても無駄だ」



作業台。


完成した紅型マスク。


誰かが、手に取る。


継が、それを見る。


「……これ」


一拍。


「もっと遠くに行けます」


挿絵(By みてみん)


沈黙。


隆司が、わずかに笑う。


「……行くな、これは」


ジャックも、同じ顔で。


「行くな」



布が、揺れた。


それは――


またひとつ、

世界へ出ていく合図だった。



(つづく)

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


今回は完全にコント回でしたが、

仲村工房の日常は、

こうして少しずつ続いていきます。


――ただし。

この物語は、もうすぐ終わりを迎えます。


次回、美咲編・最終話。


舞台は再び、あの工房。


そして――

“あの部屋”の扉が、開きます。


そこにあるのは、

残されたものか。

それとも――運ばれるべきものか。


どうか、最後まで見届けてください。

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