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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第三部 美咲編 ― 沖縄に咲く紅 ―
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201/232

第四十八話 2010年代ーー未来に拡がる色

時代は変わる。

道具も、価値も、働き方も。


だが――

変わらないものがある。


それは、手から手へ渡されるもの。


そして、

誰かがそれを「遠くへ運ぶ」と決めた時、

物語はまた動き出す。

2010年代。


沖縄。

仲村工房。


朝の空気は、相変わらず早い。


だが――

そこにいる顔ぶれは、少し変わっていた。



「今日からお世話になります!」


挿絵(By みてみん)


二人の若者が、頭を下げる。


健太と彩乃。


まだぎこちないが、

どこか覚悟を持った声だった。


美咲が、静かに頷く。


「住み込み。給料は最低限」


少しだけ間。


「仕事は雑用から。いい?」


「はい!」


二人の声が揃う。


その様子を、

少し離れた場所で見ていたのは――

隆司だった。


「……若いな」


ぼそりと呟く。



その直後。


「……あれ、これどうやるんだ」


隆司がスマホを見つめている。


画面は真っ暗。


「電源、入ってますよ」


健太が苦笑する。


「いや、入ってるのに何も出ん」


「それスリープです」


「スリープ?」


「……寝てる状態です」


「機械が寝るな」


彩乃が吹き出す。


挿絵(By みてみん)


画面が点く。


ビデオ通話。


向こうには、健太と彩乃の両親。


海外の街並みが映っている。


「聞こえるか?」


「うん、大丈夫」


少しだけ時差のある声。


「……本当に、戻るんだな」


父親の声は、静かだった。


「うん」


健太が頷く。


「ここでやる」


少しの沈黙。


「……そうか」


否定は、しなかった。


「簡単な場所じゃないぞ」


「分かってる」


母親が、少しだけ笑う。


「でも――」


「あなたたちのおじいちゃんの場所だからね」


通信が、途切れる。



「尚家って、どんな人なんですか?」


彩乃が、ぽつりと聞く。


「東京の名家って聞いてるけど……」


健太も頷く。


「ちょっと、怖そうというか……」


隆司が、肩をすくめる。


「まあ、変わってるのは確かだな」


美咲が、静かに続ける。


「でも――」


「ちゃんと来る人は、来る」



2020年。


世界は、止まっていた。


仕事は消え、

人は動かず、

未来は、曖昧になった。



狭い部屋。


スマホの通知。


「不採用」


その文字を、何度見たか分からない。


青年は、画面を閉じた。


名前は――尚 継(しょう けい)


その時だった。


一通の連絡が届く。


差出人:尚家


短い文面。


「沖縄に行け」



「……仲村工房、ですか」


挿絵(By みてみん)


2020年。


工房の入口に、ひとりの青年が立っていた。


静かな目。


どこか、場に馴染まない空気。


健太と彩乃が、小さく身構える。


(……この人が?)


継は、何も言わずに中へ入る。


布が、そこにあった。


作業台の上。


未完成の一枚。


継は、それを見る。


そして――

触れた。


挿絵(By みてみん)


一瞬。


空気が、変わる。


誰かが、気づく。


音が、消える。


継は、顔を上げないまま言った。


「……これ」


少しだけ、間。


「もっと遠くに行けます」


沈黙。


健太が、眉をひそめる。


「……は?」


意味が、分からない。


だが――

隆司は、違った。


ほんのわずかに、目を細める。


「……そうか」


小さく、呟く。



風が、吹いた。


布が、わずかに揺れる。


それは――


まだ誰も知らない未来へと、

静かに繋がっていた。



(つづく)

ここまでお読みいただき、

ありがとうございました。


次回の舞台は2020年。

そして――コント回です(笑)


次回も、よろしくお願いします。

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