第四十八話 2010年代ーー未来に拡がる色
時代は変わる。
道具も、価値も、働き方も。
だが――
変わらないものがある。
それは、手から手へ渡されるもの。
そして、
誰かがそれを「遠くへ運ぶ」と決めた時、
物語はまた動き出す。
2010年代。
沖縄。
仲村工房。
朝の空気は、相変わらず早い。
だが――
そこにいる顔ぶれは、少し変わっていた。
⸻
「今日からお世話になります!」
二人の若者が、頭を下げる。
健太と彩乃。
まだぎこちないが、
どこか覚悟を持った声だった。
美咲が、静かに頷く。
「住み込み。給料は最低限」
少しだけ間。
「仕事は雑用から。いい?」
「はい!」
二人の声が揃う。
その様子を、
少し離れた場所で見ていたのは――
隆司だった。
「……若いな」
ぼそりと呟く。
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その直後。
「……あれ、これどうやるんだ」
隆司がスマホを見つめている。
画面は真っ暗。
「電源、入ってますよ」
健太が苦笑する。
「いや、入ってるのに何も出ん」
「それスリープです」
「スリープ?」
「……寝てる状態です」
「機械が寝るな」
彩乃が吹き出す。
画面が点く。
ビデオ通話。
向こうには、健太と彩乃の両親。
海外の街並みが映っている。
「聞こえるか?」
「うん、大丈夫」
少しだけ時差のある声。
「……本当に、戻るんだな」
父親の声は、静かだった。
「うん」
健太が頷く。
「ここでやる」
少しの沈黙。
「……そうか」
否定は、しなかった。
「簡単な場所じゃないぞ」
「分かってる」
母親が、少しだけ笑う。
「でも――」
「あなたたちのおじいちゃんの場所だからね」
通信が、途切れる。
⸻
「尚家って、どんな人なんですか?」
彩乃が、ぽつりと聞く。
「東京の名家って聞いてるけど……」
健太も頷く。
「ちょっと、怖そうというか……」
隆司が、肩をすくめる。
「まあ、変わってるのは確かだな」
美咲が、静かに続ける。
「でも――」
「ちゃんと来る人は、来る」
⸻
2020年。
世界は、止まっていた。
仕事は消え、
人は動かず、
未来は、曖昧になった。
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狭い部屋。
スマホの通知。
「不採用」
その文字を、何度見たか分からない。
青年は、画面を閉じた。
名前は――尚 継。
その時だった。
一通の連絡が届く。
差出人:尚家
短い文面。
「沖縄に行け」
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「……仲村工房、ですか」
2020年。
工房の入口に、ひとりの青年が立っていた。
静かな目。
どこか、場に馴染まない空気。
健太と彩乃が、小さく身構える。
(……この人が?)
継は、何も言わずに中へ入る。
布が、そこにあった。
作業台の上。
未完成の一枚。
継は、それを見る。
そして――
触れた。
一瞬。
空気が、変わる。
誰かが、気づく。
音が、消える。
継は、顔を上げないまま言った。
「……これ」
少しだけ、間。
「もっと遠くに行けます」
沈黙。
健太が、眉をひそめる。
「……は?」
意味が、分からない。
だが――
隆司は、違った。
ほんのわずかに、目を細める。
「……そうか」
小さく、呟く。
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風が、吹いた。
布が、わずかに揺れる。
それは――
まだ誰も知らない未来へと、
静かに繋がっていた。
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(つづく)
ここまでお読みいただき、
ありがとうございました。
次回の舞台は2020年。
そして――コント回です(笑)
次回も、よろしくお願いします。




