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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第三部 美咲編 ― 沖縄に咲く紅 ―
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第四十話 答えは、もう決まっていた

言葉にすることは、怖い。


壊れてしまうかもしれないから。

変わってしまうかもしれないから。


けれど――


それでも、伝えなければならない時がある。

沖縄。


夕暮れ。


空は、ゆっくりと色を変えていた。


工房の仕事を終え、

人の気配が少しずつ消えていく。


静かな時間。


挿絵(By みてみん)



健一は、一人で外に出ていた。


風が吹く。


遠くに、海の音。


ポケットの中で、

小さな箱を握りしめる。


健一

「……はぁ」


小さく、息を吐く。


その背後から――


彩花

「ここにいたのね」


振り向く。


そこに、彩花がいた。


いつも通りの、穏やかな笑顔。


健一

「……少し、考え事を」


彩花

「珍しいね」


少しだけ、隣に立つ。


沈黙。


だが、不思議と気まずくはない。


彩花

「……今日、きれいだね」


挿絵(By みてみん)


健一

「え?」


彩花

「空」


健一も、空を見上げる。


橙色と、群青が混ざる。


その境目が、ゆっくりと溶けていく。


健一

「……そうですね」



しばらくの沈黙。


風の音だけが、流れる。


健一は、ゆっくりと口を開く。


健一

「……あの」


少しだけ、声が詰まる。


それでも――


健一

「彩花さん」


彩花が、静かに彼を見る。


その目は、逃げていない。


健一

「……俺は」


言葉を選ぶ。


慎重に。


だが、今回は――逃げない。


健一

「ずっと、考えていました」


彩花は、何も言わない。


ただ、待つ。


健一

「これから、どう生きるか」


「どこで、何をするか」


「誰と――」


一拍。


健一

「……誰と、生きていくか」


風が、少し強く吹く。


健一

「その答えは」


ゆっくりと、彩花を見る。


健一

「……もう、決まっていました」


彩花の瞳が、わずかに揺れる。



健一は、ポケットから小さな箱を取り出す。


それを、静かに開く。


夕陽が、そこに差し込む。


挿絵(By みてみん)


健一

「彩花さん」


一歩、近づく。


健一

「俺と――」


ほんのわずかな間。


だが、確かに積み重ねてきた時間が、そこにある。


健一

「結婚してください」


静寂。


風も、音を止めたように感じる。



彩花は、少しだけ目を伏せる。


そして――

小さく、息を吸う。


彩花

「……遅い」


健一

「……え」


彩花は、くすっと笑う。


彩花

「ずっと前から、分かってた」


一歩、近づく。


健一の前に立つ。


彩花

「でも」


顔を上げる。


その表情は、柔らかくて――強い。


彩花

「ちゃんと聞きたかった」


一拍。


そして――


彩花

「はい」


静かに、しかし確かに。


彩花

「喜んで」



健一の肩から、力が抜ける。


思わず、笑ってしまう。


健一

「……よかった」


彩花も、少しだけ笑う。


健一は、指輪を取り出す。


少しだけ手が震える。


彩花が、そっと手を差し出す。


その手に――

指輪がはめられる。


夕陽が、二人を包む。


挿絵(By みてみん)



少し離れた場所。


物陰。


小林(小声)

「うおおおおおおおお!!!!!」


美咲

「しーっ!!」


隆司

「声でかい」


小林

「成功したあああああ!!」


美咲

「最初から成功するって分かってたでしょ」


隆司

「まぁな」


その後ろで、

文が、静かに見ている。


「……よかった」


誰に向けた言葉でもない。


けれど、確かに届いている。



再び、二人。


健一

「……これから、よろしくお願いします」


彩花

「こちらこそ」


少しだけ、間。


彩花

「健一」


健一

「はい」


彩花

「……幸せにしてね」


健一は、少し驚いて――


そして、笑う。


健一

「……はい」


彩花

「私も、幸せにします」



二人は、並んで立つ。


夕焼けの中。


未来の方を見ている。


風が吹く。


それはもう、迷いの風ではない。



(つづく)

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