表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第三部 美咲編 ― 沖縄に咲く紅 ―
PR
179/269

第二十六話 湯気の中の侵入者

少しだけ、

日常に戻る――はずだった。


……そのはずだったのだが。

挿絵(By みてみん)


東京・銭湯

夜。


暖簾をくぐると、

ふわりと湯気が立ち込める。


外の冷たい空気とは、

まるで別世界だった。



脱衣所


彩花

「……はぁ〜……生き返る……」


健一

「声大きいですよ……」


彩花

「いいじゃない、誰もいないんだし」


美咲は、静かに笑った。


美咲

「……たまには、こういうのもいいね」


彩花

「ですよね!」


隆司と黒田、小林はすでに男湯へ。


自然と、男女で分かれる形になっていた。



女湯


湯気に包まれた浴場。

静かな水音だけが響く。


美咲と彩花は、

湯船に肩まで浸かる。


挿絵(By みてみん)


彩花

「……なんか、

 やっと一息つけた感じね」


美咲

「うん……」


目を閉じる。


ここには、戦いも駆け引きもない。

ただ、温かさだけがあった。



その時。


湯気が、わずかに揺れた。


ガラリ、と扉が開く音。

一人の女が入ってくる。


無言。

視線が――合う。


空気が、わずかに変わった。


「……仲村美咲さん」


挿絵(By みてみん)


彩花

「……え?」


美咲は、ゆっくりと目を開く。


逃げない。

ただ、見据える。


美咲

「……どちら様ですか」


女は一歩、近づく。

その動きに無駄がない。


「数分で終わります」


丁寧な口調。

だが、その一言で分かる。


――普通ではない。



彩花が、わずかに身を引く。


その前に、美咲が一歩出た。


彩花を、さりげなく背にかばう。


美咲

「……その人に、用ですか」


女の視線が、わずかに揺れる。

すぐに戻る。


「あなたにも、あります」


一拍。


「我々は、紅型について話がしたい」


沈黙。


湯気の中で、言葉だけが浮く。


彩花(心の声)

(……来た……)


美咲(心の声)

(ここで、動くの……?)


女は淡々と続ける。


「紅型は、個人が扱うものではない」


「適切な管理が必要です」


「我々なら、それができる」



美咲は、静かに息を吐いた。

そして。


美咲

「必要ありません」


即答。

迷いはない。


女の目が、わずかに細くなる。


「まだ、理解していないようですね」


「これは“提案”ではありません」


一歩、踏み込む。

湯面が、わずかに揺れた。


「状況の説明です」


美咲は、動かない。

ただ、言う。


美咲

「……それでも、断ります」


沈黙。


湯気の中、三人の距離だけが近い。


「……分かりました」


わずかに頷く。


「では、また改めて」


踵を返す。

去っていく足音。


やがて、扉が閉まる。



静寂。


彩花

「……え、なに今の……」


美咲は、少しだけ肩の力を抜いた。


美咲

「……CIA」


彩花

「ですよね!?!」



男湯側では――


別の空気が流れ始めていた。



湯気の向こうで、

見えない戦いが始まる。


そしてそれは、

確実に彼らを巻き込んでいく。


湯の熱さだけが、

やけに現実だった。



(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ