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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
第三部 美咲編 ― 沖縄に咲く紅 ―
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第二十五話 公安との距離

敵か、味方か。


その境界は、思っているほど

はっきりしていない。


利害が重なれば、人は同じ席に座り、

同じ酒を飲む。


だが――


同じ方向を向いているからといって、

同じものを見ているとは限らない。


笑い声の裏で、

静かに測られている距離。


それは、

銃よりも冷たい駆け引き。


今夜、

小さな居酒屋で交わされるのは――


会話か、

それとも観測か。

東京・小さな居酒屋


仕事帰りのサラリーマンで賑わう店。


カウンターの端に、

隆司と公安の黒田が並んで座っている。


――後から小林が静かに座る。


健一たちは少し離れたテーブル席。


挿絵(By みてみん)


健一

「なんで公安の人と飲んでるんですか……」


彩花

「社会勉強じゃない?」



カウンター。


黒田がビールを一口飲む。


黒田

「……正直に言う」


隆司

「聞こう」


黒田

「我々は君たちを信用していない」


健一、むせる。


黒田

「だが、CIAに渡すわけにもいかない」


隆司

「つまり、利害が一致しているだけだ」


黒田

「そうだ」


短い沈黙。


隆司

「十分だ」


黒田

「……怒らないのか」


隆司

「国家は疑うものだ。

 個人は……見て判断する」


黒田は少し驚いた顔をする。



黒田が、二人をじっと見る。


黒田

「……一つ聞く」


隆司

「なんだ」


黒田

「お前たち、どこの住人だ」


隆司

「沖縄」


小林

「東京」


黒田(ため息)

「違う」


一拍。


黒田

「“どちら側”の人間だ」


沈黙。


隆司

「……“生き残った側”だ」


小林

「同じく」


挿絵(By みてみん)


黒田の手が止まる。


黒田

「……そうか」


一口、酒を飲む。


黒田

「なら、話は早い」


さらに低く。


黒田

「“選ぶ側”には、回るなよ」


隆司

「……」


小林

「……それは忠告か?」


黒田

「経験談だ」



別テーブル。


彩花

「ねえ健一」


健一

「はい?」


彩花

「あの三人……」


美咲

「うん」


彩花

「会話、噛み合ってなくない?」


健一

「いや、むしろ噛み合いすぎてて怖いです」


美咲

「さっき、“目で会話してた”よね」


彩花

「エスパー?」


健一

「やめてください」



カウンター。


黒田

「CIAも、最後の部品が

 政府中枢にあると読んでいる」


小林が静かに口を挟む。


小林

「……妥当だな」


健一たちの席から、ちらりと視線。


健一(心の声)

(……なんでこの人、

 普通に会話に入ってるんだ)


隆司

「時間がないな」


黒田

「返還交渉が進めば、動きが激しくなる」


隆司

「巻き込まれるなよ、あいつらを」


黒田

「……努力はする」


隆司

「努力では足りん」


黒田

「……覚えておこう」



別テーブル。


三人の方を見る。


隆司・黒田・小林――

無言で酒を飲んでいる。


彩花

「……やっぱりエスパーだ」


健一

「怖いです」


美咲は小さく笑うが――

少しだけ、視線を落とす。


美咲

「……あの人たち、

 “同じものを見てる”んだと思う」



店の外

夜風。


黒田と小林が歩く。

その後ろに四人が並んで歩く。


健一

「なんだか、不思議ですね」


美咲

「何が?」


健一

「昨日まで

 敵か味方か分からなかった人と、

 同じ方向を向いている」


彩花

「大人の世界って、そういうものなのかも」


隆司

「敵でも、同じ敵を持つことはある」


美咲

「……それ、平和の始まりかもしれませんね」


隆司は少しだけ笑う。


健一(心の声)

(……でも)


(あの三人)


(本当に同じ話をしてたのか?)


(それとも――)


(もっと別の何かを、共有してるのか)



離れた場所。


電話ボックスの中で男が話している。


挿絵(By みてみん)


「ターゲットと公安の接触を確認」


間。


「……三名とも、同系統だ」


CIAの影は、確実に近づいていた。



(つづく)

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