第十七話 沖縄戦②ーー地獄の群像
戦いは、場所ではない。
人がいるところが、戦場になる。
同じ島で、同じ時間に。
それぞれの地獄が、始まった。
紅型のタオル。
花の中に、島がある。
尚造の指が、ゆっくりなぞる。
西。
南。
中央。
線。
点。
全部、繋がっている。
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1945年4月1日。
西岸。
静かな海。
Bが、空を見る。
青い。
何もない。
「……来るな」
その瞬間。
空が裂けた。
閃光。
遅れて、音。
地面が、跳ねる。
水柱。
土。
肉。
全部、上がる。
終わらない。
止まらない。
「……はは」
笑う。
笑うしかない。
「無理ですよ」
誰に言ったのか、分からない。
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4月上旬。
壕予定地。
Eが、地面を叩く。
固い。
もう一度。
固い。
「ここだ」
決める。
すぐに、掘る。
スコップ。
手。
爪。
土が崩れる。
その上で、爆撃。
落ちる。
土が、降る。
息が、詰まる。
それでも、掘る。
「急げ」
誰かが叫ぶ。
間に合わないと、死ぬ。
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4月中旬。
市街跡。
瓦礫。
煙。
焦げた匂い。
Cが、歩く。
足音だけが響く。
静か。
不自然なほど。
――視線。
気配。
一瞬、消える。
銃を向ける。
止める。
誰だ。
敵か。
違うのか。
分からない。
「……」
正解がない。
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4月下旬。
後方壕。
暗い。
湿っている。
Dが、箱を開ける。
空。
もう一つ、空。
もう一つ、少し。
「……足りねぇな」
誰も答えない。
水、回す。
一口ずつ。
足りない。
弾も。
薬も。
全部。
「……次」
来ない。
分かっている。
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5月。
南部戦線。
雨。
泥。
動かない。
Aが、地面を見る。
斜面。
穴。
死体。
全部、同じ色だ。
「ここだな」
座る。
伏せる。
待つ。
砲撃。
また来る。
終わらない。
削られる。
少しずつ。
確実に。
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時間が、流れる。
西岸。
人が、いない。
Bは、まだいる。
耳が、聞こえない。
音がない。
口だけが、動く。
壕。
繋がる。
穴と穴。
人と人。
Eが、息を吐く。
「……通った」
その上で、爆発。
土が、落ちる。
市街。
火。
煙。
声。
誰のものか、分からない。
Cは、振り向かない。
振り向けない。
補給。
Dが、箱を閉じる。
静かに。
何も入っていない。
南部。
人が、増える。
見たことのない顔。
見たことのある装備。
海の匂い。
土の匂い。
全部、混ざる。
Aが、顔を上げる。
「……来たか」
削る。
耐える。
終わらない。
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(つづく)
ここまでお読みいただき、
ありがとうございます。
それぞれの場所で、戦いは続いています。
そして――
その先で、彼らは選ばなければなりません。
戦うのか。
それとも、生きるのか。
次回、その答えが、示されます。




