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Bingata Legacy 〜沖縄戦×米軍基地配置×禁忌の紅型〜  作者: ちま
外伝・村男編 ― 戦場からの卒業 ―
145/146

第十八話 沖縄戦③ーー選択

命令は、消えた。


残ったのは、

自分で決めるしかない現実だけ。


戦うか。

生きるか。


その答えは、誰にも教えられない。

1945年6月。

 

首里城は、もうなかった。


雨。

土。

崩れた壕。


声は、届かない。

命令も、来ない。



南部。


Aは、立っていた。

動ける者は、もう少ない。


「……前へ」


声が出る。

だが、足が動かない。


部下の顔を見る。


若い。

まだ、若い。


「……散れ」


誰も、動かなかった。


「生きろ」


挿絵(By みてみん)


それだけ言った。


Aは、背を向けた。



西岸からの残存。


Bは、歩いていた。


武器は、まだ持っている。

だが、弾はない。


「……は」


笑う。

乾いた音。


前に、影。

敵か。


違う。

倒れている。

動かない。


Bは、通り過ぎる。


振り返らない。


挿絵(By みてみん)



集落跡。


Cは、子供の手を引いていた。

何人いるのか、分からない。


後ろから、音。

近い。

速い。


「……走れ」


声を出す。

自分でも驚くほど、強い声だった。


子供が、走る。


挿絵(By みてみん)


Cも走る。


振り向かない。



後方。


Dは、箱を開ける。


最後の水。

最後の食料。


周りに、人がいる。

目が合う。

何も言わない。


Dは、分けた。

全部。


挿絵(By みてみん)


空になった箱を、閉じる。


それだけだった。



壕。


Eは、暗闇にいた。


繋がっていたはずの道が、崩れている。


戻るか。

進むか。


上から、音。

近い。


Eは、進んだ。

狭い方へ。


挿絵(By みてみん)



雨。


全部が、南へ流れていた。


土。

人。

音。


全部。


Aが、歩く。

一人。


前に、人影。

止まる。


「……生きてたか」


Bだった。


少しだけ、間。


「お前もな」


それだけだった。


横から、音。


Cが、子供を連れて現れる。


さらに。


D。


空の袋。


最後に。


E。


土にまみれている。



五人が、揃う。


誰も、笑わない。


雨だけが、降っている。


誰かが言う。


「……どうする」


答えは、ない。


Aが、前を見る。


「……生きる」


小さく。

だが、はっきりと。


誰も、否定しない。

誰も、肯定もしない。


ただ、歩き出す。

同じ方向へ。


挿絵(By みてみん)


遠くに、壕。

暗い入口。

そこが、目的地なのかは分からない。


それでも、歩く。



(つづく)

ここまでお読みいただき、

ありがとうございます。


戦う者も、

生きることを選ぶ者もいます。


どちらが正しいのか、

その答えは簡単には出ません。


ただ――

それでも、命は繋がっていきます。


次回、第十九話「帰る場所」。

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