俺が賢いわけ
《ドンッ》
「調子に乗るなよ」
「…は?」
こんにちはフィルです。
俺は今、なぜか王子に壁ドンされている。
そう、壁ドンされているのだ(大切な事なので二回言ったよ)。
四歳で壁ドンって…王子、おそろしい子っっ
内心某少女漫画の月〇先生になりつつ、顔から二十センチ離れた王子の顔をじっと見る。
こんなシチュエーションなら、もみじが代わってくれと言いそうだなぁ。
この親にしてこの子在りな顔(つまり美形)をしているため、ふと乙女ゲーム好きだった親友を思い出した。
「おい、聞いているのか!」
おっと危ない。今は王子に集中しなきゃ
俺がボウッとしていたことに苛立ったのか王子が声をあらげ、その声でハッとする。
「えっと、この腕を退けてください」
「イヤだ。お前のせいでおれは父上たちにしかられた。だから謝れ!」
「すみません」
「謝らないなら…って、え?」
「すみません」
「わっわかったならいいんだよ、わかったなら」
王子は、俺が素早く返した謝罪にタジタジになりながら、カベドンをやめてくれた。
俺はすぐになるべく自然を装いつつ王子から離れ、ソファに座った。
背中に王子の視線を感じるが俺は無言でいる。
その内、静寂に耐えられなくなったのか、王子が声をかけてきた。
「…おい」
「私は゛おい゛ではありません」
先程は現状を考えさっさと謝ったが、王子だからといってもそんな呼び方をされて返事をするほど俺は性格が出来てはいない。
…つまり、俺は王子に少しだけ切れているのだ。
「なぁ」
「…」
「おい、お前」
「…」
「なぁ、マロル家の三男」
「ハァ…何ですか、王家の次男さん」
これ以上は無理だと判断し渋々返事をすると、王子はホっとしたように息を吐いてから、少し迷うように目をさまよわせた後口を開いた。
「お前はどうしてその歳でそんなに…」
「賢いのか…ですか?」
「あっあぁ」
「そうですねぇ。しいて言うなら兄たちのため… ですかねぇ」
本当は前世の記憶を加算された精神年齢のせいなのだが、それを除くとそうとしか思えなかった。
「兄たちの?」
「えぇ。王子は、私の兄二人をご存知ですか?」
「いや…」
「では簡単に説明させていただくと、私の兄二人はそれぞれ方向が違う天才なんですよ」
「天才!?」
王子はカッと目を剥いて食いついてきた。
「はい。上の兄は運動神経が抜群で、実際学校では負けなしだった様ですよ。今は王宮騎士なんですよ」
まぁただしアホだけど…
内心で情報を付け足す。
「逆に二番目の兄は頭が良く、神童と呼ばれていますし、かくいう私もそう思ってます。今は幼学校の一年生なんですよ」
「…」
「…だからこそ俺は早く力も知恵も付けて、すぐにでも兄二人をサポート出来るようになりたいんです。 …兄たちは私の憧れですから」
思わず熱くなっていたことに気付いた俺は、素になっていた一人称を元に戻しながら苦笑した。
「俺も…俺にも一人、兄がいる」
そう言って王子は彼の兄の話をしはじめた。




