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【マージスキルで簡単クリエイト☆】〜石ころから始める、異世界おてがる開拓記〜  作者: 弓屋 晶都


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マージ補助……?

 


 動きを止めた俺を、二人が不思議そうな顔で見ている。


 えーと……とりあえずやってみようかな。


「アンマージ開始」


 すると今度は俺の手が青い光に包まれた。


 青く光る手で、もう一度トウモロコシの山に触れる。


 すると、トウモロコシの山は、ザルとトウモロコシに分離した。


 えっと……これだけの能力……?


 首を傾げつつ、今度はトウモロコシの山同士をマージしようとする。

 だけどその2つがマージされることはなかった。


「もしかしたら、桐谷が崩したトウモロコシはもう合体アイテムとして認められないのかも知れねぇな」


 大浦さんがそう言うので、俺達は3人で手分けして雑草を16枚追加して、トウモロコシの山をもう一山作る。


 しかし、それも俺のアンマージしたトウモロコシの山とは重ならない。


 それじゃあこっちも同じようにアンマージすればいいのか?


 さっきと同様にザルとトウモロコシに分離させると、トウモロコシはトウモロコシ同士マージできた。


「これって枝豆か?」

「タンパク質きたーーーーー!!」

「畑にも植えられそうだよな」

「トマト同様根っこまでついてるからね! 大豆! きなこ! 豆腐……は、にがりがないか。けどこれで栄養素的にはかなり揃ったね!」


 トウモロコシは、実をたわわにつけた枝豆になった。


「うう、私のザルが……」

「また作ってもらえって」


 桐谷さんにはちょっと申し訳ないけど、アンマージした物同士がそれぞれマージできるのかは知りたいので、ごめんね。

 俺は心で謝りながら、ザル同士を重ねる。


「お皿だ!」


 桐谷さんの声は喜びに溢れていた。


 ザルとザルは5枚組の平たい皿になった。

 白くてツヤツヤした皿は、春のキャンペーンでもらえるお皿によく似ていて、とても頑丈そうだ。


「いやぁ……木製のもんが陶製になるってすげーな……。これって元は雑草なわけだろ? こりゃ錬金術師も真っ青だな……」


 俺としてはザルつきトウモロコシ同士をくっつけると何になるかも知りたかったけど、ひとまずこっちはここまでかな。


「また雑草集めておくねっ」


 桐谷さんが浮かれた声で送り出してくれるので、俺はウキウキの大浦さんに半ば引きずられるようにして、池から少し離れた建設予定地とやらに連れ出された。



 大浦さんがエコバッグをひっくり返してザラザラと地面に小石の山を作る。


 ずいぶん沢山持ってきたなぁ。

 小石とはいえ、これだけの量となると相当重かったはずだ。


 地面にしゃがみ込んだ俺は、改めて大浦さんを見上げる。


 建築設計士というと、インドアで色白で神経質そうなイメージだったけど、大浦さんは大柄ではないものの肩幅はしっかりしていて、多少日焼けした健康的な肌の色をしていた。


 知的感を足す黒縁メガネがなければ、設計士と言われても首を傾げたかもしれない。

 短めの黒髪をツーブロックにし、大口を開けて笑う姿は、むしろ体育会系だ。



「ん? どうした?」


「いや、設計士さんって意外と力持ちなんだなと思って……」


「ああ、屋外作業や現場の立ち会いがあるし、結構外仕事もあんだよ。つっても職人さんらはオレよりずっとすげーぞ?」


 ムキムキの大工さん達は、俺達がヒーヒー言って運んできた石材もひとりで軽々運べたりするんだろうか。

 そんな風に思いながら「へぇ、すごいんですね」と答えると、なぜか頭をポンポンと撫でられた。


「お前って素直でいい奴だよなぁ……。このまま曲がらずに育ってくれよ……?」


 ……そんな会話だっただろうか?


 俺は内心首を傾げながら「マージ開始」と唱える。


 白っぽく光る手で『石ころ』をどんどん重ねていく。


「52、53、54、55……」


 すごいな、あの短時間で大浦さんは小石を100個以上集めてきたのか。


「本当はもっと持ってきたかったんだけどな、袋の底が抜けそうで、そんくらいにしといた」


「『ひと塊の岩』が58個、ってことは『石ころ』は116個ですね。7段階まで作れそうです。8段階を作るには『石ころ』があと12個要りますね」


「良平はなんでそんなに計算はやいんだ? 天才か?」


 心底驚いたみたいな声に、俺は苦笑する。


「いえ、これは慣れで……、俺、マージゲームは好きでずっとやってたので、暗記してるだけです」


「ああそうか、スキルは特技が反映されるんだもんな」


 俺は『ひと塊の岩』を重ねて『石材』を29個作る。


 しかしここからが大変だ。

『石材』同士を重ねようにも、俺ひとりの力じゃ持ち上がらない。

 大浦さんに助けてもらってなんとか『石材』を重ねると、『石材』は『レンガの山』になった。


「おお、レンガの方が俺ひとりでも運搬はしやすいな」


「でも総重量的には減ってませんか?」


 石材2つ分に比べると、目の前のレンガの山は量が減って見える。


 大浦さんが「建材鑑定」と唱えている。


 俺もレンガの重さを確かめてみようと「マージ終了」と唱える。

 レンガをひとつ手に取ろうとして触れた途端、頭の中に文字が浮かんだ。


 ======

 祝福スキル『アンマージ』の実行対象です。『アンマージ』を実行しますか?

 開始する場合は「アンマージ開始」、終了する場合は「アンマージ終了」と唱えてください

 ======


 ああ、トウモロコシと同じように、これも分けられるアイテムなのか。


「大浦さん、このレンガはアンマージできそうですよ、やってみますか?」


「おお? 数が多いアイテムは分割できるのか。けどこれ分けてもレンガとレンガになるだけじゃないか?」


 それは確かにそうなんだけど……。


「でも、アンマージした物同士だと、しないものとは別の物ができるはずです」


「そうか、そうだな。んじゃやってみてくれるか」


「はい」

 俺は「アンマージ開始」と唱えてレンガに触れた。


 するとレンガの山が2つに分けられた。


 大浦さんが「建材鑑定」と呟いて何かを読み取ってから俺に教えてくれる。

「元のレンガが80個で、今は40個ずつに分かれてる」


 なるほど、数は減らないんだな。

 さっきのアンマージも数は減ってなかったしな。


 そういえばまだレンガの重さを見てなかったなと、40個になったレンガの山に触れると、今度はレンガがさらに半分ずつに分かれた。


 ……あ、アンマージ終了って言い忘れてたな。

 というかまだ分割できたのか。

 どこまで分けられるかやってみるか。


「20個ずつになったな」


 青く光る手で、20個のレンガに触れると、さらに半分……10個ずつになった。


 それ以降はアンマージ対象ではないらしく分割はされないようだ。


 俺は40個の山をもうひとつ20個ずつに分割すると、アンマージの終了を宣言して、今度はマージを開始する。


 10個のレンガ同士をくっつけると、砂の山になった。


 ……え、石ころより悪化してないか?


「あー、砂か。セメントがあるといいんだがなぁ」


 けど大浦さんの反応を見るに、砂も建築には必要なものらしい。


 20個のレンガ同士をくっつけると、今度は砂利になった。


「砂と砂利とくれば、あとはセメントだろっ!?」


「そうなんですか……?」


「おう、セメントと砂と水でモルタル、セメントと砂と砂利と水でコンクリができる」


 モルタルってなんだろう、と思いながら「へぇ」と答えると、大浦さんはちょっとだけ苦笑して「コンクリートはわかるか?」と尋ねる。


「はい」

「あれのもっと目の細かいのがモルタルな、車止め……駐車場に並んでるこんくらいのブロックわかるか?」

「わかります」

「あれのつるっとしてるのがモルタルでザラッとしてんのがコンクリだと思ってればいい。モルタルの方が目が細かくて綺麗に仕上がるが強度はコンクリの方が上だから、場所や用途によって使い分ける」


「なるほど……」


「レンガを積むにもセメントがいるからなぁ。次は出るか? セメント」


「やってみますね」


 俺はまた大浦さんの手を借りて、えんやこらと『石材』同士を何度も重ねて『レンガの山』を13個作った。

 ちなみに、『石材』は1つ余っている。


「ちょっ、一回、休憩しよう……」

 そう言った大浦さんが、残っていた20個のレンガ山を崩して、俺と大浦さん用にレンガを9つずつ並べて座る場所を作ってくれた。


「はぁー、腹減ったな。今何時だ?」


 言って腕時計をのぞいた大浦さんが絶句する。


 俺が覗こうとすると、黙って腕ごと時計を差し出してくる。

 それは、俺がいつもの電車に乗り込む時刻だった。


 俺は鞄の中からスマホを取り出す。

 スマホの表示も、同じく7時23分だ。


「もしかして、ヨミトキさんが元の時間に戻してくれると言っていたので、その影響でしょうか?」


「あー、神様ってそんな名前だったか? よく覚えてたな、オレはすっかり忘れてた」

 ガハハと笑う大浦さんに苦笑を返して、俺はスマホをいじってみる。


 時間は進まないけどスマホ自体は壊れてないようで、他のアプリも起動はした。

 だけど電波がないから、ローディング画面から進まない。


 電波なしでも使えるものといえば……、カメラ、写真、メモ、電卓……。

 電卓はありがたいな。


 スイスイとアプリ一覧を眺めていると、最後のページに見慣れないアプリを見かけた。

「マージ補助……?」


 思わず呟くと、頭の中に文字が浮かぶ。


 ======

 祝福スキル補助ツール『マージ補助』を利用する際は

『マージ補助アプリ』を起動してから「マージ補助」と唱えてください

 ======


 え、あ……そういうアプリなのか……?


 俺は見慣れないマークのそのアプリを起動する。


 するとそこには【「マージ補助」と唱えてください】とだけ書かれていた。




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