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【マージスキルで簡単クリエイト☆】〜石ころから始める、異世界おてがる開拓記〜  作者: 弓屋 晶都


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高級食材って大体ゲテモノなんだよな

「沢山獲れたんですね」


「早速マージしてみるか?」


「はい、これって俺が全部もらっていいんですか?」


「もちろんだ。良平のために獲ってきたんだからな」


 そんな風に言われると少し照れてしまうけれど、俺のために獲ってきてくれたと言ってもらえるのは嬉しい。


「ありがとうございます」


 はにかみながらも感謝を伝えると、大浦さんは「お安いご用だ」と幸せそうに笑った。


 俺はスマホでバケツの中を撮影する。

 思った通り、丸きり同じような見た目の魚達は全部、俺のスマホの中に収まった。


「ん? なんかイイ匂いがするなぁ」


「桐谷さんが調理スキルでお米を炊いたんですよ」


「調理スキルで?」


 どれどれ、と厨房に向かった大浦さんが扉に手を伸ばした途端、扉がバンと勢いよく開いた。


「あっぶね……」

 大浦さんが一歩後ずさる。


 それと同時に、厨房から飛び出してきた桐谷さんに、両肩をガシッと掴まれた。


「良平君っ良平君っっ調味料がないよぉぉぉぉっ!」


 あー……確かに。

 米を炊くのに調味料は要らないが、おかずを作るとなれば必須だよな……。


「えーと……、調味料を入れるためのものは厨房にありませんか?」


「あるけど……中身は空っぽなんだよ……」


「同じような入れ物が2つあればマージしてみますよ」


 俺の言葉に桐谷さんがポカンと口を開けて、目を丸くする。


「すぐ持ってくるねっ!」


 瞬時に厨房へ引き返した桐谷さんの後に続いて、俺と大浦さんも厨房に入った。


「これっ! 調味料を入れるにしてはあまりに全く同じデザインだなって思ったのよっ!」


 俺の前に、そっくりの容器が2つ並べられる。


「マージ開始」


 唱えて容器を重ねると、浅い木製のトレーに小さめの瓶や壺がぎっしり並んだものが現れた。


 桐谷さんが早速壺の蓋をとって、中を確認する。


「お塩、油、蜂蜜、マスタードに、お酢に……、あっ砂糖があるっ! 胡椒も!?」


「塩に砂糖に胡椒は基本じゃないのか?」


 大浦さんのツッコミに、桐谷さんが顔を上げて厨房を見回す。


「この家って中世ヨーロッパ風っていうか……なんというか現代風じゃなかったから、砂糖と胡椒が高級品だった頃だと、手に入らないかなと思ったのよね」


「ふうん……?」


 大浦さんはわかったようなわからないような反応だ。

 この人は、自分の理解できないこともそのまま受け止めてくれるところが、なんというか大人というか……懐が広いなと思う。


 ただ、古めかしいのは今だけかもしれないんだよな……と俺は口を開いた。


「確かに現代に比べると設備も作りも古いですけど、マージの段階が進むと近代的な見た目になる可能性はありますね」


「はぁ、なるほど、そういうもんなのか」


「えっ!? お味噌に醤油もあるんだけど!? ……っ、ここまであるなら、昆布と鰹節もくれたらいいのに……っっ」


 ギリリと歯軋りをする桐谷さんに、俺はハラハラしてしまう。


 味噌と醤油があって昆布と鰹節がないのは、そこまで屈辱的なことなのだろうか。

 俺にはよくわからないが……。


「おい桐谷、良平が心配してるだろ、まずはお礼が先じゃないのか?」


「あっ、ごめん良平君っ、これだけ揃ったら大体なんでも作れるよ、本当にありがとうっ!」


 ぺこりと勢いよく頭を下げられて、思わず慌てる。


「いえその、お役に立てたならよかったです……」


「あとは……そう……、小麦粉が欲しいよねぇ……」


「欲深いな」


「だって、あとはここに小麦粉と……卵と……牛乳があれば……」


「どんどん増えるな」


「だってぇっ、せっかく美味しそうなカボチャにさつまいもがあるんだよ? サックサクの天ぷらにしたり、スイーツ作ったりしたいじゃない?」


「それに必要なのか?」


「そう、小麦粉と卵があれば天ぷら粉が作れるし、そこに牛乳が加わればパンケーキだってプリンだって作れちゃうわけよっ!」


「ふうん、なるほどなぁ」

 大浦さんは腕を組んで、そんなもんなんだなぁという顔をしている。


 大浦さんって30代くらいに見えるけど、奥さんとかお子さんはいるんだろうか。

 ひとまず、料理に関しては俺と同じくらい素人なんだという気配はする。


 ……本当に、桐谷さんがついてきてくれて助かった……。



「まあでも、これだけ調味料があれば……。うん、夕飯は期待してくれていいからねっ!」


 そう言って、桐谷さんが満面の笑みを浮かべる。


 俺と大浦さんは顔を見合わせて、それから笑った。


 一体どんな料理を食べられるんだろう。楽しみだな。


 桐谷さんはメモを取るためにかスマホを取り出して構えると、言った。

「2人の苦手な食べ物や嫌いな味付けがあったら教えてくれる?」


「オレはなんでも食えるぞ、辛いもんが好きかな。つっても唐辛子もラー油も無いだろ、別になんでも食えるから気にしなくていいぞ。肉も好きだが魚も好きだ。寿司もな」


「あはは、なんとなくわかった、酒飲みなのね!」


 桐谷さんに言われて、大浦さんはどこかバツの悪い顔をする。

 うーん。どうも大浦さんは酒の話題になると苦い顔になるなぁ。


 そんな大浦さんの様子に桐谷さんが気づく前にと、俺は慌てて口を開いた。


「俺は…………ぁー、いや、あんまり辛すぎる物じゃなければ、食べられます」


 桐谷さんが途端にじとりと半眼で俺を見る。


「……良平君は、なんか苦手な食べ物があると見た」


 うっ、なんでそれを……。


「ええと、その……ピーマンとかセロリとかは、ちょっと……苦手ですが、頑張れば、食べられますよ……?」


「かっわいぃっ!」


 今の発言にどこか可愛い要素があっただろうか?


 いやまあ、確かに幼稚だなとは思う。

 高校生にもなって、苦い野菜が苦手だなんて。


「今のとこピーマンもセロリも出てないから、黙っとこうと思ったわけね?」


「う…………、はい……ごめんなさい……」


「あはははっ、謝るとこじゃないけど、なんかかわいいなぁと思って。ちゃんと覚えておくから、もしこの先料理に使うことがあっても、避けやすい形か、苦くないようにして出すねっ」


 出さないとは言わないんだ……。


 俺はそんな感想を呑み込んで「ありがとうございます」と答えた。


「私はねー、食べるのが趣味でなんでも食べるから、周りからはゲテモノ喰いって言われてるんだぁ。野うさぎも野鳩も、虫とかカエルの調理経験もあるから、なんか食べられそうな物が獲れたら遠慮なく持ってきてね! あとスイーツも大好きだよ、女子だからねっ」


『虫とかカエル』という単語のインパクトが強烈過ぎて、後半の『スイーツ女子アピール』は俺の脳内を完全に素通りした。




 ……魚をマージしていって、もしカエルができてしまったらどうしよう。




 桐谷さんには絶対に内緒にしておこう。


 そんなことを、俺はそっと心に決める。




「あー、ウシガエルなら前に食ったことあるな。普通に鶏肉っぽい味だった」



 なんだって!?


 まさかの大浦さんも食べたことがあるなんて……!?



「鶏肉っぽさに加えて、白身魚っぽさもあるから美味しいよねっ」


「まあ、カエルって言われなきゃ何とも思わない味だな」



「そ、そうなんですか……?」


 つい、おずおずと尋ねてしまう。


 いやだって、……カエルだぞ?

 俺はずっと、カエルは食べ物じゃないと思って生きてきたのに……。



「うん、高級中華料理店とかフレンチレストランとかでも扱ってることあるよ。食材としては高級食材だもん」



「えええ……」



 どうしよう……。


 本当に……。



 マージでカエルが出てしまったら、俺はどうしたらいいんだ……。



「そんな困った顔しなくても、良平君が嫌なら食べなくていいんだよ?」


 俺はそんなに困った顔をしていたんだろうか。

 桐谷さんがクスクス笑いながら宥めてくれる。


「桐谷に、調理しないって選択肢はないんだな」


「だって美味しいもん。高級食材だよ?」


「高級食材って大体ゲテモノなんだよな」


「それって褒め言葉なんだよね?」


「良いように取ってくれ」


「まあでも、しばらくは動物性タンパク質は望めそうにないよねぇ……。雑草取ってる間も、虫の一匹すら見つからなかったし」


「魚がいるだろ」


「この世界の最初で最後の生き物をそんなパクパク食べたら、今度こそ絶滅しちゃうよ。タニシくらいなら、ある程度増えたら獲って食べたいねぇ」


 タニシ……。


 ってあの、巻貝だよな……?

 ……あれも……食べるのか……?


 想像しただけで、そのグロテスクさにサーッと血の気が引く。


「ちょっと、良平君引かないでねっ!? タニシは日本でも昔から食べられてる郷土料理だよっ! ちょっと地域差はあるけどっ、食べる地域では魚屋さんで売られてたりするし、桃の節句にタニシを食べてた地域がいくつもあるのよっ」 



「……そ、そうなん……ですね……」


 お、俺の知らない日本だ……。



「桐谷、その辺にしとけよ。良平ドン引きしてるじゃないか」


 大浦さんは俺達をかわるがわる眺めて、クククと喉の奥で笑っている。


「ええー?」


「そんじゃ桐谷、夕飯期待してるからな。良平、ちょい付き合ってくれ」


 俺は大浦さんに肩をポンと叩かれて、そのまま背を押されるように厨房を後にした。


 隣の部屋に入った途端、俺の背を押していた大浦さんがぴたりと足を止める。



「なんだぁ? 食堂にバスタブが……?」




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