第005話 いろんな事を知りたい、そしていろんなモノが欲しい
久しぶりに帰ってこれました。
会社の部内異動でバタバタしてたり、「棒茄子」が入ってウハウハしてましたのでね。
と言う事で足で立つという実績を解除したエドワード。
そろそろ実際にやらなきゃいかん事を探そうと、興味が部屋の外へと向かいます。
今世の両親に「初立ち」を見せる事もなく、どんどん勝手に成長するエド。ベッドには箱で組み合わせた階段も作られ、部屋のドアノブはエドが届く範囲に下げられた。
窓に面した机の上は何も置かれず、大きめのクッションを置いてエドが上がってきた時にゆったりできる様になっていた。当然机の周りはもしものことを考えてクッションだらけになっている。
生まれて半年が過ぎると、バランス良くトテトテと歩き回るエド。親父殿もかーちゃんも最初は後ろを付いて回って、ハラハラしていたが、段々と我が子の成長の速さに慣れてしまっていた。親父殿が休みの日なんぞ、居間で寛いでいる親父殿の周りをトテトテ歩くエドの姿はもはや普通の光景となっていた。
「あーばー(お外、行こー)」
窓の方を指差してエドが喋ると、カークはソファから立ち上がり、エドを抱き抱えて窓際へと向かう。
「エド、お外が見たいんだね?」
「あーぶー(そうじゃなくって、外出たいの!)」
ワシも最近じゃひとりぼっちの時に、どれだけ喋れるかを練習しとって、まあまあ口が動く様にはなって来とるんじゃが、余りの饒舌に外野から突っ込まれての。仕方なく舌っ足らずな喋りに徹しておるんじゃ。
エドの反応を否定と捉えたカーク、エドを抱えたまま居間から庭に出るドアを開けて、エドを外に連れ出した。
「あーーあー(ああ、娑婆の空気は美味いぜ)」
『ねえねえねえ、貴方、真っ当な堅気の技術者だったんじゃ無いんですか!なんでそんなムショ暮らしの長い犯罪者の様なセリフを吐くんですか』
五月蝿い、実際問題、家ん中の空気はいくら換気とかしても澱んでおるわ。それから比べたら外の空気は美味いんじゃから仕方あるまい?
カークに抱っこされながら、エドは屋敷の庭を散歩する。小さい庭である。半分は畑となってて色とりどりの野菜が実を付けている。まあ貴族さまになっても平民時代の暮らしの癖はそうは簡単に抜けたんじゃろな。
奥には厩と作業場、そして井戸が見えた。一応、騎士団長であるので自分専用の馬を持っているらしい。そして井戸、やはりではあるがつるべ式の使いにくい井戸だ。
こうして屋敷の中だけでも、改善するところが出てくるのぉ。まずは井戸にポンプを付けて水汲みを楽にしたいし、台所の竈も何かで改善出来んもんじゃろか?生活の向上こそこの世界には必要じゃな。
まあ、前世の様に蛇口を捻れば水が出るとか、火も使わずに調理出来るIHなんてのはオーバースペックなのは分かる。だが、この分だと生活に労力を割き過ぎて、ゆったりとした生活なんて夢のまた夢じゃ。昔は田舎でスローライフでもと思った事もあったが、それも水道・電気・ガスがあっての話だったでのぉ。こんなつるべ井戸で水を汲み、薪の竈で飯を作るなんざ、スローライフとは真逆じゃな。
家の中も知りたいが、出来れば家の外、色んな人たちの生活も覗いてみないといかんぞ。さて、どーやって仕向ける事にしよう?
家の外に出かける頻度が最も多いのは当然ながら親父殿だ、かーちゃんは殆どと言って良いくらいに家からは出掛けん。買い物、特に食料はどうしておるんか?と思ったら、曲がりなりにも男爵で騎士団長な親父殿には従者が付いているらしい。買い物系は全て従者に任せておるようじゃな。
(後で知ったが、ワシが生まれるっつー事で慌てて従者を募ったらしい。それも仕方ないか、元は平民の考え方しか出来ん訳じゃし)
であるならば、家の外の世界を知ろうとすれば、親父殿に着いて行くしか無いんじゃが、まあ騎士「団長」と言う事もあり、平和であれば騎士団の庁舎で書類仕事に追われているのが実状だとか。ああそうなんじゃよ。出世するとな、現場が遠くなって行くんじゃ。
さてそろそろ喋れると言う風に持っていかんと、先に進まんな・・・。
あの外野の言うには、普遍的な生活の発展が必要だが、魔法があることでそれが阻害されているという。とりあえずは、我が家を「魔改造」(という名のリフォーム)をして、この世界でどれだけ受け入れられるかのリサーチせなかんのぉ。
つるべ式の井戸は、深い地下水には対応できん。ならば手漕ぎポンプを作るのは必須だな。そして、家の片隅で「臭う」便所(という名のおまる)。おむつからアレに移行するのは勘弁してほしい。ならば水洗トイレか、それの流末は垂れ流しではだめだ。ならば簡単な浄化槽も必要か。
やれやれ、我が家だからそんなに規模は大きくなくていいだろが、結構面倒じゃのー。また、ステータスウィンドウであれこれ調べものか。この歳になってまた、あれこれ調べもんするのも大変なんじゃよ。
昔なら、そこらに転がっておったメモ紙と鉛筆で、調べたことをメモ出来たが、この世界じゃワシの知っとる紙っちゅーもんがまだ無い。鉛筆もそうじゃ。とにかく無いない尽くしのこの世界。
ああ、なんか前世に有ったものが悉くなさすぎて、とても辛い。
そうだ、こんな時は「おっぱい」だな。
『色々とまじめに考えてるかと思いきや、行きつくのはやっぱりそこですかいw』
『やかましい、今のワシが一番欲しているのは、おっぱいなんじゃ。それのどこが悪い?』
『でも、我が家を使って技術導入のテストをするのは、とても大事で良いことですね』
『ああ、前世でもモデルルームを見て、家を買っておったからの。まあ、モデルルームとは似ても似つかぬ家になってしまうのがオチじゃったが』
『よろしく頼みますよ。その辺りで必要なスキルを見繕って付与させていただきますので』
親父が抱き抱える乳飲み子が、頭ん中で年齢不相応な事を考え、創造神と喋ってるたぁ誰も気付かん。今現在は平和な時間が流れるリッチモンド家であった。
さて、まずは我が家を「モデルルーム」にしようとするエドワード。
でも、何にも無い尽くしなこの世界。どうやって「劇的ビフォーアフター」するのか?




