第019話 新居内覧・2階
男爵への蔣爵に貰った、カークの新居。
5年も放置プレイしてましたが、エドが色々「やらかす」のに丁度いいだろうと、ようやく内覧へ。
1階の次は2階ですね。
ホールからの大階段を上がっていくと、最初の部屋に通される。
「こちらが、主人の寝室となります。階段を挟んで同じような部屋が有りますが、そちらは夫人用です」
ベッドの他に小さなテーブルセットもある。ここが個人的な部屋になるのか。
「うう、こんな部屋で寛ぐ俺が想像できない・・・」
根は庶民な親父殿。こんなに豪勢な居室が自分のものだとは、信じられないようだ。
「大丈夫ですよ、いずれは慣れますから」
ダグラスもそっけないのぉ。あ、ダグラスも苗字持ちだったな。と言うこては爵位を持つ家の嫡男か。なら、これくらいの家なぞ当たり前なのか。道理で案内が慣れてるはずじゃ。
廊下をぐるっと回ると、扉がたくさんある。
「一番左の手前が使用人の控え室、その奥に連なるのが子息の居室に。右側の両脇は居室に使える部屋で、真ん中にあるのはトイレです。こちらのトイレは家族用ですので、先ほどよりは華美な装飾などありませんがね」
そう言いながら、ダグラスは子息用の居室と言った、部屋の一つにワシらを案内する。
窓際にベッドと小さな机が置いてある。前世で考えると八畳ほどの広さか。子供部屋にしてはぜいたくじゃの・・・。あれ、そう言えば子息用にと言っていた部屋は3つじゃな。あ、ワシの分がないぞ。どこかに確保せねばならんな。
「ちなみにトイレの奥には、風呂があります。見て行かれますか?」
ダグラスの声に思わず、
「はい、見たいです!」
と声を上げると、早速ご案内~。どんなものかと思ったが、だだっ広い部屋の中に猫足のバスタブがあるだけ・・・。ああ、風呂文化の「異常な」発展は日本だけじゃったな。
「さて、あとは3階ですが、そちらは使用人の部屋になりますが。見て行かれます?」
ダグラスもそろそろ、こんな仕事を終わらせたい様だ。
「一応、見てみたいです」
と、ワシが言うので「まだ、見るのかよぉ~」と言う表情で、ダグラスは案内してくれる。
狭い階段を上がると、6部屋程の居室があるだけだった。一つの部屋は四畳半ほど。居室の中に「おまる」が鎮座しているのを見ると、いくら使用人でもコレはないじゃろうと考える。
一通り内覧は終了したので、一度玄関ホールまで戻る。
「団長、こんなところですかね。主人の書斎と応接、それから寝室にはある程度家具が入ってますが、あとの部屋には基本的なものしかありませんので、そちらのご用意はお願いしますね。あと、こちらが間取り図です。入口などの寸法も書いてありますから、家具を買うときに参考になるでしょう」
そこまで言うとダグラスは、まだ騎士団での仕事がありますので。と言ってさっさと馬に乗って帰ってしまう。ああ、また何かやらかす瞬間を見させられるとでも思ってんのか?
ダグラスが帰って、ワシと親父殿だけが残される。
「さてと、しかしまあ、でかい家だなぁ。確実にメイドでも雇わないと、日常の生活が面倒になるな」
ホールをぐるりと見渡しながら、親父殿は呟く。
「なら、雇うしかないでしょ。どうせ貴族の端くれになったのです。少しはそういう生活を覚えることも大切では?」
「ふっ、子供にそのように窘められるとはなぁ。俺も、そろそろ引退だな」
ほんとかどうかは分らんが、少しだけ弱音を吐く。
「とりあえず僕が大人になるまでは、却下ですね」
「んとに、お前は1歳児と思えん。まあ、仕方ないか俺よりも年上で人生を終えたと言う事だし」
「ええ、それで納得してください」
そう言われると、親父殿はがっくりと肩を落とす。
『さてと、ようやく貴方の望む舞台が手に入りましたね』
『おお、ガイアか。そうじゃな、あの家に比べればいじりがいがあるな』
ひょいと会話してくるガイアに、軽く返事を返すワシ。
『ひとまずどのような改造をするつもりですか?』
『前世100%とは行かんじゃろうが、かなり手を入れるつもりじゃ』
脳内では腕組をして、どうしてやろうか、ニヒヒヒ・・・と笑っておるワシ。
『そうですが、ではどのような能力が宜しいですかねぇ・・・・』
『まずは、ちゃんとした設計図を作りたいな。でないと場当たり的な改造になってしまうので、後々面倒になるでな』
そうそう、今持って居るスキルじゃチト足りないの。図面は書きたい。でないと、ワシ以外の誰かに理解してもらえんでの。
『では、貴方の世界にあったCADという奴を、脳内で扱えるようにしますか』
キャ、CADだと。
『を、CADかぁ・・・・。昔少しだけ使わされたが、面倒じゃったなぁ。ワシには烏口とドラフターがお似合いじゃわい』
昔の技術者だったでの、図面は紙に描くのが性に会っとる。
『でも、脳内で考えるだけで動きますから。それに設計図が出来た時点で、力学計算もします。どこを補強すればよいとかも一目瞭然ですよ』
『なぬ、そこまで出来るとは?』
『あと、出力するのは貴方の腕になりますが、それでも正確な図面を出力出来ますよ』
頭ん中で、図面を思い起こし、ワシの手で狂いのない図面出力か。まさにチートなスキルじゃわい。
『なら有難い、そのスキル貰っとこうか』
『あとは、貴方に渡したスキルの補足ですが、モノを作り出すのは「どこでも」出来るのです。例えば壁の中にも』
『壁の中にもだとぉ?』
『水を通す管も、壁の中に作りこめます。出来上がりは脳内のCADが描き出してくれます。なかなか面白くはないですか?』
あのクリエイトとやらは、そんなインチキまがいの事まで出来るんか。それなら壁を壊さずに配管工が出来る。その方が仕事も早く進むわ。
『ほほほ、そりゃ有難いわ。家の改造もワシ一人で出来てしまうではないか!』
『ですが、あのスキル。とんでもない使い方も出来るのに気が付きませんか?』
ガイアは、ちょっと声のトーンを落とす。
『ほう?とんでもない使い方じゃと?』
『例えば、貴方の前世に有った手榴弾。あれを魔物の体内に「クリエイト」して爆発させれば・・・』
そうか、壁の中でも「クリエイト」出来るなら、身体の中でも「クリエイト」出来ておかしくはないか。それにあのクリエイトはワシにある程度の知識があると、何でも作り出してしまうでのぉ。
『・・・・えげつない事になるな。それじゃ戦闘的な魔法なんぞ要らんくなる』
『まあ、あのスキルを使いこなすにはバカみたいな魔力が要りますし、それに手榴弾を知らないと作り出すことも出来ません。貴方を信用してますよ』
そうそう、魔力が要るんだったな。でもワシは?そのバカみたいな魔力持ちだが。
『ああ、今のところはやらんぞ、今のところな・・・。何かあったら、小さなげんば・・・』
『それはダメーーーーーーーーっ!確かに貴方はある程度の構造を知っておいででしょうから、ソレ作ったらホントにこの世の終わりですからね!』
『分かっとるわい。大体、ワシがバカみたいな魔力持ちでも、アレはそうそう作れるわけが・・・』
『残念ですが、作れます』
・・・・・なんか、ワシ。自分で自分の事を「人外」と呼びたくなったけど良いかな(泣
「さて、エド。これからどうする?」
親父殿から話しかけられて、ガイアとの念話を断ち切る。
「ひとまず、中は分りましたから、外の様子を見ましょう」
と言う事で、ホールから台所へと移動し、勝手口から裏庭へと出る。
玄関先の庭も結構な広さであったが、裏庭はそれ以上に広い。
「裏庭ってこんなに広いんですか?」
「ああ、広いというわけではない。厩とかの必要な建物がないだけだ」
あ、そうだった。確かに見渡しても井戸くらいしかない。騎士団の団長である親父殿の家であれば、厩に世話する人の小屋とかもないといけない。それがないとこんなにも広いのか。
「あれ、あの階段は」
「あれは、地下の貯蔵室の入り口だな。行くか?」
外にある地下への階段を降りる。扉を開けると、中は少しじめっとして空気も重たい。
明り取りの窓はあるものの、換気する為の窓ではないから、地面の湿り気がじわりじわりと地下室に充満しているようだな。これじゃ食料を貯蔵してもいずれ腐ってしまうわ。
「父上、ちょいと力を使いますがびっくりしないでくださいよ」
「あ、ち、力を使うというのか?あまり無理はするな・・・」
親父殿が最後まで言い切る前に、ワシは明り取りの窓に向かって手をかざし、「クリエイト」と唱えた。
前世で使っていた換気扇、あいつをこさえてみた。
ぶーん・・・・。
無骨なデザインの換気扇が、地下室のよどんだ空気を外へと吐き出している。
「な、なんなのだ。あのくるくる回るものは」
「あれですか、換気扇と言って、部屋の空気を入れ替えるのに便利なんですよ」
ちなみにアレ、さすがに電気で動くモーター・・・。と言うわけにはいかないので、頭ん中で魔石の魔力を使って回る魔力モーター(みたいなもの)を想像してクリエイトした。これなら、この世界でも何とか作り出せるだろ。
「あ、明り取りの窓をつぶしたから、地下室が暗いな。じゃあもう一つ」
ワシは暗くなった地下室の天井に手をかざし、またもや「クリエイト」と唱える。
前世でようやく使われ始めた、LED照明の様な、白くて少し冷たく感じる照明が、天井のあちこちに出来上がり、地下室を一定の明るさで照らし始める。
「こ、この明かりはなんだ?今までの魔力ランプとは違う、綺麗な明かりだが」
続けて出てきた、ワシの「クリエイト」品に親父殿は、語彙力を喪失しつつある。
うーん、最初からこんなペースやと、ワシが色んなモン「クリエイト」するたびに、親父殿ののーみそのシワが無くなって行きそうじゃの。
エドの頭の中には、まだまだたくさんたくさん「クリエイト」したい事があるのに、前途多難だな。
いよいよ、創造神から貰ったスキルで、作り始めました。
だけど、換気扇と照明だけ・・・。ええ、まだまだ作りますよ。




