第018話 新居内覧
いよいよ新しい家を見物できる!と大喜びのエド。
朝もかーちゃんに起こされる前に起きてきましたが、親父殿は・・・
気持ちの良い朝である。
ワシはかーちゃんに起こされる前に、パチッと目が開く。
やはり子供は楽しい事があると、早起きになるのだ。(ジジイになると、早起きすぎて迷惑がられるが)
扉が開いて、クロエがワシを起こしに来たが、すでにベッドの上に起き上がっているワシを見て、
「エドー、今日は自分で起きれたのね。あーあ、おねーちゃんの仕事が無くなっちゃったなぁ」
ははは、クロエの奴。そんなところで「おねーちゃん風」を吹かせたかったようじゃな。
しょげて部屋を後にするクロエを追いかけるように、ワシも部屋を後にする。
食堂にはすでに親父殿が席についていた。ただ、昨日と同じように頭を抱えて痛そうにしておる。昨日、言ったはずじゃがの。飲み過ぎて三日酔いになるなよ。って、
台所から朝飯を運んできた、かーちゃん。そんな親父殿を見て、
「まーた、飲み過ぎたのね?ったく、男の人ってどうして飲み過ぎて失敗するのを、覚えていられないのかねぇ?」
「父上、飲み過ぎは良くないです」
「父上、酒を飲むのは良いですが、飲まれてたら元も子もないですよ」
かーちゃんは呆れ、クロエは純粋に心配、そしてワシは辛辣wうん、何か昨日も見た光景じゃな。
「ああ、分かってるよ。分かってるんだがなぁ・・・・」
ああ、ワシも分かるぞ。昔も飲んじゃダメなのに・・・と思っておってもな、つい、飲んでしまうんじゃよ。だが、2日連続ではチト説得力がないがの。
「エレナ、悪いが・・・・」
「昨日もスープだけだったでしょ?今日はしっかり食べておきなさい!」
そう言って、かーちゃんは親父殿の前に朝食を並べていく。
かーちゃんの圧に負けた親父殿は、しぶしぶ朝食に手を付ける。
他は、そんな親父殿を放っておいて朝食に取り掛かる。
朝食を済ませたワシはさっそくお出かけの準備である。クロエがそれを見て、
「あー。エドったらまたお出かけなのぉ?」
あまりお出かけさせて貰えないクロエは、少し駄々をこねるような口調ですねる。
「父上との約束ですから・・・」
ワシはすねる矛先を親父殿に振る。
さっさと支度をしたものの、相変わらず親父殿の表情は冴えない。
だが、ワシの顔を見ると、
「さて、エド。今日も出かけるか」
「はい、父上」
促されるままに、馬の背にまたがり家を後にする。
暫くは親父殿は無言で馬を進める。さすがに2日連続で深酒すりゃ、なんも考えれんわな。自業自得じゃ。
「エド、昔はどういう風に迫りくる問題を解決していた?」
ふいに親父殿がワシに話しかける。
「問題の解決、ですか?そうですねぇ、まずは吞まない事」
「ぐはっ」
いきなりの正論に、親父殿、息が詰まった。
「呑む暇があるのなら、問題だと思ったことを書き出します。そうして絡まった問題をほぐして、一つずつ地道に考えるんですよ」
「・・・・」
「呑んだら、問題の解決は先送りなだけです」
親父殿は、諦めの表情になり、
「分かってはいるんだがなぁ。ああ、戦であれば「ぶちかます」だけで済むのに」
つくづく戦人なんだなぁ。まあ、それを言ったらワシも前世じゃ、技術者でしかなかったでの。あまり言えたもんではないわい。
二日酔いの痛む頭のまま、親父殿は騎士団の庁舎へと到着した。あれ?今日は新居に行くんでは。
「新居の鍵はダグラスに預けてある。ついでにあいつも一緒に連れて行くか」
あー、ダグラスさん。この前のダメージから回復しとるじゃろか?
執務室に入っていくと、この前と同じように4、5人の騎士が事務仕事に没頭しておる。必死に机にかじりついているのを見ると、つくづく事務屋にはなりたくはないと思う。そんなかじりついている中にダグラスも居る。ふむ、見たところおかしいところはなさそうだ。この前のダメージは回復できたんじゃろな。
「おはよう、ダグラス」
「おはよーございます、ダグラスさん」
机に突っ伏していたダグラスは、声を聴いて飛び上がる。
「お、お、お早うございます。団長、それにエドワード・・・・」
ありゃりゃ、ワシの顔見た瞬間、額に冷や汗が湧いて来とるぞ。阿新しろ、今日は何も起こらん・・・はずじゃ。
「ダグラス、俺の新しい家の鍵はあるか?」
「はい、こちらにあります」
机の引き出しを開けて、大きな鍵束を出すダグラス。ごっつい鍵がたくさんあるのぉ。
「よし、では新しい家でものぞきに行くか」
「ああ、ようやく領主様の褒美を受け取る覚悟が出来たのですね」
ダグラスは今まで、領主様と親父殿の間でのやり取りに関わっていたのだろうか、やっと仕事が片付いたという安どの表情を浮かべる。
「・・・まあ、致し方ない理由もあってな。お前も一緒に来い」
「げっ!わ、私もですかぁ?」
鍵だけ渡して終わり。と思っていたダグラス。親父殿の「付いて来い」発言に本音を漏らす。
「お前が居ないと、家の中が良く分らんからな」
そっけなく言う親父殿。ダグラスの表情は「今日も何かあるのか・・・」とげっそりしておる。おい、そうそう「ぶちかます」つもりはないんじゃがなぁ。
「済まないが、また私用が立て込んでいてな。今日は貴族街にある俺の家にいるつもりだから、何かあれば馬を回せ」
そう言って、執務室を後にする親父殿。がっくりと肩を落として後ろに付いていくダグラス。そして、新居内覧にウキウキのワシ。
町中を馬で進む3人。後ろに仕えるダグラスはどうにもこうにも、落ちまくっている。誰じゃ、あそこまで落ち込ませるのは。
『ご自覚がないようなので申し上げますが・・・・』
やかましい、それくらい判らいでか。
騎士団の庁舎から5分ぐらい馬で進んだところで、ダグラスが止まる。親父殿もダグラスが止まったのに気が付いて馬を止める。
「どうした、ダグラス?」
「団長、こちらですよ。団長が領主様から頂いた邸宅は」
ははは、親父殿、どうやら貰った家の位置すら覚えてなかった様だ。
目の前には小ぶりではあるが、格式高い2階建て?いや屋根が高いから屋根裏部屋もありそうだし、3階建てなのかな。立派な邸宅が立っていた。門から玄関までの間の石畳の両脇には、季節の花々が咲いている。
「領主様から「あいつは何時になったらあの家に住むつもりだ。いい加減、維持費の事も考えて貰わんとな」と愚痴られてましたが、ようやく肩の荷が降りそうです」
ダグラスは忖度なしに親父殿に本音をぶつける。親父殿は苦笑いしながら、
「それは俺も同じだ。事あるたびに「早く引っ越して男爵らしくしろ」とな。とは言え元は平民だし、なかなか今の家にも愛着があってなぁ」
「愛着と言うよりも、面倒くさいと思ってただけでは?」
グサッ!
ダグラスの言葉が、地味に親父殿の胸に刺さったようで、親父殿は右手で左胸を押さえる。
「ま、まあ。これからはちゃんと住むわけだし、こっちで手入れはするから安心したまえ」
そうか、この家を貰ってから5年?も放置プレイは不味いだろうし、ちょくちょく誰かが手入れに来ていたんだろうな。そんな面倒くさい仕事をダグラスは担当させられてたのか。ご苦労様。
玄関前で馬を降りると、ダグラスが鍵束から鍵を選んで扉を開ける。
「こんないい物件を5年もほったらかしにするなんて、勿体ないですよ」
玄関を入るとそこは吹き抜けのホールであった。目の前に大きな階段があり、途中の踊り場には誰かの肖像画が掛けられている。
「父上、あの肖像画に描かれているのは?」
「あの方か、わがユーレナ王国の初代国王である、マルグリット・ド・ユーレウス様だ。大陸西部に群雄割拠していた小領主たちを纏め上げて、今の王国の礎を築かれた方だ。魔力もすごくてな、王自ら軍の戦闘に立って、諸国を統合したのだ」
ほう、肖像画を見ると、ただののほほんとした爺様っぽく見えるが、あれは晩年の姿じゃろうな。
「普通であれば、先祖の肖像画でも飾るのだろうが、残念ながら俺が初代リッチモンド男爵なんでな。っ飾る絵がないのだ。エド、お前が代を継いだら俺の肖像画でも飾ってくれるか?」
親父殿は、次の世代たるワシに無理難題を押し付けようとしておる。
「そうですね、では母上のおっぱいに鼻の下を伸ばしている、父上の肖像画でも描いて貰いましょうか」
また別な意味で、グサッと胸に何かが刺さった様だ。
「あのなぁ・・・・」
『どうせなら、家族の肖像画でも良いのでは?あなたは母上に抱かれて、おっぱいに鼻の下を伸ばしている・・・・良いですねぇ』
こらぁ!ガイア!おま、なんつー返しをしてくるんじゃ。
「まずはこちらです。こちら主人の書斎と応接になります」
ワシと親父殿を完璧に無視したダグラスは、ホール左側の扉を開ける。
そこは窓を背にして置かれた執務机に、こじんまりとしたソファセットのある、まさに主人の為の部屋だった。
「これが、俺の部屋か・・・・。ちょっと豪華すぎて馴染めなさそうだな」
「大丈夫です、いずれは慣れますよ」
親父殿は、あまりの豪華さに呆然とするが、ダグラスには関係ない話。
「執務室の奥の部屋ですが、今のところ何もありません。どうお使いになるかは団長次第です。客人のお泊りになる部屋にでもお使いになるのが宜しいかと。では次はコチラです」
なんか、ダグラスが有能な不動産屋に見えてくるな。
続いてはホール右側にある部屋。こちらは、
「こちらが、メインの応接室ですね。一般的な客人を迎えるなら、こちらが良いでしょう。執務室の応接は特に関係の深い方だけにするのが宜しいかと」
「あ、ああ。覚えておこう」
「団長なら、メイドと執事くらいは雇えるのでは?雇ってそちらにお任せする方が良いですよ。団長も貴族の端くれでしょう?そろそろ堅苦しい事も覚えていただかないと」
続いて応接室の隣を案内される、こちらは?
「こちらが食堂です。普段使いでも客人を招いた時でも使える程度には、広いと思います」
おお、なんか昔TVか何かで見た、長いテーブルが真ん中に置いてあるの。
「食堂の奥はメインの台所です」
食堂わきの扉から通されたのは、大きなかまどの有る台所だ。
「台所の奥には、洗濯部屋、そして使用人用の台所、使用人の控室と連なっています」
そこまで案内されると、また廊下に出る。そして家の真ん中にある部屋の扉を開けて、
「こちらがトイレです」
こ綺麗に整えられ、大きな鏡もある部屋。その中にはあのおなじみの「おまる」が鎮座しておる。
「こんなに広い部屋で催すのも何となく落ち着かんな」
「一応、客人もお使いになる設計ですから」
親父殿の戸惑いにそっけなく返すダグラス。おま、前世は有能な不動産屋だったんじゃろ?
「1階はこんなところです。では次は2階ですね」
ダグラスの先導で、ホールにある大階段を上るワシら。
さて、2階はどんな風になっとるのかのぉ?
改めて、中世の貴族の屋敷の間取りはどうなってる?と調べましたが、簡単に情報も手に入らず。
大体の割り振り方などが分かったので、勝手な想像で部屋割りをしてますが、どうでしょう。皆様には頭の中で想像していただけるでしょうか?
そして、長くなりそうなので、階ごとに分けて書いていこうと思います。




