第017話 人外認定されたけど、やっぱり子供ですよ
教会で無事に「人外」判定されたエドワード。
教会からの帰り道の途中、親父殿には自分の前世の事を少しだけ話しました。
そして一番重要なのは、親子そろって「おっぱい星人」だった事が露呈。
そんなんで普通に生活することは出来るのでしょうか?
教会から、途中寄り道しての帰り。
いつもの時間ぐらいに家に着いた、エドと親父殿。
早速、かーちゃんとクロエのお出迎えです。
「おかえりなさい、今日はいかがでした?」
かーちゃんにそう尋ねられて、親父殿は、
「ああ、司祭様の有難いお話を聞いて、少しはエドも大人しく立派な人間になると誓いを立ててくれたよ」
そうごまかす。クロエは、ワシを捕まえて、
「エドー、ちゃんと父上と母上の言う事は聞くんですよぉ」
と、お姉ちゃん風を吹かしてくる。
「分かりました、おねーさま」
ここは大人しく従順な姿勢を示しておくのが無難じゃ。
家族揃って、家の中に入り親父殿とワシは、装いを解く。かーちゃんとクロエは台所の方へと向かった。晩飯の準備じゃな。
「エド、また今日も家族会議だな」
装いを解きながら、親父殿はワシに話しかける。ワシは内心「えー今日も?」と思いながらも、
「昨日の今日で話す事なんてあるんですか?」
とぼやいてみると、
「とりあえずはお前の持ってるスキルがある程度分ったんだ。エレナにもどんなものなのかを理解してもらわないといけないし、クロエもそうだが学園に行ってるベアトリスとエリザベスにも、どこまで話すべきかを考えないとな」
親父殿は、そこまで言ってため息をつく。
「それに、お前のやることは生活する環境を良くする事だろ?」
「そうですね、今は自分の周りから色んなものを改善していこうかと」
「ならばだ、この家ではちょっと面倒ではないか?」
親父殿の言葉に、ワシも思わず考えてみる。確かにこじんまりとした家なので、いじろうと思えばコンパクトにいじれるのだが、いずれは手狭になるのは目に見えている。どうせならある程度の大きさのある家で「ビフォーアフター」やれれば、越したことは無い。
「まだ、これは誰にも喋ってないのだが、男爵位を頂いたときに辺境伯から家を貰っているんだ」
これは爆弾発言!
「え、爵位を貰うと家が貰えるんですか」
「厳密には、この家は男爵が住むにはふさわしくない。ある程度の体裁を整えるために、それなりの家を用意したから引っ越せ!と言われ続けてるんだ」
ああ、そうじゃろうな。前世も部長とかそれ以上になると、ある程度の家でないと恥ずかしかったでの。ワシゃその点、工場長で止まったから、家の体裁なんぞ考えたことがなかったの。
「それに今住んでる家を、住みながらいじるのも大変だろ?どうせなら新しい家を住む前にいじった方が、お前もやりやすいだろ。その引っ越しの話もしたいんだ」
「それは良いと思います。僕も魔法を色々使わないと無理だと思うので、あまり他人に見られたくないですから」
「家族でも、見られてはまずいところだらけだしな。お前の魔法は」
親父殿は、ワシの肩に両手を置き、目線を下げて、
「楽しみにしてるぞ。前の記憶から作る、お前なりの素晴らしい家を早く見たいものだ」
そう言って、にっこりする。こりゃ、期待度高いな。ヘタなもん作れんくなったぞぉ。
暫くして、夕食の時間になり、家族でテーブルを囲む。
昨日の今日でまた家族会議をすると決めたせいか、親父殿は口数少なめである。手早く、食事を済ませると、かーちゃんに、
「悪いが、今日もちょっと話がある。支度が済んだら部屋まで来てくれ」
と話しかける。かーちゃんは、
「あら、またですの?」
と言うだけで、特にこれという反応はしなかった。まあ、昨日はガイアの顕現を食らっておるでの。お話合いといっても、動じなくなってきたな。
ワシも食事の後は一度、自分の部屋へと戻ることにする。
ベッドに横たわると、親父殿の言っていた新しい家が気になって仕方がない。この家よりも広いのは間違いないだろうし、一応「男爵」として客人を迎える可能性もあるだろう。それに今はなによりも、新しい家をどうやって「ビフォーアフター」してやろうか。そればかりが頭に浮かんで仕方がない。
「まずはトイレだよ。あんなおまるなんかで頑張れるわけがなかろう。水洗でなおかつウォシュレットも欲しいところじゃな。そうなると水の使用量が増えるから、手漕ぎポンプじゃ間に合わんの。どうせならもう少しいいやつを作ってやるか。水が苦労なく使えるなら、風呂も作りたい。ああ、下水処理もやらなきゃいかんの。なんちゃって浄化槽も必要じゃし、うーん考える事が一杯だわ」
ってな感じで、あれこれ考えていると、部屋のドアが開いて、親父殿が呼びに来た。
ベッドから起き上がって、昨日と同じ親父殿の部屋に。今日はかーちゃんが先に来ておった。
「さてと、二日連続で話をしなきゃならんとは思わなかったが、仕方がない」
そんな切り出しで、家族会議は始まった。
「教会で司祭にエドワードの聖別をやってもらった」
「え、聖別って3歳にならないと受けられないんじゃ」
かーちゃんは聖別と言う言葉に反応した。
「ああ、普通はな。でもエドワードは普通じゃないだろ?だから特別に、な」
「で、どうでした。結果は?」
淡々と話す親父殿にグイグイ迫るかーちゃん。そりゃそうだな、我が子の聖別の結果は、将来を左右するでな。
『将来を左右ですか。貴方の将来と言うより、この世界の将来な感じもしますが』
をい、ガイア。要らん突っ込みは要らん。
「創造神様が神の依り代と言ったろ?まさにそれを体現する結果だったよ」
「え・・・・」
「まさかの全属性持ち、魔力量も魔王並みだ」
「あー、なんかエドが遠いところに行っちゃった感がする」
親父殿の言葉を聞いて、かーちゃんは額に手を当てて天を仰ぐ。
「でもな、エドはやっぱり1歳の子供なんだ。親である俺たちがしっかりと面倒を見てやらねばならん」
「それは分かるんだけど・・・」
かーちゃん、難しい表情になっておるの。
「それでな、エドがまずやろうとしているのは、普通の生活を良くしていこうって事だ。それにはちょっとばかり問題がある」
「問題って?」
かーちゃん、エドの問題以外にも問題があるのか?という表情になる。
「この家が小さくて古いってところだ。結婚してからずっと住んでいたから馴染んではいるが、この小さな家ではエドが考えている事はやれないんじゃないかと、思っている」
「じゃあ、どっかに引っ越すんですか?」
「あてはある。男爵に蔣爵した際に、辺境伯に「男爵が小さな家はまずいだろ、家はこっちで用意するから引っ越せ」とは言われていたんだ」
「ちょっと!それ初耳!」
蔣爵の際、色々なモノを貰った記憶はエレナにもあったが、家?そんなもんまで貰ってたのか!と言う表情を親父殿にぶつけるかーちゃん。確かに新しくて綺麗な家があるのなら、そっちの方が良いに決まっておる。
「ああ、悪かった。蔣爵したときに言おうとは思ってたんだが、ベアとリズが学園に入学しなきゃならなくなったり、クロエを授かったろ。その上引っ越しだなんて、言い出せる雰囲気じゃなかったんだ」
「まあ、確かにあの頃はバタバタしてたから・・・・、まあ仕方ないか」
親父殿の言い訳に、かーちゃんは考え直す。腹ボテの状態であれこれ切り盛り出来るわけがない。ここは親父殿の判断が正しい。ただ、まるっきり喋ってなかったのはマズイわな。
「とにかく悪かった。で、その貰った家だ」
「どれくらいの大きさなの?」
「単純に言って、今の4倍くらいかな?」
「4倍?!ちょっと、それじゃあたしの仕事が増えるわ」
狭いながらも楽しい我が家。と言えるくらいの今の家の4倍もの広さと聞いて、かーちゃんは掃除が・・・と考えたようだが、それを察した親父殿が、
「待て待て、仮にも男爵夫人だぞ。普通に家の仕事をやってる方がおかしいんだ。従者はともかく、使用人を雇うだけの食い扶持も貰ってる。これを機にメイドを雇えばいいんだよ」
「メイドねぇ」
一応、親父に付いてきた従者は居るものの、メイドと聞いてかーちゃんはしばし考える。
「人を雇えば、クロエはともかくエドとの時間も増やせるんだぞ」
「そ、それはいいわね」
そうだ、メイドさんが居れば家のお仕事を代わりにやってもらって、子供たちとの時間も増やせる。もう平民ではないのだから、それくらいの贅沢も良いのかも?かーちゃんの表情は忙しく変わっていく。
そんなかーちゃんの表情を見て、親父殿は、
「よし、決めた来月には引っ越すぞ」
と言い放つ。かーちゃんはデレっとした顔から真顔に戻って、
「決めるの早いわよ」
前世ほどの家具もない今の世界。引っ越しといってもそこまで手間ではないだろう。むしろ家具なんて新しい家に合わせたものが必要になる。となれば?そっちを選ぶ方が忙しい。結局、私が忙しいのは変わらないのよ?と、ちょっとぶんむくれるかーちゃん。
「来月に引っ越しておけば、年末に帰ってくるベアやリズを出迎える準備も十分できるだろ?」
「ったく、仕方ないわね。分かったわ」
かーちゃんは、両手を上に向けて降参のポーズ。これは異世界でも変わらんようじゃな。
「済まないねぇ。さて引っ越しの話はこれまで、次はエドの話だ」
「引っ越しとエドの話が何か関係でも?」
ようやく家の話からワシの話に切り替わった。話の飛び様に驚いているかーちゃんを置いてきぼりにして、ワシは話を始める。
「母上、引っ越す前に新しい家をちょっと改造しようと思ってます。僕の魔法で」
「魔法で?改造?」
「ええ、僕が考える生活環境の改善をするのに、丁度いいなと思って」
そう、前世の様な快適な家に「ビフォーアフター」するのじゃ、今まで寝る前にあれこれ考えていたアイデアをてんこ盛りにしてやるぞぉ。
「ああ、確かに暮らしながらあちこちいじられるのは御免だわ。で、どんな風に改造するの?」
かーちゃんは家が新しく、さらに快適になると知ったので、どんなものになるのか興味津々。でも、
「それは、出来て引っ越してからのお楽しみです」
「えー、ケチねぇ」
ワシが話をはぐらかすと、かーちゃんは口をとんがらせて不貞腐れる。
「引っ越すまでのワクワク感も大事ですよ」
「そうね、じゃあエドがどんな魔法を使ってくれるか、楽しみにしてるわ」
そうやって話がはずんでいると、親父殿が横から口を出してくる。
「ああ、ちなみにエドの魔法の事については、クロエはもとよりベアやリズには内緒だぞ」
「え、どうして?」
かーちゃん、今日何度目の「きょとん」顔かな。
「あのなぁ、正直言って「人外」な能力を持ってるなんて、外に知れてみろ?あっという間に教会に魔法院、さらには王宮まで出てきてのエド争奪戦が起こるぞ。それは親として看過できない」
「あ、そっか。子供なら簡単に喋っちゃうからなぁ」
言われて気が付く。かーちゃんも気を付けておくれよ。井戸端会議の時に「ポロリ」はだめだぞい。あ、違う「ポロリ」ならいつでも大歓迎じゃ。
『あのですね、女だらけの水泳大会じゃないんですよ』
ほぉー、ガイア。あの番組を知っておったのかw
『・・・一応、貴方に突っ込む際に必要な知識としてですね・・・』
ワシとガイアが、ポロリからの脱線談義の中、
「だから、エドの魔法については俺にエレナ、あとは司祭と騎士団でも2・3人が知っておればいいと思う」
親父殿はそこまで言うと、大きなため息をつく。まあ、こんな混乱因子
「あら?領主さまはどうするの」
入っているべき領主さまが居ないことに、かーちゃんは少し訝しむ。
「喋りたいところだがな、エドの能力をもう少し見極めてからでも、遅くはないと思う」
「分かりました。じゃあ当分はエドの魔法は家の中でも封印ね」
「その方がいいだろう。クロエに見つかると厄介だからな」
ようやく第2回家族会議も終了した。いつもなら寝ている時間なので正直言えば「眠い」
生あくびを噛み殺しながら、部屋に戻ろうとするワシを親父殿は呼び止める。
「エド、悪いが明日も俺と一緒にお出かけだ」
「え、明日も?」
今までが家から出てなかった分、騎士団に教会、そして新居と出かけるのが増えるのはありがたいが、連日かぁ。ちょっと、のんびりしたいもんなんじゃが。
「俺が貰った家、早く見たくはないか?」
親父殿はいたずら小僧の様にニヤつきながら、けしかけてくる。
「見たい!見たい!」
「じゃあ明日行こう」
「わーい!」
ここまでは、父親と子供の楽しい会話であった・・・。
「おっと、これはクロエには内緒だぞ」
「あ、機密保持ですね」
「・・・・1歳児が軽々しく機密保持と言うな」
急に話し口調を変えたワシに怪訝そうな顔をする親父殿。
「えー、正直言うと、子供の喋り方は面倒なんじゃ」
「・・・・・ああ、前の世界では孫まで居たんだっけ?」
そう言えばそうだったな。と思い出した親父殿。
「そうじゃ、親父殿よりも年寄りなんじゃぞ」
「・・・ちょっと呑んでから寝るか」
「三日酔いは身体に毒ですよ」
1歳児に心配される父親・・・。
「・・・・分かった。たしなむ程度にしておこう」
「ではおやすみなさい」
「おやすみ、エド」
うーん、あの分だとまた酔いつぶれやせんかの?
まあ、心配しても始まらん。ワシはワシで眠たいんじゃ。
部屋に戻って、さっさとベッドに横になる。
あっと言う間に睡魔に襲われる・・・・。
ああ、明日は新居訪問か。楽しみじゃな。
親父殿、家族に隠れてお家を貰っていたとか?
そんなお家がエドの「ビフォーアフター」の舞台に。
さて、エドはどこまで「ビフォーアフター」するんでしょうかねぇ?




