第015話 家族会議です
親父殿一人抱え込んでいても仕方がない。
と言う事で、今度はかーちゃんにも理解してもらわないと・・・・。
カークが教会から戻って来ると、エドはたくさんの魔法陣を手にキャッキャしていた。そしてその側ではダグラスが真っ白に「燃え尽きて」いた。
「エド、ちょっと無茶し過ぎたんじゃ無いのか」
「いえいえ、ダグラスさんは半ば自滅した感じですよ」
エドがニコニコして答える。コレからあのガラクタ部屋の未整理品を分別して、エドの世界改良をしていこうと思えば、当然ダグラスは外せないメンバーとなろう。まあ、それまでにエドの秘密を共有する面子で集まって、どうするかのすり合わせも必要だな。
「燃え尽きた」ダグラスを見ながら、カークは、いずれは耐性が付いてくれる。と信じたい。と考えていた。
エドが見つけて来た魔法陣を、手短に有った袋に詰め込む。そしてエドを抱き抱えると、
「今日はここまで。エド、帰る時間だ」
そう言って、執務室へと引き上げる。執務室に入ると親父殿は、
「悪いが、今日はこれで家に帰ることにする。ちょっと問題があってな。ああみんなも時間になったら上がってくれ・・・あ、ダグラスが倉庫で「燃え尽きて」いるから誰か回収してやってくれ。そう簡単には死なんだろう」
たった一日ではあったが、結構面白い一日じゃったのぉ。とエドは戦利品である魔法陣を手にホクホク顔。親父殿と言えば一日であれこれ頭を使ったせいか、表情がげっそりとしておる。
馬に跨り、家へと帰る途中で親父殿が、
「エド、明日、教会で特別に聖別を行ってもらう事になった。ああ、分かった内容は司教には黙っていて貰うから、明日は思う存分「ぶちかまして」も構わんぞ」
「あのー、「ぶちかます」のが大前提なんでしょうか?」
ワシは思わず親父殿に不平を垂れる。
「あの魔石な、かなりのものだったぞ。あんなのを作れてしまうお前の魔力。熟練した魔術師ならともかく、お前は一応、1歳児であろう?ぶちかましと言わずして何と言おうか」
まあ一般的な正論をぶつけられると、ぐうの音も出んわい。
「付いては、ウチに帰ったらエレナと三人で家族会議だな」
「か、家族会議ですか?」
焦るワシの事なぞ無視して親父殿は続ける。
「いいか、お前の持つ創造神様と同じ能力。お前1人で隠し切れる訳が無いだろう。ならばお前を守れそうな者達にはそれを教えておいた方が良い。今のところは俺にエレナ、ダグラスにチャールズ、司教が妥当だな」
少数精鋭でワシの秘密を守るっちゅー事か。
「ちなみに娘達には教えない」
「えっ、それは何故?」
姉達には内緒にする。その判断にワシが驚くと、
「簡単な事だ。子供は大人ほど思慮出来ない。外には秘密だ言い聞かせても、知った事を喋りたくなるもんだ。子供同士のつもりでも、子供から親、そして知り合いへ。簡単に話は広がってしまう。だからエドにも言っておく。あの娘達の前で能力をポンポン使うなよ」
と言ってワシの頭を軽くポンポンと叩く。
家に帰ると、かーちゃんとクロエが出迎えてくれる。親父殿はバスケットをかーちゃんに返しながら、
「エレナ、今日は俺じゃなくて、エドの昼飯をお願いしたつもりだったんだぞ。中身見てタチアナが残念そうな表情してたわ」
かーちゃん、そう言われてバスケットの中身を確認し、顔を真っ赤に染める。1歳児には食べられないものと言われるだけならよかったが、「影の騎士団長」タチアナに知られた方がよっぽど恥ずかしかったらしい。
親父殿とワシは服を着替えて、食堂へ。
この世界では料理にレパートリーが少ないのか、朝と同じメニューである。同じ麦粥なんじゃが、昼に騎士団で食べたものにはシチューの肉が入ってたので、あれは良いアクセントじゃったな。ってこんな事をかーちゃんに言ったら、『贅沢を覚えてきたのね』と嫌味を言われそうじゃから黙っておこう。
食事も終わった時、親父殿がかーちゃんにそっと耳打ちする。
「エレナ、片付けが終わってからで良いので、部屋に来てくれるか。少し話がある」
そう言うと親父殿はワシを抱き抱えて、自室へと向かう。親父殿の部屋、と言ってもホンマもんの貴族様達とは違って、客人が来た時の為の部屋と言って良いじゃろ。小さな部屋には簡易な執務机に、ソファのセットだけ。
そんな小さなへやのソファにワシは座らされ、親父殿は執務机の方へと腰掛ける。
「エド、エレナが来る前に少しだけ言っておく事がある」
「はい、何でしょうか」
「俺は見た事しか喋らない。もしもこれから、創造神様から能力を授かったら、俺とエレナに先ずは言う事。約束だぞ」
「はい」
「しかしなぁ、こんな素っ頓狂な出来事をエレナが信じるだろうか?」
そう言うと、親父殿は椅子の背もたれに身を預け、天井を見上げる。
しばらくして、台所仕事を終わらせてきた、かーちゃんが部屋にやってきた。水差しとカップの入った籠を手に提げている。
「貴方、今日はどんな話なの?難しい話は無理ですからね。もしかしてタチアナさん絡み?」
水差しとカップをテーブルに置きながら、かーちゃんは親父殿に話しかける。タチアナの名前が出たのは、今日のお昼用のバスケットの中身の話でもされるのか?とジャブ入れてきたのかのぉ。
出されたカップから水を一口飲んでから、親父殿は切り出した。
「今日はエドのわがままを聞いてやろうと、騎士団に連れて行った。そこでとんでもないことが起こったんだ」
コップを置いて親父殿がかーちゃんに冷静に話しかける。
「とんでもないことって?」
タチアナ絡みの話ではなくて、ホッとするかーちゃん。
「創造神様が顕現なされた」
「へぇー、創造神様がねぇ・・・・って、えええ?!」
淡々と話す親父殿の口ぶりに、ついついスルーしようとしてしまった、かーちゃん。途中で頭ん中に引っ掛かりを覚えての反応である。
「創造神様が言うには、この世界の更なる発展をエドに頼む。故に数々の加護とスキルを与えてくれたという事だ」
「え、え、エドが神様の使い・・・・ですってぇ?」
かーちゃん、まさに開いた口が塞がってない。仕方ないか、自分たちの子供が神の使いなどと言われたら、誰でもそーなるわい。
「神の使いとはいっても、エドはまだ1歳。歩けるにしてもまだまだ、親として保護してやらねばならん。それに、この話はごく一部だけが知っていればいいと思う」
親父殿の深刻な口調に、かーちゃんも思わず頷く。
「でも、どうしてエドなの?」
「そこまでは知らん。だが、ある意味ウチで良かったかもしれん。辺境伯騎士団の団長の息子だ、多少の事なら俺の力で何とか出来るし、それくらいの頭は使える」
そこまで言うと、ふっと息を漏らす。
「でも、これからどうすればいいの?」
エレナとすれば、自分の可愛い息子がどうなるのか躍起ではない。
「そうだなぁ・・・・、いったい何から手を付ければよいのか。戦の経験はたくさんあれど、こればかりは俺にも分らん」
そうつぶやく親父殿。
親父殿とかーちゃんは、それぞれに「どうしたものか」と、頭の中で思い悩んでいるようだ。小さな部屋には溜息しか聞こえない。
『おーい、ガイア。聞いとるかぁ?』
どうしようもなさげな雰囲気に居た堪れなくなって、ワシはガイアを呼ぶ。
『どうやら、簡単には解決できるわけないですよね』
『いっそのこと、お前さんの方から話してやった方が早くはないか?』
ワシの提案にガイアも、
『じゃあ、そうしましょうかね』
と軽く返事をする。
その瞬間、部屋の中がまばゆい光に包まれた。みんな眩しさに何が起こったのか理解しにくい。
『夜分に失礼するよ。カークにエレナ、私が創造神たるガイアだ』
両親の目の前には、教会の石像の恰好のままのガイアが顕現した。
「ガイア様・・・・・」
「が、ガイア様?」
親父殿は、昼間に続いてのガイアの顕現に声を詰まらせ、かーちゃんは石像でしか見たことのない創造神の姿に声を失っていた。
『エドワードを勝手に神の使いにしてしまったことについて、まずは詫びねばならない』
そう言うと、ガイアは両親に頭を下げる。
「ガイア様、頭をお上げください」
「ガイア様、神が人に頭を下げるなんて・・・」
神は崇め奉るものと考えている両親は、頭を下げてくる神の姿に慌てふためく。
『だが、この世界をより良いものにしていくには、どうしてもエドワードを神の依り代にせねばならなかった。幸いにもエドワードはそれに順応してくれている。お主らには面倒を掛けさせてしまうが、許してくれ』
ガイアの言葉に、親父殿は、
「一つだけお聞かせください」
『なんじゃ、質問の内容によっては答えぬこともあるが、それでも良いか?』
「エドワードは・・・、エドワードはエドワードとして扱えばよろしいのでしょうか?」
『とは?』
「昼間、エドワードと喋りましたが、どう見ても人としての何かを完成させている感じがします。本当にこの子は1歳の幼子なのでしょうか?」
あー、やっぱし感づいておったか。喋り方一つで勘繰られてはちょっとまずかったかの。
『確かに、エドワードはエドワードであってエドワードではない』
「・・・・・?」
『酷な話をするようで申し訳ない。エドワードの体の中には異なる魔力のない世界で、技術というものを発展させたことを知っている人格が居る。私が彼に頼んで、エドワードの体の中に入ってもらったのだ』
そー、ワシは「見かけは1歳、中身は75歳のエロジジイ・・・・」って、ナニ言わす。酸いも甘いもかみ分けた老練な人間じゃわい。
「そうでしたか・・・・、エドワードであってエドワードではないとは、そう言う意味でしたか」
ガイアの回答に、少しだけ肩を落とす親父殿。
『気を落とすでない。彼はこの世界のことなぞ何も知らぬ。その点では赤子と同じ。故にこの世界での生き方を教えるのは、お主らに掛かっておる。それ以外の事については・・・・まあ、エドワードの言うとおりにして居れば良い。エドワードの親はお主らだけじゃ。それだけは私が保証する』
そう言うとガイアの姿は、スッと消えた。
「・・・・そうか、エドワードはエドワードであってエドワードではない。か」
親父殿はそう呟き、深いため息をつく。
「やけに成長が早いと思ったら、神の依り代ねぇ。なんだかちょっとエドワードが遠い存在に見えてきちゃうわ」
かーちゃんもちょっと肩を落としている。
「確かに、ガイアの言う通り。僕には昔生きていた世界での知識がある。そしてガイアから貰った能力がある。これを合わせて、この世界を変えてくれと頼まれた。正直言えば、どこまで出来るか判らない。でも、やれることはやってみたい。幸か不幸か、もう一度人生を歩めるんだ。次は、もっと良い生き方をしたいんだ」
ワシは、両親に向かって語り掛けた。親父殿はワシの頭を大きな手で撫でながら、
「そうだ、エドワードはエドワードだ。俺の誇るべき息子だ。お前の信じるままに生きなさい。だが、助けが欲しかったら遠慮なく言うんだぞ」
「エドワード・・・・。貴方は私たちの立派な子供です。前の世界とかは関係ない。私たちの子供です・・・」
かーちゃんはそう言うと、ワシをしっかりと抱きしめる。がっつりと抱きしめられると、かーちゃんの見事なおっぱいがワシの顔面をふさぐ。
うう・・・・、この感触・・・・、ってそろそろ放して。い、息が・・・・。
『窒息死ならぬ、乳息死ですかw』
おい、ガイア。笑ってないで何とかしろ!
と、じたばたすると、かーちゃんも気が付いたかワシを手放してくれる。
「ごめんね、ちょっとキツかった?」
いえいえ、久しぶりのおっぱいの感触、ご馳走様でした。
とまあ、ガイアの顕現によって、無理矢理?ワシの状況を納得させられた親父殿とかーちゃん。二人して大きく溜め息を吐くと、
「エレナ、済まないが寝酒を一杯やってから寝る事にするよ」
「あら奇遇ね。私も一杯飲みたい気分になったわ」
どうやら「深く考えても仕方がない、ちょっと呑むか?」って、トコじゃな。
「じゃあエド、お前はもう寝なさい。クロエが居なくても着替えは出来るか?」
「その辺はもう大丈夫です」
「なら良かった。じゃあ一人で着替えて寝なさい」
「はーい」
ワシは二人にお休みの挨拶をして、部屋を出る。二人ともあまり飲み過ぎないようにしてくれ。
部屋に戻って、寝巻きに着替えながら、
「あークロエが寂しがるかのぉ。一人で着替える様になったら、お姉ちゃんらしい事が出来なくなるって」
でもなぁ、いくら見た目一歳児と言うても、中身はジジイじゃでなぁ。実のところ、チソチソまで見られるんは恥ずかしいんじゃ。丁度良い機会かもしれんのぉ。
『夏に、暑いと言って家の中をフルチンで歩いていた人の思考とは思えませんね』
ガイア。おまーさん、今日は出番が多過ぎじゃ無いのか?
『出番が無いのに越した事は有りませんがね。貴方を見てると、常にそばに居ないと心配でしてね』
過保護なやっちゃのー。
ベッドに横になってふと、
「親父殿たち、寝酒を飲むと言うておったが、飲み過ぎて無いじゃろうな?明日もあるのに・・・」
身体は子供、頭はジジイ。どっちもすぐに眠たくなる。
ワシは考える事を放棄して、深い眠りに落ちた。
とうとう、エドワードの重要なところがバラされました。
が、そこは自分たちの子供。というところで納得出来た。
としとかないとね、話が先に進みません。




