第014話 騎士団長と司祭のナイショな話
部下のダグラスをエドの「かわいいおもちゃ」として、スケープゴートにした親父殿。
いくら歴戦の騎士とはいえ、自分の想像外の出来事を抱え込めることもなく、どうせなら「赤信号、みんなで渡れば怖くない」心理で、さらなる犠牲者を作ろうと教会へと向かいます。
エドが見つけた魔法陣は、空っぽの魔石に魔力を込め直す事の出来るとんでも無い発見であった。そしてエドがその魔法陣を使って魔力を込めたら、規格外の魔石が出来上がってしまった。
ただでさえ創造神様の加護を受けて、尚且つ「人外」レベルの魔力を持つ・・・。カークはそんな規格外が自分の息子であると言う事に、
『何でそーなるの!』
と心の中で突っ込みを入れずにはいられなかった。
既に自分だけでどうにかなるレベルでは無い。とっとと秘密を共有して「共犯者」を増やさないと、騎士団長まで登り詰めたカークでも精神的に「病む」事になるだろう。
厩から自分の馬を引っ張り出して、一目散に教会へと向かう・・・。けど申し訳ないがここは領都、馬が全力で走るわけには行かない。まあ一応貴族であり騎士団長であるので、街中での移動は馬か馬車を使う様に言われている。
陽も傾き出した時間帯、教会に着くと、外での巡回終えた司教達が教会に入って行くところであった。その中の1人を捕まえ、騎士団長が火急の要件でお目通りを願いたいと先触れになってもらう。
騎士団長が火急の要件。と言う事で慌てて司祭が外へと飛び出してくる。そしてカークの顔を見るなり、
「どうした、カーク。エレナに浮気でもバレたんか?」
この司祭、カークとは騎士団入団の頃からの長い付き合い。農民の子だったが、魔力を溢れさせてたら司祭にとっ捕まって、聖職者の道を歩まされた。聖職者よりも生殖者の方が俺は良いんだ。とか言っていたが、いつの間にかしっかりと司祭やってるなぁ。と、カークは思いながらも、
「モーフィス、俺が浮気をするタマに見えるんなら、お前さんの目は節穴だなw」
「ほざけ、40越えても嫁さんと頑張る種馬なら、あちこちの畑に種蒔くなんぞ朝飯前だろうが」
全く、教会の前で騎士団長と司祭がする様な会話では無い。流石、腐れ縁。
「そんなアホな話をしに来たのでは無い。息子のエドワードの事だ」
「おお、エドワードね。随分と成長が早いそうじゃないか。この前のミサでエレナ夫人から聞いておるよ」
そんなエドワードがどうしたんだ?とモーフィス司祭は首を傾げる。
「とにかく、ちょっと人には聞かれたくはないので、何処か良い場所は無いのか?」
「分かった、なら奥へ来たまえ」
モーフィス司祭に促され、カークは教会の中へと進む。
通されたのは執務室の様な小綺麗な部屋。
モーフィスにソファに掛ける様促されたカーク。部屋の中を見渡して、
「たいそうな出来では無いか。さぞかしお布施が集まったのかな?」
「バカを言うな。この部屋の内装はお布施なんかで作った訳ではない。領都の教会ならこれくらいの内装は普通だ。なにせ領主様を迎える事もあるしな」
そう言いながらモーフィスは、奥の棚から水差しを取り出し、二つのコップに水を注ぐ。そうして一つは自分の、一つはカークの前に差し出して、自分はカークの対面に座る。
「モーフィス、先ずはコレを見ろ」
そう言ってカークは、持って来た魔法陣と魔石をモーフィスの前に置く。モーフィスは先ず魔法陣を手に取り、緻密な紋章の様な魔法陣を眺める。
「コレがどんな魔法陣かは分からんが、この緻密な紋様、それだけでも芸術的価値は高そうだな。そして」
モーフィス魔法陣をテーブルの上に戻し、次に魔石を手に取る。ランプの方に掲げて光で透かしながら眺める。
「水属性の魔石か、かなりの魔力量だな。それに魔力が均一に入っている。なかなか掘り出せる物じゃない。コレが何か?」
久々に美しい物を見た。と言う表情でカークに応えるモーフィス。カークは魔法陣と魔石を回収しながら、
「ウチの息子。エドワードと言うが今年一歳になったばかりだ」
「ん、お前さんの息子がさっきの魔法陣と魔石に何の関わりが」
魔法陣と魔石、そしてエドワードとの関りが想像できずにモーフィスは首をかしげる。
「今日はあいつの我儘に付き合ってやろうと、騎士団の庁舎に連れて行ったんだ。そこでこの魔法陣と空っぽに魔石を見つけた」
空っぽの魔石。と言う言葉にモーフィス引っ掛かった。
「ん?さっきの魔石。魔力がたっぷりと入っていたが」
「さっき見せたあの魔法陣、エドが言うには魔石に魔力を入れ込む為の物だと言う事だ。そして空っぽの魔石にエドが魔力を入れ込んだ。結果があの水属性の魔石だ」
そこまで言うとカークは出された水を一口含む。モーフィスはカークの話が繋がってこなかった。
「もう一つ、その出来事の前に俺は創造神様とお会いした」
その言葉を聞いてモーフィスは咳き込む。
「な、何だって?!創造神様が顕現なされたと言うのか!」
「それで、エドにはこの世界をより良くして貰う為に、加護をお与えくださった」
「ちょマテ。創造神様の加護だと!冗談、顔だけにしろよ?」
モーフィスの突っ込みにカークは、
「冗談で済んでりゃ苦労はない。全て事実だ。創造神様が顕現され、エドが見つけた魔法陣を解読して、空っぽの魔石に魔力を入れ込んだ。それが今日一日で起こったんだ。少なくとも俺一人では抱え込みたくはない」
そこまで言うとカークは大きく溜め息を吐く。
「そんな出来事を俺にぶち撒けて、何がしたい?」
疲れ切ったカークにモーフィスは質問する。
「簡単だよ。明日、エドに聖別を受けさせてやってくれ。年齢が達していないのは承知の上だ。でもあの魔石で分かるとは思うが、聖別でどんな結果が出るだろうね」
カークの落ち込みっぷりにモーフィスも、
「お前さんの話が事実で、明日、特例的に聖別をエドに行なったとしよう。多分だが出てくる結果は今日起こった事実の裏付けでしかないと思う。それでも良いのか?」
と慰め諭す様に話し掛ける。
「今日の出来事が夢であれば良いと思ってる。だが親としてはエドの本当の姿を知っておきたい。そして、エドと話し合って今後の事を決めたい。エドが創造神様の使いであったとしてもまだ一歳だ。守るのは親である俺の勤めだからな」
そう言うとカークはもう一度大きく溜め息を吐く。
モーフィスはカークの身の上に起こった「規格外」の出来事の連鎖を想像して、とりあえず出来ることを提案する。
「聖別の事はそうだな。明日の昼頃に教会に来てくれるか。昼間なら他の司教達も居ないから、周りを気にする事もない、良いね?」
「昼頃か、分かった。いきなりな話ですまん」
カークはモーフィスの手を取り握手を交わす。
「良いって事さ、あの『ぶちかましのカーク』がしょげ込んでるのを放って置けるか」
そう言ってモーフィスはカークの肩をバシバシ叩く。
「おめ、いてーぞ!力入れ過ぎだろ」
「うるせ〜、俺如きが騎士団長様に敵う訳ないだろが」
そして二人は大笑い。用事も終わり、部屋を出て礼拝堂へと向かう。祭壇には創造神様の石像が飾られている。
「明日、創造神様にお会い出来るかなぁ?」
「創造神様にか?何ならエドからお願いしてもらうか」
モーフィスの独り言にカークが答える。その答えを聞いてモーフィスは頭を振りながら、
「いや、自分からお願いしてみるよ」
と言い、カークを入り口まで送る。
簡単な挨拶を交わし、モーフィスと別れたカークは馬に跨りながら考え事をしていた。
『騎士団の中なら俺の一存でエドに協力出来る。教会はモーフィスを取り込めればある程度はなる。後は領主たる辺境伯をどうやって味方にするか。どうしたもんだろうねぇ』
騎士団へと戻る歩みは非常にゆっくりであった。
で、その間のエドとダグラスは?
エドはガラクタ部屋のあちこちから、おもちゃ(ある意味おもちゃだ)を見つけては、ダグラスに説明、または実演する。理解するのを止めました。と言ったダグラスだったがエドの非常識な攻撃に、
「もう止めて、私のライフはもうゼロよ!」
「大丈夫、死んでから休めばいい」
「オニ〜、あくま〜、死ね〜」
とまあ、エドはエドなりに楽しんでいた様だ(そこにダグラスの犠牲はあったが)
と言う事で、エドの能力が次回明らかに!




